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太平猴魁の新茶
- [2011.06.01] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
今はお茶の季節と言うこともあり、毎日のようにサンプルが届きます。
お茶選びをする際には2つのカテゴリーがあります。
1)緑茶・白茶・黄茶・台湾烏龍茶のように毎年安定した品質が生産されるタイプ
このタイプのお茶に関しては、既に農家や生産業者と会ってお互いを理解しているため、お茶の購入の有無は毎年送られてくるサンプルの中から評価して決めます。
2)プーアル・鳳凰単叢・武威岩茶
これらのお茶は、木によって味も香りもバラバラです。あまりにも不確定要素が多すぎるため、お茶選びは現地で無ければ出来ません。この様な茶園は毎年シーズンに訪れます。
そんなわけで、今の時期には台湾の烏龍茶や中国の緑茶・白茶・黄茶のサンプルが沢山送られてきます。
あまりワイルドな話題ばかりが続いたので、偶には茶葉の話題もブログに載せねばと思い、茶葉に関する話題も書いてみることにしました。
今回紹介するのは太平猴魁です。
このお茶は龍井茶と並ぶ、中国緑茶の銘茶中の銘茶です。過去には茶葉の国産品評会で金賞を受賞したこともあるお茶です。
正直、龍井茶の半分の値段で、龍井茶の倍の品質のお茶が買えます。
そのお茶の産地である安徽省は非常に貧しい省で、人件費も安く、お茶の品質の割に値段が高くないのです。
太平猴魁はかの有名な、黄山の奥にある村で作られます。良い品質になると、猛烈に深いコク(喉韻)に圧倒されます。
私はこの茶葉を一枚ビールに入れて飲むのが好きです。一枚入れただけで、ビールの味がベルギーのビールのように柔らかくなります。
余分な話はさておき、太平猴魁ですが、今年は非常に品質が良いと思いました。収穫前に雨が降らなかったことが幸いしました。去年と同じ値段でも、品質は遙かに上です。
一昨年も非常に品質が良かったのですが、今年の物はベースとなる茶葉の品質に加え、加工が上手に行われたために煙臭さが全くなくスッキリとした仕上がりになっております。
太平猴魁ですが、2種類の作り方があり、それぞれに香りが異なります。(私のHPに詳しく書いてあります。)
最初に割とモダンな作り方です。この方法は、殺青、揉捻、乾燥をそれぞれ異なる道具を使って行います。
実際一つ一つの加工を分け、また、専用の装置を使うことで、各プロセスが厳密に管理されるため、緑茶の香りが温存され、蘭の香りと称されるグリーンチックな香りが作られます。
それに対し、伝統的な加工法は、烘籠という竹製のバスケットが用いられ、この上に広げられた茶葉は炭火で炙られ、複雑な手順を経て製茶されます。
この方法で作られたお茶は、職人さんの感覚に頼って作られるため、蘭のような香りがせず、代わりに、生の栗のような、サツマイモのような甘い香りがします。
一般に、それぞれ異なる作り方で作られた太平猴魁を飲んでみると、殆どの人の第一印象はモダンプロセスで作られたお茶の方が香りがよいと感じます。
ところが、トリッキーなのは、本当に品質の良い茶葉は大抵、烘籠を用いた伝統プロセスにより作られているという点です。
そもそも、烘籠を用いた製造法は非常に複雑で、作業も大変であるため普通の品質の茶葉には用いられません。
献上茶になるような極めて高い品質の茶葉のみが伝統技法で加工され、非常に高額で取引されます。この為、モダンプロセスと伝統プロセスで作られたお茶をじっくり飲み比べると、じわじわと伝統プロセスで作られたお茶が美味しく感じられます。
私の息子達にも飲ませたところ、大受けで、美味しい美味しいを連発しておりました。子供の場合、強い香りのお茶よりも、自然な香りと強い喉韻(コク)のお茶の方が好むようです。喉韻が強い=母乳と味が近いそうです。
以下の写真をご覧ください。
二つの品質を並んで撮影しました。
どう見ても、右側の茶葉の方が品質が良さそうに見えませんか?
実は右側はモダンプロセスにより加工された茶葉です。機械を使って、一つ一つのプロセスを管理しているため、茶葉の色も綺麗で形も整っております。
左側は伝統プロセスで加工された茶葉です。色がやや茶色く、見た目的には今一ですが、お茶好きの人が飲むと、思わずうなってしまいます。
お茶は見た目だけで判断しては駄目という良い例です。
ところで、2010年物の太平猴魁を半額セールしております。私は無酸素状態で低温保存しているため、基本的に茶葉の鮮度は殆ど落ちておりません。今年の新茶を評価する際にも共に比較試飲を行いましたが、今年の新茶と変わらない鮮度でした。但し、今年のお茶と昨年のお茶は品質が異なるため、混在を避けるために、クリアランスをすることにしました。良い値段なので検討の価値ありですよ!
https://hojotea.com/item/g07.htm
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