【HOJO代表 北城彰】
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私が東方美人の買付で台湾の茶園を訪れたときの出来事です。私がまず通されたのは、試飲ルームでした。そこには、十近いお茶が並んでおり、また、試飲用のカップが整然と並んでおりました。
茶師のチェンさんは「あなたの求めるお茶を知りたいので、まずは試飲して欲しい」と言います。
でも、そこに並んでいるお茶には番号が振られているだけで、グレードも産地も何も書かれておりませんでした。
と様々な重いが頭をよぎりました。
チェンさんはただ、「では始めてください」と、非常に真剣です。
高級な東方美人は、
1)まるで熟したブドウのような蜜香
2)円やかでスムーズな口当たり
3)甘い後味
が特徴です。
これらの要素に集中し、評価を行いました。評価をする際は全ての要素を切り分け、それぞれの項目毎に集中する必要があります。
私は鼻の良さには自信があります。そこでまず、蜜香が特に強い物を幾つか選び出しました。そして次に香りは無視し、味だけに集中しました。味が特に円やかで、後味が甘い2種類を選び抜きました。
更に、私は茶殻を観察しました。良いお茶の場合、お茶を淹れた後の茶葉は例え冷えてもお茶と同じ香りがする物です。
また、良い東方美人=早い時期に摘まれてたものなので、茶殻を注意深く観察することで、小さなサイズの茶葉であることを確認し、最終的にある1つのサンプルを選んだのでした。
その後、チェンさんは私の評価に対し・・・全くコメントをなさいませんでした。
彼は、「貴方の好みは良く分かりました。」とだけ言い、試飲会は終了しました。
それから1年後、私たちは非常に友好的な関係を築いています。チェンさんは何故私に試飲をさせたのか、最近になってその理由をようやく語ってくれました。
チェンさん曰く、バイヤーの多くが二言目には「いちばん良い品質が欲しい」と言うそうです。でも、バイヤーの多くは自分自身、どれが高品質か分かっていないそうです。
「高級茶を見分ける目を持たない人に良いお茶は紹介できない」
これがチェンさんのポリシーなのです。確かに、自分自身が高級グレードを見分けられなかったら人に売ることが出来るはずが有りません。
私の試飲の結果は?
その結果は、HOJOの東方美人を飲んでみてください。
東方美人の原型はヨーロッパ人の間でフォーモサティと呼ばれ愛されました。当時イギリス王宮を始め、ヨーロッパで大ブームを巻き起こした台湾の伝説的なお茶です。
このお茶の魅力は何と言っても、フルーツのような香りと蜜のように甘い後味です。
この香りの秘密は、夏になると飛来するウンカに関係があります。ウンカが噛んだ茶葉は黄色く変色し、そして、東方美人特有のフルーツの香りのする物質を作り出します。
ウンカに噛まれた茶葉を一枚一枚選びながら摘み取る作業は、気が遠くなるほど大変であり、また、どの茶園にもウンカが飛来するわけではありません。ウンカが飛来するためには、「無農薬」であることは勿論、「運」が大切な要素でもあります。
その昔、茶農家が忙しさのあまり茶園を放置したところ、茶葉はウンカの大群に襲われ、汁を吸われた若葉は黄色く変色してしまったそうです。農家では茶葉があきらめきれず、それらの茶葉を収穫し、お茶に仕上げました。ところが、その偶然できたお茶を飲んでみたところ、まるでフルーツのような香りのするお茶に仕上がっていました。
このお茶は、フォーモサティと呼ばれ、ヨーロッパで爆発的な人気を博しました。フォーモサティは東方美人の原型と言われておりますが、現代の東方美人は当時のフォーモサティとは異なります。台湾における東方美人の製法は年々変化しており、年配の人は皆、昔の東方美人の作り方は現在の作り方とはかなり異なっていたと言います。
但し、茶葉の収穫方法だけは今も昔も変わりません。ウンカが汁を吸った茶葉の1芯2葉だけを丁寧に選択して摘みます。
東方美人は夏(6-7月)に飛来するウンカの攻撃を受けた茶葉からしか作ることが出来ません。中国でも東方美人の人気に乗じて、同名のお茶が作られているのですが、ウンカが飛来しないため、「似て非なるお茶」であり、本物の東方美人のようなフルーティな香りがありません。ウンカを養殖する等の試みまでもがなされていると聞きますが、やはり本物に勝る物はないのです。
台湾において、ウンカの飛来する茶園は毎年同じとは限りません。茶園主にとってウンカが飛来するかどうかは大変深刻な問題なのです。
茶園は台湾の南投縣にある海抜1000m以上の高所に位置しております。これらの地域は日が差すのは午前中だけで、午後から夕方にかけ、極めて広範囲にわたり霧に覆われます。この状態がほぼ慢性的に続くことから、茶葉には午前中しか十分な日光が当たりません。良質な烏龍茶にはスムーズな口当たりとほのかな甘みが感じられます。この味の正体はテアニンと呼ばれるアミノ酸です。テアニンは、「若い芽」に豊富に含まれており、茶葉が日光を吸収することで、カテキンをはじめとするポリフェノールへと生合成されます。
霧により日光を遮られた茶葉は、テアニンをポリフェノールへと変換しにくくなることから、高割合のテアニンが茶葉に含まれるのです。
東方美人は青心大有という品種から作られます。
夏の特定の時期(6-7月)になると、山の上に位置する茶園にはウンカの群れが飛来します。
飛来したウンカは、最も美味しい若葉の汁を吸います。ウンカがついた茶葉は、黄色く変色し強烈なフルーツ香を作り出します。
このメカニズムは未だ解明されておりません。私たちは、虫の攻撃を受けた茶葉は、人で言う抗体のような物質(植物の場合はファイトアレキシンと呼ぶ)を生合成すると推察しております。一般的に知られているファイトアレキシンの1つにテルペノイドと呼ばれる低分子の物質があります。これらの物質は、果物の香りがすることでも知られており、もしかすると、本製品の香りと関連性があるかもしれません。
東方美人の茶葉原料はこれらのウンカの攻撃を受けた茶葉だけを選び、1芯2葉だけが摘み取られます。
収穫後、茶葉は日光下、地面に広げられ萎れさせます。これを日光萎凋と呼びます。栽培地は標高が高いことから、普段も薄曇りの天候であるため柔らかい日光が茶葉へと降り注ぎます。天気が良く、日差しが強い場合、黒い覆いを茶葉の数メートル上に張ることで、日光を和らげます。
日光萎凋を行うことで、茶葉内の水分が蒸発し、緩やかに発酵が開始されます。茶葉は徐々に柔らかくなり、爽やかな香りを放ち始めます。
烏龍茶の発酵方法は紅茶とは大きく異なります。日光萎凋の完了した茶葉は、エアコンの効いた室内へと運び込まれ、シートの上に撒かれ、冷却と同時に水分の蒸発を促します。東方美人用の茶葉は、通常の烏龍茶(1芯3-5葉)と異なり、1芯2葉だけが用いられるため、茶葉に含まれる水分量が高く、より長時間の萎凋が行われます。長時間萎凋を行うことは、同時に成分の加水分解や酸化を促進し、これにより東方美人特有の甘い後味が形成されます。
茶葉は竹で出来た笊の上に撒かれ、広げられます。笊の上に広げることで発酵を促し、再度、茶葉を持ち上げては、「斜めにしたざるに落とす」、「静置して発酵」を繰り返します。
東方美人の発酵は標準的な烏龍茶よりも長時間行われます。但し、茶葉が若くもろいため、作業は全体的に穏やかに執り行われます。
発酵が完了した茶葉は、加熱され、熱で酵素を失活することで、発酵を停止します。テンポ良く発酵を止めなかった場合、茶葉の発酵はその後も進行し、紅茶に近い風味になってしまいます。
攪拌の回数、静置する時間は茶葉の水分量、香り、色を基準に決断されます。この微妙なタイミングは職人たちの決断により決断されますが、この「決断」烏龍茶の品質を大きく左右します。職人たちは「親方」の指示で動きます。この親方の優劣により、烏龍茶の香りは大きく左右されます。優れた品質を安定的に得る為には、優れた親方と付き合わねばなりません。
茶葉は揉捻装置で揉まれます。東方美人の場合、布で包んで揉む、「包揉(ほうじゅう)」という作業は行いません。若い茶葉が用いられているため、強い揉捻は茶葉を壊してしまい、苦味や渋みが増すため、伝統的に非常に緩い圧力で、穏やかに行われます。
揉捻を行うに従い、茶葉の温度は下がり、それに伴い硬くなり、クリスピーナ状態に変化します。その場合、再度、60-80℃の加熱を行うことで、茶葉を柔らかくし、揉捻を継続します。揉捻が弱すぎると、お茶の味があまり感じられず、また、強すぎると、味に雑味が感じられたり、茶葉が壊れたりする原因になります。
茶葉の状態、その日の天気、その他様々な要素を考慮に入れ、一連の作業の条件を適時変更するのが大切であり、それが「親方」の力量です。
揉捻が完了した茶葉は、乾燥機で乾燥され水分を5%以下に落とし完成となります。
東方美人の保存は常温で行われ、冷蔵庫で保存する必要がありません。このお茶は、年月が経つほど熟成が進み、よりマイルドな口当たりと、気品ある香りになると言われております。湿度を避け、直射日光の当たらない場所に保管してください。
赤、白、黄、緑、茶の5種類の色から成り、白い産毛の芽を多く含まれている茶葉が良いとされております。
良質なお茶は茶葉の形状及びサイズが揃っております。形状の均一性は、高い製茶技術と良質な茶葉を使用していることを示しております。
茶葉以外の異物、例えば繊維、竹、木片、砂や石が含まれない。
お茶を淹れたとき非常に強いフルーツの香りがします。完熟マンゴやマスカットに近い香りがし、複数回お茶を淹れてもその香りは持続します。
明るく、透明な黄〜オレンジで不純物を含みません。
喉ごしがとてもマイルドで、芳醇、甘い後味が感じられます。
茶葉が完全な1芯2葉の形状を保っており、破損した茶葉が少ないことが高級茶の証です。また、同じ1芯2葉の茶葉でも、シーズンの終わりに収穫された茶葉はサイズが一回り大きいのが特徴で、香りや味がシーズンの最初に摘まれたお茶とは質・強度の点で異なります。茶葉が割れている原因は、主に乾燥のし過ぎによる水分ロスを意味しております。水分の低下に加え、原料茶葉が貧栄養状態で育った場合、或いは過度に成長しすぎた茶葉を原料に用いた場合、原料茶葉の水分量が少なく、容易に乾燥されてしまうため、良質の茶葉と比べ水分が少なくなり、割れやすい原因となります。
烏龍茶は、香りと味のバランスがとれたお茶です。また、タンニン及びポリフェノール量が少ないことから、刺激性が少なく、お茶を飲むと腹痛が心配という方でも、安心して飲めるお茶です。
東方美人茶は、香りが極めてフルーティで且つ、甘い後味が特徴の飲み心地です。そのため、食後のデザートと共に、或いは少し贅沢なティータイムにいかがでしょうか。
烏龍茶の淹れ方は非常にややこしく、苦手という方も少なくないかと思います。しかしながら、淹れ方の理論さえ理解してしまえば、実際、そう難しい物ではありません。
まず、煮立った熱いお湯を用いてください。必ず、お茶を淹れる直前に湯を沸かすようにしてください。湯を沸騰させることで、塩素等の水道水に含まれる有機物を揮発させるのですが、長時間沸騰し続けた場合、水(特にヨーロッパ系の水)によっては逆効果になることがあります。
沸騰させた湯を80-85℃まで冷ましてから用いて下さい。沸騰した湯で淹れた場合味も香りも強く出ることから、その方が好きという方もおられるようですが、80-85℃で淹れた東方美人は円やかで蜂蜜をお湯に溶かして飲んでいるかのようにデリケートな味がします。
茶葉を急須に入れる前に、急須を熱湯で温めることで温度の低下を防いで下さい。
ポット(急須)はガラス製又は瀬戸物製が適しております。
まずポットに沸騰した湯を注ぎ、温めます。茶葉を入れ、いきなり湯を注いだのでは、温度が下がってしまうため、事前に熱してください。
ポットの湯をピッチャーに移し、今度はピッチャーを温めてください。
通常50mlに対して1gの茶葉が用いられます。標準的な急須は150mlの容積があります。この場合3gの茶葉が必要になります。テーブルスプーンの場合は2杯です。
このような容器があると、茶葉をこぼさずに取り扱うことが出来便利です。
温まった急須に茶葉を入れてください。茶葉を入れる際、指で触ると、香りが移ることがありますのでご注意ください。
茶葉を十分に湯に浸して下さい。湯を注ぐときは出来るだけ低い位置からそっと注ぎ入れて下さい。
1煎目は55秒間蒸らします。
待っている間、先ほどピッチャーにうけた湯をグラスに注ぎ、グラスを温めてください。但し、この動作は省いてもOKです。
茶を低いところからピッチャーに注いでください。直接、グラスに注がれる場合、何回かに分け、交互に注ぐことで各グラスの濃度を均一にしてください。初心者の場合、ピッチャーを使われることをお奨めします。
最後の一滴まで注いでください。最後に残ったお茶には美味しさが凝縮されております。お茶を淹れた後は、急須との蓋をとり茶葉の温度を下げて下さい。
グラスの湯を捨てて、お茶を注ぐ準備をしてください。
注ぐときの基本は右側から左へ注いでください。一番、右側がお客様、或いは、目上の人用、一番左側が自分用です。
高級な紅茶なので、沢山注ぐのではなく、少なめに注ぎ、香りを楽しみながらご賞味下さい。
これまではグラスを例に飲み方を説明してきましたが、英国風ティーカップ、中国風の湯飲み等、お好みに応じお選びください。
お茶を淹れる温度が適切な場合水色は黄色になります。逆に温度が高すぎた場合、水色はオレンジ色になります。この場合、味に雑味が感じられます。
お茶鑑定用の容器で、茶葉をのせた写真です。良質の茶葉はお茶を淹れた後も、強い香りを放っております。茶葉はお茶以上にお茶の品質を語ってくれます。
直射日光、高温多湿を避け、冷暗所に保存してください。室温に保管することで、さらなる熟成(非酵素的な酸化)が進み、甘みが増し、香りがより円熟します。尚、お茶の葉は水分が5%前後と非常に乾燥していることから、環境の香りを瞬時に吸収します。そのため、お茶の袋はしっかりと密閉し、缶等の容器に入れた上で、通気の良い場所に保存してください。
尚、熟成の具体例として、紅茶類の場合、熟成が進むにつれ、甘みが顕著に増し、その代わり、香りに関しては徐々に薄れてゆきます。東方美人に代表される、蜜香系のお茶の場合、味も香りも強度が増すと言われております。台湾では長期保存された東方美人は新茶の数倍の値段で取引されることもあります。
購入時の品質(熟成しない状態)を出来るだけ維持したい場合は冷蔵庫に保管して下さい。冷凍庫はあまりお勧め致しません。その理由として、冷凍庫の場合、冷蔵庫よりも食品の劣化が起こりやすい為です。冷蔵庫に保管される場合は、完全に密封した上でお茶を保管してください。そうしないと、冷蔵庫から取り出したときに環境中の水分が結露し、お茶が湿気る原因となります。尚、冷蔵庫には他の食品の香りが充満しているため、香りが移りやすく、お茶の品質を損ねるおそれがありますので厳重な注意が必要です。理想は、お茶専用の冷蔵室を用意することです。
因みに、お茶好きでも知られる徳川家康は、静岡の本山茶を瓶に入れ、静岡の涼しい山にて保存したそうです。この保存により、味が円やかになり、美味しくなったと言われております。お茶における保存は、お茶を作るプロセスの一部とお考えください。お客様の保存条件が適切であれば、お茶の味は購入時よりも更に美味しくなります。

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