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無農薬陳年老茶30年もの
- [2006.11.10] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
先日、台湾で購入したお茶の1つを紹介します。本当は、他のお茶もどんどん紹介したいのですが、最近他にも紹介したいことが目白押しなので(嬉しいことですが)、順番に紹介していきます。烏龍茶のプロセスについても、定期的に公開しますので楽しみにしてください。
今回紹介するお茶は、「陳年老茶30年物」です。こんなお茶があることをご存じでしたでしょうか?
陳年老茶、中国語ではチンネンラオチャと発音します。このお茶は、烏龍茶を「かめ」の中に入れ、30年間寝かした物なのです。プーアル茶はカビによる発酵を伴う物の、このお茶は、発酵は一切関係しません。寝かすことにより、成分がゆっくりと熟成します。物凄くスムーズな口当たりにもかかわらず、歴史を感じさせる深みのある香りがするのです。
このお茶を熟成させる際は、ただかめの中に放置しておけばいいわけではなく、数年おきに取り出しては、乾燥してあげなければなりません。乾燥をせずに放置すると、カビが生え、「黒茶」になってしまいます。この乾燥の選択でも品質は大きく変わります。乾燥方法としては、1)熱風で乾燥、2)オーブンで乾燥、3)電子レンジで乾燥、4)炭火で乾燥、5)ドラム型の焙煎機で乾燥がありますが、一番良いのは炭火なのです。
炭火と聞くと、何だか焦げ臭いイメージがありますが、本当に完全燃焼した炭火は、全く臭みがなく、スッキリとした鼻に抜けるような香りに仕上がるのです。実際、台湾の多くの会社では、オーブンでの乾燥を行っております。オーブンでの乾燥は、茶葉に「焙煎臭」を与え、結果として、焦げ臭いイメージのお茶になってしまいます。
おじいさん、腰大丈夫?と思わず心配になってしまいました。こうした熟練の職人により、陳年茶は作られていくのです。
自慢の炭で作った火。全く煙臭が感じられませんでした。
籠の下は炉になっており、茶葉はカラッとスッキリした味に仕上がっていきます。
私が訪問した工場では、熟練のおじいさんが黙々と火入れを行っておりました。勿論、乾燥は炭火です。烘籠(中国語でホンロン)と呼ばれる、籠を用い完全燃焼した火であぶるのです。火入れを行う部屋は、非常に熱く、その中でおじいさんが黙々と働いておりました。私が購入を決めた会社では、この火入れ工程に物凄いこだわりを持っているのです。彼らは使用する炭にこだわっておりました。使用木材の種類、炭の質が、最終製品の味・香りに大きく影響するそうです。
ビンテージ物のお酒と同じく、どのお茶でも寝かせられるわけではありません。例は悪いですが、ウイスキーの角瓶を30年寝かしたところで、あまり価値は上がりません。
健康的に育った、みずみずしく高品質の茶葉をから作られた烏龍茶のみが、陳年茶の製造に適しているのです。
今から30年前と言えば、私はまだ右も左も分からない小僧でした。陳年茶と言って喜んでおりますが、意外と私も古かったのですね・・・。
当時の製茶技術は今とは大きく異なっておりました。まず、萎凋室にエアコンがなく、袋に入れて揉捻をする、包揉の機械化も進んでおりませんでした。そのため、茶葉の形状は、現在の玉のような烏龍茶とは異なり、リーフがよれたような形状をしております。どちらかというと、中国福建省の伝統的な烏龍茶(岩茶等)にそっくりの形状です。
今回購入した、陳年老茶30年物ですが、何と、無農薬茶なのです。私としても、無農薬茶以外は輸入しないため、今回の旅で無農薬の陳年茶が見つけられるかどうかが重要なポイントでした。無農薬の陳年老茶は、更に確認のために、農薬テストを行い、科学的にも汚染がないことが確認されております。
最後に、陳年老茶30年物の味について説明します。このお茶は、成分が十分に熟成しているため、茶葉は濃い焦げ茶色をしているにもかかわらず、水色は意外に濃くありません。どちらかというと、薄目の茶色で、お茶を淹れると、何とも言えない、スッキリとした香りがします。多少焙煎香がする物の、同時に乾燥フルーツのようなフルーティな香りが感じられ、サッパリとした飲み心地です。
茶に湯を注ぐときは、比較的高い位置から、10%位の湯がこぼれる程度に湯を入れます。急須の下にあるのは、中国茶専用のセットです。
ポットの温度が下がらないよう、熱湯をかけてあげます。烏龍茶の味と香りは、温度が高いほど美味しく抽出されます。
最後の一滴まで落とすのが大切です。最後に残った滴には美味しさが凝縮されております。
茶葉が黒いにもかかわらず、水色は透明で、薄い茶色をしております。<
油っぽい食事をしたあとには、特に美味しく感じます。台湾では脂肪を流してくれるのだと言われておりました。全く、渋みや苦味がないため、子供から老人まで飲むことが出来、私が大好きなお茶の一つです。因みに、陳年老茶は熟成茶であるため、お茶を水筒に入れて会社に持っていったとしても味が変わりません。温かい老茶をお洒落葉水筒に入れ、外で飲んでみるのも良いですね。これからの季節にはぴったりのお茶です。
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