IMG_3202
お茶を1-2煎だけいれた後、急須に茶葉を残したまま半日、或いは1日放置してしまうことはありませんか?1-2煎しかいれてないだけに捨てるのも勿体なく悩まれるかと思います。実は、いれかけで暫く放置しても再び継続的にいれられるお茶と品質劣化しやすいお茶があります。

栽培方法により劣化に差

お茶の場合、例えば、現代農業で作られた一般的な日本茶は24時間程度放置した場合、生ゴミ(痛んだ野菜)のような臭いが生じます。ところが、無肥料(窒素肥料を与えない)で作られた自然栽培茶の場合、同様の時間放置して比較的新鮮な香りが保持されており、いれかけの茶葉からは不快な臭いが感じられません。自然栽培茶であれば、前日の夜にいれたお茶を常温で放置しても、普通に翌朝もいれることが出来ます。この劣化臭は、微生物による腐敗というよりも、茶葉に含まれるアミノ酸が酸化することで生じる異臭ではないかと考えております。

窒素肥料とアミノ酸の関係

お茶は栽培方法によって、アミノ酸の含有量が変化します。お茶を分析したデータを見ると、窒素肥料の施肥量が多くなるほど、単位重量あたりのアミノ酸含有量が増え、逆にポリフェノール(カテキン)が減ります。逆に、窒素肥料を減らしたり、与えずに作られたお茶の場合、ポリフェノールが増え、アミノ酸が減少します。

いれかけの自然栽培茶と肥料栽培茶の保存経過

お茶の劣化の様子を理解するために、2つの異なる栽培方法で作られた日本茶を一回いれ、その後の品質変化を観察しました。
左は無肥料で作られた自然栽培煎茶、そして、右は肥料を沢山与えて作られた煎茶です。最初にお茶をいれたとき、肥料栽培の煎茶は非常に鮮やかな緑色をしておりました。①肥料を与える→②植物体に窒素が取り込まれる→③植物はより成長をしようとする→④より光合成を行うために葉緑素を多く生合成するというメカニズムにより、肥料を与えたお茶はより緑色になります。

いれかけのお茶の品質変化の経過観察

左が自然栽培茶、右は現代農業で作られた一般的なやや蒸しの強めの煎茶です。条件を揃えるために、どちらも茎をぬいてないお茶を使用しております。自然栽培茶は新鮮な状態でもやや黄色味を帯びているのがその特徴です。

IMG_3697

IMG_3701

お茶をいれた直後の写真。

IMG_3703

約12時間後の写真:左のお茶はいれたてと変わらずフローラルな香りがしているのに対し、右の茶葉には鮮度が感じられませんでした。

IMG_3705

約24時間後の写真:左の自然栽培茶は未だフローラルな香りがしておりましたが、右の茶葉からは劣化臭が感じられました。

IMG_3710

約36時間後の写真:お茶が僅かに曇ってます。この段階で徐々に微生物の菌数が増加してきているものと思われます。この状態でも自然栽培茶は比較的爽やかな香りでした。

肥料栽培したお茶は初日の段階ではとても鮮やかな緑色ですが、12時間後には鮮やかさが消え、24時間後には褐色化しました。それに対し、自然栽培茶は色が最初から最後まで比較的安定した色をしており、殆ど褐変が起こりませんでした。茶葉の香りについては、12時間後の段階では自然栽培茶は未だ新鮮でフローラルな香りでしたが、右側のお茶は既に鮮度が感じられませんでした。24時間経過の時点では、自然栽培茶は鮮度は多少落ちたもののまだフローラルな香りがしていたのに対し、右側のお茶は傷んだ野菜のような臭いが生じておりました。

IMG_3712

24時間経過後のお茶の水色:大きく変化してない自然栽培茶(左)に対して、肥料栽培のお茶は色が褐変しました。

お茶に含まれる旨味が香りの劣化に関係

茶葉に含まれるアミノ酸量が少ない自然栽培茶は湿った茶葉を長時間放置してもフローラルな香りが安定して維持されます。お茶に含まれるアミノ酸(旨味成分)がメイラード反応などにより経時的な品質劣化するものと推察されます。日本語ではアミノ酸の味を「旨味」という言葉で呼ぶために、旨味成分が多い=美味しいと勘違いされがちですが、旨味はグルタミン酸ナトリウムのようなアミノ酸特有の味を差す言葉であり、お茶の美味しさとは関係ありません。中国、台湾、インドなどでは、お茶の質を決める上でも重要な指標は、余韻の深さであり、自然栽培茶のようなポリフェノールを多く含むお茶は、非常に深い余韻が感じられます。余韻の深いお茶は、何回もいれられ、また、暫く放置しても劣化しにくい性質を有します。

私自身、15-16時間内であれば継続していれることがあります。長時間放置してもそれなりに鮮度の良い香りが楽しめるのはお茶の種類に関係無く自然栽培茶に限定されます。また、お茶がある程度大きく成長してから摘まれる烏龍茶は、茶摘みのタイミング上アミノ酸量が少ない為か、自然栽培茶でなくとも鮮度が比較的長く維持されます。
暫く席を離れる場合は、いれかけの茶葉を冷蔵庫にいれておくと、より長い時間鮮度が維持されます。同様に冬場はより長時間新鮮な香りが保持されます。

日本茶(緑茶)、中国紅茶、白茶、プーアル熟茶、プーアル生茶、ジャスミン茶、烏龍茶という厳選された茶葉7種のお試しセット

関連記事 RELATED ARTICLES

お茶に関する最新情報を確実にキャッチするには? SOCIAL NETWORK

1,Twitterをフォローする。2,FaceBookで「いいね!」を押す。3,メールマガジンに登録する。という3つの方法で、お茶に関する最新情報をキャッチすることができます。今すぐ下のツイッターフォローボタンや「いいね!」をクリック!

メールマガジン登録で無料サンプルをもらおう!
メールマガジンにご登録いただくと無料のサンプル茶葉のプレゼントや希少商品の先行購入など様々な特典がございます。ソーシャルメディアの購読だけでなく、メールマガジンへのご登録もお忘れなく!

HOJO TEAオンラインショップNEWS一覧を見る

2022年産の鳳凰単叢老欉柿花香単株と桂花香単株を発売
2022年産の鳳凰単叢老欉単株茶を2種類発売しました。 何れも極めて樹齢の高い木ゆえに、非常に奥行きのある、長い余韻のお茶です。濃い後味に加え、1年以上の熟成による、濃厚な香りをお楽しみ戴けます。 鳳凰単叢老欉柿花香 単 …
ダージリンファーストフラッシュとオータムナル紅茶を発売
ダージリンを2種類発売しました。今回の新商品は、Arya茶園の春摘みファーストフラッシュのルビーと秋摘みオータムナルのルビーです。春摘みのルビーは4月に仕入れ、その後無酸素状態で熟成させることで、香りをさらに高めました。 …

最新の記事 NEW ARTICLES

野生茶を求め雲南省臨滄市南西部の山村へ
現在、雲南省臨滄市の南西部にてお茶の仕入を行っております。 当店にとって重要な商品の1つに野生茶があります。野生茶は製茶はもちろんですが、原料確保が一番大きな課題です。 今回、新たに野生茶が有る場所があるらしいと言う情報 …
雲南省のお茶産地にてプーアル茶、白茶、紅茶の生産
3月24日から中国の雲南省臨滄市の南西部、永德、鎮康県にてお茶の仕入れ、生産を行っております。 雲南省は世界一と言っても過言で無い極上の原料がある反面、生産に対する管理が甘いため、出来合のお茶を仕入れたのでは、理想とする …
2022年産の鳳凰単叢老欉柿花香単株と桂花香単株を発売
2022年産の鳳凰単叢老欉単株茶を2種類発売しました。 何れも極めて樹齢の高い木ゆえに、非常に奥行きのある、長い余韻のお茶です。濃い後味に加え、1年以上の熟成による、濃厚な香りをお楽しみ戴けます。 鳳凰単叢老欉柿花香 単 …
ダージリンファーストフラッシュとオータムナル紅茶を発売
ダージリンを2種類発売しました。今回の新商品は、Arya茶園の春摘みファーストフラッシュのルビーと秋摘みオータムナルのルビーです。春摘みのルビーは4月に仕入れ、その後無酸素状態で熟成させることで、香りをさらに高めました。 …
標高2100mのシングルガーデン産プーアル生茶、 火地古樹生茶2021を発売
火地古樹生茶2021を発売しました。 このお茶は、小さな単一茶園(シングルガーデン)のお茶のみから加工されたプーアル生茶です。 https://hojotea.com/item/d147.htm シングルガーデン産のお茶 …
ペットボトル入りのお茶の味に大きく影響するビタミンCの存在
近年、多くの人々にとって、お茶を飲むということはペットボトル入りのお茶を飲むことが普通な今日この頃ですが、本コラムでは、ペットボトル入りお茶の特徴的な味に焦点を当ててみたいと思います。 酸化防止目的のビタミンCの添加 コ …
鳳凰単叢蜜蘭香2023と老欉姜花香2022を発売
鳳凰単叢烏龍茶を2種類発売しました。今回販売したのは、蜜蘭香濃香2023 No.1と老欉姜花香2022です。 https://hojotea.com/item/houou.htm 質の良い鳳凰単叢の特徴 良質な鳳凰単叢は …
ちょっと変わった白茶の楽しみ方!驚きの応用アイデアをご紹介
水出しで抽出した白茶と、お湯で淹れた白茶はまったく異なる香りになることをご存じでしょうか?本コラムでは、水出しを更に応用した白茶の楽しみ方を紹介したいと思います。 殺青工程の無い白茶には酵素が残存 白茶の特徴は、製茶工程 …
大雪山野生茶ベースの特注ジャスミン茶:野生普洱茉莉龍珠
半ば好奇心から、大雪山野生生茶をベースとしたジャスミン茶を作ってみました。 日本はもちろん、中国でも極めて珍しいお茶ができました。 https://hojotea.com/item/s08.htm ジャスミン茶を特注生産 …
ミルクの香りがする烏龍茶とは?
お客様から偶に「ミルクの香りがする烏龍茶」を紹介してほしいとお電話頂く事があります。また、台湾を訪れた際に飲んだミルク烏龍茶が忘れられないというエピソードも耳にします。このコラムでは、そんなミルクの香りがする烏龍茶に焦点 …

PAGETOP