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プロがお茶を評価するときに重視する余韻とボディとは?
- [2022.08.04] Written By 北城 彰(Akira Hojo)

お茶を選ぶとき、多くの人は香りに注目しがちです。
香りが重要なのは勿論ですが、我々プロが重視するのは、味香りの立体感です。幾ら香りが強くても、味香りに立体感のないお茶は美味しいと感じられないからです。
立体感と言われても漠然としてて分かりにくいと思いますので、以下で詳しく説明します。
味香りの立体感とは?
立体感というと、なにやら難しそうですが、実は誰もが無意識に感じています。
立体感には、「奥行き=縦の感覚」と、「広がり=横の感覚」があります。
縦の感覚:余韻(コク・後味・奥行き)
横の感覚:ボディ(広がり・ふくよかさ)

余韻というと分かり難いですが、簡単に言うと、味の濃さやコクと同じ意味です。
コクというのは喉の奥に染みこむような感覚、奥行き(縦の感覚)です。
例えば、コンビニアイスとハーゲンダッツを比較した場合、ハーゲンダッツにはコクがありますが、このコクは余韻、後味、濃さ、奥行きという言葉で言い換えることが出来ます。
横の広がりの感覚、ボディ
横の感覚である、ボディはテクスチャーや食感を指す言葉ではありません。
食品や飲料を口に入れたときの味香りの広がりを指す言葉です。
例えば、ミルクはフルボディです。口に含んだときにふわっとなり、味香りが豊に感じられます。
ミルクティが人気なのも、実はミルクによりお茶の味がフルボディ(ふくよか)になる点が関係しております。
食材やお茶の質を反映するのは余韻(コク)
縦横の2要素のうち、食品の質を反映しているのは縦の感覚である、余韻、コク、後味です。
例えば、野生のキノコ、天然の魚介類、自然栽培のお茶など、質の良い食材にはしっかりとした余韻コクが感じられます。

果物も、ただ甘ければ美味しいわけでは無く、美味しい果物には甘さに加え、濃さ(コク)が感じられます。
例えば、甘いだけのミカンは案外美味しくありません。
美味しいミカンには、甘さに加えて、味に濃さがあります。これが余韻に相当します。余韻があるからこそ、味や香りが印象に残ります。
果物だけでなく、お茶、ワインも、ウイスキー等、上質のものには余韻がしっかりと感じられます。
余韻(コク)を得るためには、動植物はゆっくりと成長する必要があり、肥料や飼料を与えて育った食品は、余韻(コク)が弱くなります。
中国、台湾、インドの場合、余韻(コク)の強いお茶ほど、高品質なお茶として認知され、高値で取引されます。このようなお茶を作り上げるためには、無肥料にてゆっくりと育てる必要があります。
また、高い標高、樹齢の高さなども余韻(コク)の増加に寄与します。

一般的に、コクの強弱に関係するのは鉄と考えられております。事実、鉄分を多く含有する急須でお茶をいれると、コクが増します。
ボディを高めるのはアルカリ金属
反面、ボディは土地の土質が関係します。土壌に含まれるアルカリ金属によってボディは決まります。
つまり、農家が肥料を与えようと与えまいと、アルカリ金属を豊富に含有する土壌であればボディは強くなります。
ボディを高めるアルカリ金属としては、ナトリウム、カルシウム、カリウム、ケイ素などが代表的です。実際、これらの金属をお茶に添加すると、劇的にボディが増します。
農家では貝化石や石灰、シリカなどを土壌にまくことで、土壌改質をすることがあります。この目的は土壌のアルカリ金属濃度を高めることで、ボディを増強することです。
ワインの有名産地であるボルドーやブルゴーニュも石灰岩質です。カルシウムを豊富に含むために作物は何を作ってもフルボディとなり、それがこれらの産地を有名にしている本質的な理由です。
また、九州の宮崎県、鹿児島県、熊本県には、シラス土というケイ素からなる火山灰性の土壌があります。シラス土で構成される地域の野菜、果物、水、お茶はフルボディの味香りを呈します。
近年、鹿児島のお茶は海外市場での人気が高まっておりますが、その最大の理由は、フルボディの個性ゆえです。
試しに、サントリーに「阿蘇の天然水」というミネラルフォーターを飲んで見てください。この水は驚くほどにフルボディです。円みのある味が特徴的です。
ボディの強弱は質では無く個性
ボディの強弱は、お茶の品質ではなく、「個性」として捉えるのが適切です。
フルボディのお茶は味や香りに広がりを呈するために、豊かな印象を与えます。
従って、の余韻が同じレベルのお茶が2種類あったとすると、自然とフルボディのお茶の方が人気が出がちで、それに伴い、高値が付きがちです。
この理由から、お茶の名産地と呼ばれる場所の多くは、アルカリ金属を豊富に含み、お茶がフルボディの個性を呈します。

<武夷山の岩は、海底の隆起により形成されており、豊富なアルカリ金属を含む>
例えば、凍頂山、武夷山、君山銀針の産地の君山島、プーアル茶の有名産地である、老班章、布朗山、易武、昔帰、忙肺、馬鞍山等。これら産地のお茶は栽培方法に関係無く、フルボディを呈します。
しかしながら、実はフルボディでも余韻のないお茶は美味しくありません。
また、逆にボディが無くても余韻がしっかりとしているお茶や食品は美味しく感じられます。
コカコーラが人気がある本質的な理由は、余韻があるためです。コーラはボディは軽めですが、コクが感じられるため時代を超えて人気が廃れません。
余韻があってこそのボディであり、ボディだけでは価値がないという点が重要です。つまり、名産地=高品質とは限りません。
化学調味料の取り過ぎで脳がフルボディに慣れすぎている現代人
味の本質、品質の本質は余韻(コク)なのですが、現代人はややボディに中毒化している傾向があります。
この最大の理由は、グルタミン酸ナトリウム(代表的な商品:味の素)をはじめとするアミノ酸調味料(化学調味料)の日常的な摂取にあるように思います。
天然の昆布の旨味成分はグルタミン酸です。それに対して、旨味調味料はグルタミン酸ナトリウム(グルタミン酸ソーダ)です。
アミノ酸調味料の場合、グルタミン酸を「ナトリウム」と反応させて結晶化することで商品化しているのです。
昆布の旨味成分:グルタミン酸
アミノ酸調味料:グルタミン酸ナトリウム
前述したとおり、ナトリウム(アルカリ金属)は、フルボディを呈します。このため、旨味調味料であるグルタミン酸ナトリウムも太いボディを呈します。
テイスティングのやり方を学べば、化学調味料が使われている食品は香りを嗅いだだけで(香りの広がりを嗅ぎ分けることで)判別できるようになります。
(但し、例外的に食塩:塩化ナトリウムは、ボディを呈しません。)
日本のスーパーに行くと圧倒多数の食品には化学調味料が使われております。ハム、漬け物、ラーメン、カレールー、キムチ、煎餅、スナック菓子など、あげ出せばきりがありません。
日頃から化学調味料を摂取している人は、フルボディの味に慣れすぎてしまい、脳がフルボディでないと物足らないと感じるようになります。ある意味、フルボディの味が脳に刷り込まれてしまうのかも知れません。
日常の食事から化学調味料を減らすことで、ボディのある味の連続摂取から解放され、結果、お茶や他の食品の質の優劣を敏感に感じられるようになります。
経験上、食事の調味料や素材に日常気を使っている人は、お茶の経験の有無に関係無く、お茶の質に対して敏感です。
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