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ラオスやミャンマーのプーアル茶の質について

[2015.12.24] Written By

プーアル茶
プーアル茶が作られているのは雲南省だけではありません。雲南省と国境を接しているラオス、ミャンマー、ベトナムなどでもプーアル茶は作られております。私はベトナムのの生産現場には行ったことがありませんが、ラオスとミャンマーについては実際に現地で見学し、また、これらの地域で作られたプーアル茶をテイスティングする機会が割と頻繁にあります。実際に雲南省外のプーアル茶の質はどうなのか私の経験をシェアしたいと思います。

国境線が決まる前から作られていたお茶

ミャンマーと雲南省の国境

地図は中国まるごと百科事典から引用

プーアル茶の一大産地である雲南省南部から南西部はラオスとミャンマーの国境に面しております。これら国境地帯の場合、雲南省側も、ミャンマーやラオス側も同じような民族が生活しており、中国と同じく普通にお茶が作られております。
もともと国境線が現在の位置に定まるはるか前よりお茶が作られていた訳で、お茶の栽培地域は国境線とは無縁に広がっております。これらの地域はもともと野生茶が自生していた地域なだけに、お茶作りはごく自然に彼らの生活の中に入り込んでおります。

お茶の評価をする際の2つの観点

一般にお茶を評価する際には2つの観点から評価を行います。①原料茶葉自体の質、②お茶の加工の質です。原料の質とは素材の優劣の判断です。例えるならば、天然のブリ vs 養殖のブリ、露地栽培の野菜 vs 水耕栽培の野菜、地鶏 vs ブロイラーなどがそれにあたります。素材自体の質というのは、加工や料理の腕とは関係無く、素材が持つ自然な甘味、具体的には味の濃さ、つまり、コク(余韻)の強さを評価します。
それに対して、加工の質とは、お茶がどのように加工されているかという技術的な評価です。例えば、発酵しすぎて茶色になった紅茶、釜炒りの際に焦げてしまったお茶、冷却時に結露が生じて酸化してしまったお茶などは減点対象となります。お茶の場合、また、お茶の摘み方も加工の一部として私は評価します。例えば、摘む時期が遅すぎたり、茶葉が不揃いだったりすると、最終的な品質に影響することから減点対象となります。

ラオスやミャンマーで作られる原料茶葉の品質

雲南省南部、例えば布朗山をはじめとする四双版納のプーアル茶有名産地に面しているラオスなどでは、ラオス産のお茶が雲南省側に持ち込まれ、南部の有名地域の名称で販売されているため、お茶の需要が比較的高く、取引される値段も高くなっており、ゆえに農家としても生産量を増やすために大量の肥料が使われたり、積極的に枝を切り落とすことで成長速度を速めるなどの現代農業方式でお茶を作っており、コクが薄く、味に奥行きがないお茶が多数を占めております。

ラオスの村

ラオスの村周辺に植えられているお茶の老木。肥料が多く施肥されており土が肥えすぎておりました。

逆にミャンマーの場合、雲南省の南西部を中心とする比較的知名度の低い産地に近接していることもあり、肥料も農薬も使わない自然栽培が今も残っており、非常に質の高いお茶が見られることがあります。ただ、実際にミャンマーの村を訪問してみると、村から比較的距離が近い地域は、動物の糞尿などが豊富に施肥されており、お茶の質があまり高くありません。逆に村から距離がある茶園は自然栽培の状態になっており、質がとてもよい傾向にあります。ミャンマーでは各農家が個々にお茶を作っているため、バッチ毎の管理が行われているわけでもなく、良い原料も悪い原料もごっちゃまぜとなっており、その結果、品質には大きなバラツキがあります。また、ミャンマーの場合、カメリアシナンシスに加え、カメリアタリエンシス種のお茶の木も茶園に多く混在しております。ただ、お茶摘みの際にはカメリアシナンシスもタリエンシスも一緒にされているようです。

ミャンマーの茶園:村の近くゆえに肥料が施肥され、地面が掘り起こされていました。

ミャンマーの茶園

ラオスやミャンマーでの加工技術

雲南省の場合、比較的有名な産地になると、少数民族の村であっても加工を専門とする茶師によって運営される工場があります。通常お茶の栽培は少数民族により行われ、加工は漢民族系の茶師により行われます。質にこだわる加工業者の場合、悪い原料は安く、良い原料に対しては高く買い取るため、農家としても質に対する意識が高く、より良い質の原料茶葉を作ろうと努力します。

ミャンマーの村で見た子供の僧

ミャンマーの山岳地帯に住む少数民族の家の中

一方、ミャンマーやラオスの場合、農家が自らお茶の加工を行います。プーアル生茶の作り方自体は非常にシンプル(釜炒り→揉捻→天日乾燥)ゆえに、お茶の知識が全くない農家でも、お茶に仕上げることは可能です。ただし、プーアル生茶の加工は単純がなだけに、逆に一つ一つの作業の精度が顕著にお茶の品質に反映します。プーアル生茶の加工は簡単なようで意外と専門的な知識と技術力が求められ、各作業を注意深く行う必要があります。農家が見よう見まねで作ったお茶は欠点が多く、品質的に不均一なものが多いと感じられます。

雲南省において原料茶葉の受け入れ検査をする茶師(左側)と茶摘みの基準がバラバラゆえに値段を買いたたかれてションボリしている農民(右側)

雲南省の有名な産地に近いラオスの場合、雲南省産のお茶として流通して売る場合も多いため、ミャンマーのお茶と比べると加工に関しては比較的丁寧に感じられます。

ラオスの村の庭先で天日乾しされているプーアル生茶

雲南省との国境近くのラオスの村の至る所でお茶に関わる作業が行われておりました。

全体の傾向としては、ミャンマーのお茶は原料の質は高いが加工がワイルド、ラオスのお茶は原料の質はあまり高くないが加工は比較的丁寧という印象があります。雲南省外で作られるプーアル茶を総括すると、いろんな意味で「管理できてないお茶」というのが私の全体的な印象です。ただし、例外もありますので、これはあくまで全体の品質を見渡したときの印象です。

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