絞り出しは中国茶をいれるのに便利でお薦め

[2015.12.10] Written By

絞り出し
「絞り出し」と言うお茶の道具をご存じでしょうか?この道具は主に玉露や煎茶をいれる道具として紹介されがちですが、特徴を理解すると、蓋碗の代わりの道具として、烏龍茶やプーアル茶のような中国茶にとても向いていることに気がつきます。

絞り出しは玉露や煎茶に向いているわけではない

絞り出しは玉露や手揉み煎茶のような高級煎茶を入れる道具だと思っておりませんか?それもそのはず、インターネット、書籍等多くのメディアでは絞り出しで玉露・高級煎茶をいれる道具として紹介されております。
ただ、なぜ、絞り出しで玉露や煎茶をいれる必要があるのでしょうか?おそらく、絞り出しには幅があるために「茶葉が開きやすい」という理由かと思われます。
ただ、茶葉が開きやすいのであれば、平型の急須、または、大きな急須を使えば良く、敢えて絞り出しを使う理由が見あたりません。
また、私の経験上、茶器の形状は最終的なお茶の香りや味には影響を与えません。仮に縦型の筒のような急須で煎茶や玉露をいれたとしても、スペースさえあれば茶葉は開きます。この点から、「絞り出しのような幅広の茶器で茶葉を開かせたい」というのはどちらかというと自己満足の世界になります。

絞り出しの特徴は、以下の3点にまとめることが出来ます。

  1. 流速が速い
  2. 大きな茶葉も含め、茶葉の出し入れが楽
  3. 口の隙間の開き度合いが決まっているため使い易い

流速が速い

絞り出しの場合、茶漉しがないため、茶葉で流れが閉塞することなく、蓋碗のようにスムーズにお茶を注ぎ出すことが出来ます。上手に作られている絞り出しは口の開口部が「三日月」の形状をしております。三日月の形状にすることで、茶葉を留め、お茶だけを流し出すことが出来ます。絞り出しの蓋と胴との隙間を調整するのは絞り出しを作る上で非常に難しく、開口部には作家の技術が反映されます。狭すぎたり、広すぎると、本来の絞り出しの機能を損ないます。以下のビデオは前川淳蔵氏作の古琵琶湖土の絞り出しです。ビデオを見て頂くと、絞り出しの流速が速い点を理解して頂けます。前川氏の絞り出しは開口部が非常に精巧に作られており、非常に使い易いと感じております。

大きな茶葉も含め、茶葉の出し入れが楽

絞り出しは蓋を外すと、まるでお茶碗のようにシンプルな構造をしております。このため、茶葉をいれるのも、茶殻を取り出すのも楽です。特に、プーアル茶や鳳凰単叢烏龍、武夷岩茶のように茶葉が大きなお茶をいれる際にとても便利に感じられます。

絞り出し

絞り出し

絞り出し

口の隙間の開き度合いが決まっているため使い易い

中国や台湾を訪問されると気がつかれると思いますが、お茶の専門家の多くは蓋碗を使ってお茶をいれます。蓋碗は流速が速く、また、茶葉の出し入れが楽と言う点で、普段仕事でお茶をいれている私達プロにとっては非常に使い易い道具です。ただし、蓋碗には短所もあります。それは、流速をコントロールする蓋と胴の隙間を自分で調節する必要があり、それが原因で割とミスしやすい点です。
隙間が広すぎると茶葉も一緒に流れ出るし、狭すぎると流速が遅くなります。また、プロの私でも湯をいれすぎて火傷しそうになる事もあります。絞り出しは、蓋の隙間をを自分で調節する必要が無いため、不慣れな人にでも上手にいれることが出来ます。

蓋碗

蓋碗

絞り出し

絞り出しを用いた紅茶の淹れ方の例

絞り出しの特徴を利用した紅茶のいれかたを紹介した動画をご覧ください。白茶、緑茶も同じ方法でOKです。烏龍茶、プーアル茶の場合、リンスを2回行ってください。紅茶をリンスするというやり方はやや意外かと思いますが、一度リンスすることで、温度を高め、これをすることで、よりクリアーな香り、味にお茶をいれることが出来ます。ただし、この方法は勿体ないと思われる場合、紅茶や緑茶の場合リンスなしでも大丈夫です。ただし、リンス有りでいれた紅茶とリンスなしでいれた紅茶では、香りと味わいが異なります。動画中では蒸らし時間を数秒とっておりますが、もっと短くても良いかと思います。緑茶は低い温度でいれるという概念があるかと思いますが、高温短時間のいれかたでも意外に美味しいことに驚かれると思います。高温短時間でいれると、意外に苦みや渋味が出にくい特徴があります。この高温短時間のいれかたは現在中国や台湾におけるお茶のプロが多く用いる方法で「工夫式」と呼ばれます。


絞り出し

日本茶(緑茶)、中国紅茶、白茶、プーアル熟茶、プーアル生茶、ジャスミン茶、烏龍茶という厳選された茶葉7種のお試しセット

この記事に関連するHOJO Teaの商品


関連記事 RELATED ARTICLES

お茶に関する最新情報を確実にキャッチするには? SOCIAL NETWORK

1,Twitterをフォローする。2,FaceBookで「いいね!」を押す。3,メールマガジンに登録する。という3つの方法で、お茶に関する最新情報をキャッチすることができます。今すぐ下のツイッターフォローボタンや「いいね!」をクリック!

メールマガジン登録で無料サンプルをもらおう!
メールマガジンにご登録いただくと無料のサンプル茶葉のプレゼントや希少商品の先行購入など様々な特典がございます。ソーシャルメディアの購読だけでなく、メールマガジンへのご登録もお忘れなく!

HOJO TEAオンラインショップNEWS一覧を見る

2022年産の鳳凰単叢老欉柿花香単株と桂花香単株を発売
2022年産の鳳凰単叢老欉単株茶を2種類発売しました。 何れも極めて樹齢の高い木ゆえに、非常に奥行きのある、長い余韻のお茶です。濃い後味に加え、1年以上の熟成による、濃厚な香りをお楽しみ戴けます。 鳳凰単叢老欉柿花香 単 …
ダージリンファーストフラッシュとオータムナル紅茶を発売
ダージリンを2種類発売しました。今回の新商品は、Arya茶園の春摘みファーストフラッシュのルビーと秋摘みオータムナルのルビーです。春摘みのルビーは4月に仕入れ、その後無酸素状態で熟成させることで、香りをさらに高めました。 …

最新の記事 NEW ARTICLES

野生茶を求め雲南省臨滄市南西部の山村へ
現在、雲南省臨滄市の南西部にてお茶の仕入を行っております。 当店にとって重要な商品の1つに野生茶があります。野生茶は製茶はもちろんですが、原料確保が一番大きな課題です。 今回、新たに野生茶が有る場所があるらしいと言う情報 …
雲南省のお茶産地にてプーアル茶、白茶、紅茶の生産
3月24日から中国の雲南省臨滄市の南西部、永德、鎮康県にてお茶の仕入れ、生産を行っております。 雲南省は世界一と言っても過言で無い極上の原料がある反面、生産に対する管理が甘いため、出来合のお茶を仕入れたのでは、理想とする …
2022年産の鳳凰単叢老欉柿花香単株と桂花香単株を発売
2022年産の鳳凰単叢老欉単株茶を2種類発売しました。 何れも極めて樹齢の高い木ゆえに、非常に奥行きのある、長い余韻のお茶です。濃い後味に加え、1年以上の熟成による、濃厚な香りをお楽しみ戴けます。 鳳凰単叢老欉柿花香 単 …
ダージリンファーストフラッシュとオータムナル紅茶を発売
ダージリンを2種類発売しました。今回の新商品は、Arya茶園の春摘みファーストフラッシュのルビーと秋摘みオータムナルのルビーです。春摘みのルビーは4月に仕入れ、その後無酸素状態で熟成させることで、香りをさらに高めました。 …
標高2100mのシングルガーデン産プーアル生茶、 火地古樹生茶2021を発売
火地古樹生茶2021を発売しました。 このお茶は、小さな単一茶園(シングルガーデン)のお茶のみから加工されたプーアル生茶です。 https://hojotea.com/item/d147.htm シングルガーデン産のお茶 …
ペットボトル入りのお茶の味に大きく影響するビタミンCの存在
近年、多くの人々にとって、お茶を飲むということはペットボトル入りのお茶を飲むことが普通な今日この頃ですが、本コラムでは、ペットボトル入りお茶の特徴的な味に焦点を当ててみたいと思います。 酸化防止目的のビタミンCの添加 コ …
鳳凰単叢蜜蘭香2023と老欉姜花香2022を発売
鳳凰単叢烏龍茶を2種類発売しました。今回販売したのは、蜜蘭香濃香2023 No.1と老欉姜花香2022です。 https://hojotea.com/item/houou.htm 質の良い鳳凰単叢の特徴 良質な鳳凰単叢は …
ちょっと変わった白茶の楽しみ方!驚きの応用アイデアをご紹介
水出しで抽出した白茶と、お湯で淹れた白茶はまったく異なる香りになることをご存じでしょうか?本コラムでは、水出しを更に応用した白茶の楽しみ方を紹介したいと思います。 殺青工程の無い白茶には酵素が残存 白茶の特徴は、製茶工程 …
大雪山野生茶ベースの特注ジャスミン茶:野生普洱茉莉龍珠
半ば好奇心から、大雪山野生生茶をベースとしたジャスミン茶を作ってみました。 日本はもちろん、中国でも極めて珍しいお茶ができました。 https://hojotea.com/item/s08.htm ジャスミン茶を特注生産 …
ミルクの香りがする烏龍茶とは?
お客様から偶に「ミルクの香りがする烏龍茶」を紹介してほしいとお電話頂く事があります。また、台湾を訪れた際に飲んだミルク烏龍茶が忘れられないというエピソードも耳にします。このコラムでは、そんなミルクの香りがする烏龍茶に焦点 …

PAGETOP