- ホーム >
- 茶器・急須
宜興の茶壺を大量入手
- [2010.10.29] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
先日、KLにある知り合いのお茶屋さんが店を閉めるとの連絡を受けました。
そこは女性のオーナーが40年以上も続けている店でしたが、最近体調が悪く、病気がちなために商売を辞めることになりました。
実は彼女には30年以上前に購入した宜興の茶壺(茶壺とは後での急須を指す中国語)コレクションがありました。
これらの茶壺は全て作家による手作りで、これらの茶壺を制作した作家の多くは現在では非常に有名になっております。
これまでこれらの茶壺は売られることなく、彼女が自らのコレクションとして保管しておりました。ただ、先日、急遽入院費が必要とのことで、まとめて購入することを条件に、購入してくれないかという話が来ました。
30年前は宜興といえども茶壺の値段は非常に安く、今の時代では信じられないほどに安価に購入しているため、彼女が十分な利益を得た上でも私にとって十分魅力的な値段を提示してくれました。
彼女の店を訪れてみると、大量の茶壺がありました。但し、私のお客さんの殆どは、既に陶器の土の質とお茶味との関係を熟知しており、茶壺を選ぶに当たり、土の性能を非常に気します。このため、魅力的なデザインは沢山ありましたが、全ての茶壺に関し、それぞれに湯を流し入れ、その湯の試飲を行うことで陶器の性能を確認し、湯の味を円やかで喉越し豊にする茶器のみを選び出しました。結局、全体の1割程度の茶壺が性能的に優れており、それらの内、現実的な値段の茶壺のみを購入しました。(中には数百万円の茶壺もありました。)
結果的に購入した茶壺の殆どが、朱泥または紅泥でした。私としては、他の種類の土に関しても興味があったのですが、湯の味に基づき客観的に選択をすると、紫泥は殆どが全滅し、緑泥に至っては全てのモデルが却下されました。予想通り、緑泥は何れのモデルについても湯の味をフラットにしてしまい、中には湯に渋味を生じる悪質な土もありました。今回入手した茶壺は、数十年前に作られた物で、中には文化大革命の前に作られたものもあり、そのために作家名が入っておらず、「中国宜興」としか陶印のない物もありました。
とにかく共通して言えることは、土の性能が凄まじく良く、普通の水を通しただけで、日本の急須の常識では信じられないレベルの喉越しが得られます。
極端な話、凍頂烏龍を通しただけで、天池梨山茶並みかそれを超える品質のお茶に変化してしまいます。
宜興製の茶壺は、多くのお茶ファンがあこがれる茶壺ですが、時代と共に使用される土の性能は変化しつつあります。現在においては、これほどの優れた土の茶壺は非常に入手が困難と言えます。
私自身、宜興製の茶壺は常に注目しており、宜興へも足を運んでおりますが、同じ朱泥でも昔に作られた茶壺とは品質に劇的な性能差があります。
更に宜興の茶壺の優れた点は、焼き方にも見られます。素材の性能を生かすために、日本の急須のように高温での焼成を行わず、素材に含まれるミネラルの結晶が溶ける寸前の温度で焼かれており、極めて高い多孔性が維持されております。但し、その分素材が焼きしまって(ガラス化不足)ないため、強度には欠けます。
宜興の茶壺の性能は材質だけにとどまらず、使い勝手に関しても非常に高く評価することが出来ます。特に、お茶の流れる出す速度に関しては、茶漉し穴のサイズや数、穴の位置に関し多くの工夫が見られ、非常に速い流速で湯が流れ出すため、大変優れた道具に作り上げられております。
最後にデザインについてですが、これは日本の急須作家にも是非参考にして頂きたい点だと思うのですが、急須の注ぎ口や持ち手がボディと一体感があります。
佐渡の急須もそうですが、宜興の急須は生磨き工程という作業を経て作られます。この工程は、一端作り上げられた急須を、石、竹、水牛の角等で表面をしめながら磨きあげる工程で、通常、この工程は数日間かけて行われます。
この工程ががゆえ、急須の持ち手や注ぎ口とボディとの境界線が無く、まるで、木から枝が生えているかのような自然な一体感があります。勿論、デザインそのものに関しては、やや中国的な物や古くさい物もありますが、細部への拘りと、道具としての機能の高さに関しては非常に経緯を表します。
因みに、お客様から「どうやって宜興の茶壺をが本物かどうか判断するのですか?」と質問される場合があります。答えは至って簡単です。
私にとっての「本物」の定義は、有名作家作かどうかという点ではありません。仮に、有名作家の名前の偽物であっても、土が本物ので有ればそれでよいのです。
私にとっての本物の宜興茶壺とは、①優れた性能の土が用いられ、②適切な温度(やや低温)で焼かれ、③お茶を淹れるために機能的な構造とデザインをしていることです。
お茶を正確に試飲する技術を身につければ、良い土の茶壺を見極めるのは非常に簡単です。私にとっては、例え茶壺が有名作家の作であっても、上記三点を満たしてない場合、魅力が感じられませんし、お客様にも勧めることが出来ません。
宜興茶壺は大変優れており、希望されるお客様には販売をしております。但し、私としては、日本の急須にも頑張ってもらいたいという思いがあります。
日本にも優れた土はあるはずですし、焼く際の温度を多少下げるなどの工夫により更に性能を高めることが可能ではないかと思います。
今回入手した宜興の急須の一つは自らのコレクションとして保管しました。この急須の性能を一つのベンチマークとして、今後、日本の急須で同質の性能が得られるように作家と共に開発努力をしていきたいと思います。
1,Twitterをフォローする。2,FaceBookで「いいね!」を押す。3,メールマガジンに登録する。という3つの方法で、お茶に関する最新情報をキャッチすることができます。今すぐ下のツイッターフォローボタンや「いいね!」をクリック!
- メールマガジン登録で無料サンプルをもらおう!
- メールマガジンにご登録いただくと無料のサンプル茶葉のプレゼントや希少商品の先行購入など様々な特典がございます。ソーシャルメディアの購読だけでなく、メールマガジンへのご登録もお忘れなく!
- 大雪山野生茶(生茶)2023年・2024年産 同時発売
- 大雪山野生生茶の2023年産と2024年産を発売しました。 2023年産については、マレーシアの倉庫で1年間熟成しております。 https://hojotea.com/item/d27.htm 雲南省でも入 …
- 佐渡無名異焼作家の渡辺陶三作:野坂粗土還元急須が入荷
- 野坂粗土還元焼成の茶器を発売しました。 今回入荷したモデルは、茶壺(後手急須)、フリーカップ、マグカップの3点です。 https://hojotea.com/item/tozo_nosaka_reduction.htm …
最新の記事 NEW ARTICLES
- 大雪山野生茶(生茶)2023年・2024年産 同時発売
- 大雪山野生生茶の2023年産と2024年産を発売しました。 2023年産については、マレーシアの倉庫で1年間熟成しております。 https://hojotea.com/item/d27.htm 雲南省でも入 …
- 佐渡無名異焼作家の渡辺陶三作:野坂粗土還元急須が入荷
- 野坂粗土還元焼成の茶器を発売しました。 今回入荷したモデルは、茶壺(後手急須)、フリーカップ、マグカップの3点です。 https://hojotea.com/item/tozo_nosaka_reduction.htm …
- 佐渡島の渡辺陶三製作:野坂粗土酸化焼成の茶器が入荷
- 佐渡島の陶芸家、渡辺陶三氏による「野坂粗土酸化焼成」の茶器を発売いたしました。 https://hojotea.com/item/tozo_nosaka.htm 野坂は佐渡島の沢根にある地区名で、相川金山に …
- 2300mの野放茶園産、高山白茶を発売
- 高山白茶を発売しました。 このお茶の茶園には、次の2つの特徴があります。 1. 標高2200-2300mに位置する茶園 2. 完全に野生化したお茶の木で構成される野放茶園 非常に理想的な環境ゆえに、お茶の品質も素晴らしく …
- 標高2100mの無農薬・無肥料茶園産の高山紫茶2024
- 2024年産の高山紫茶を2種類発売しました。 https://hojotea.com/item/d53.htm 2種類とも、同じ生産者が同じ地域内に保有する茶園の茶葉ですが、茶園の位置が異なり、また、生産日も異なります。 …
- 大雪山野生茶(普洱生茶)2024の散茶を限定発売
- 大雪山野生茶は、雲南省臨滄市永徳県の大雪山に自生する野生のカメリアタリエンシスから作られたプーアル生茶です。 野生茶とは 野生茶とは、樹齢が高いお茶や野生化したお茶ではなく、山に自生している天然のお茶を指します。 過去に …
- 鳳凰単叢烏龍茶の産地、潮州市鳳凰鎮を訪問(2024)
- 先月、鳳凰単叢烏龍茶の産地である潮州市鳳凰鎮へ、仕入れと生産者との打ち合わせを兼ねて出張しました。ちょうど台風の時期と重なり、山から潮州に戻れなくなるなどのハプニングもありましたが、無事に仕入れを終えました。鳳凰鎮にはこ …
- 前川淳蔵作の伊賀天然朱泥急須、宝瓶各種入荷
- 前川淳蔵作の伊賀天然朱泥の茶器が入荷しました。 今回入荷したのは、丸型宝瓶、急須、絞り出し、茶海です。 https://hojotea.com/item/maekawa_iga.htm 数百年前に古琵琶湖の湖底に沈殿した …
- 佐渡島:渡辺陶三作、無名異上赤茶壺と宝瓶が入荷
- 渡辺陶三氏作の無名異常赤急須および宝瓶が入荷しました。今回の入荷品は、後手タイプが中心です。 https://hojotea.com/item/tozo_joaka.htm 非常に稀少な上赤 「上赤」は、佐渡島の相川金山 …
- 非常に稀少な野生茶、永徳野生白茶2024を発売
- 永徳野生白茶を発売しました。このお茶は2021年に一度発売されましたが、瞬く間に売り切れ、その後の入荷はありませんでした。質が高く、個性的な香りで当店でも非常に人気の高いお茶です。 永徳野生茶は、雲南省臨滄市永徳県で、牛 …
- HOJO通販新着
- 特集
- メールマガジンバックナンバー
- お茶の種類
- お茶の産地
- 茶器・急須
- お茶のコラム-雑学-歴史-文化
- お茶を楽しむ
- お茶の作り方-製法
- お茶の品質を決める各種要素
- お茶の成分と効能
- お茶の安心と安全
- 食品
- お茶ビジネスの運営・記録
- 趣味活動
- お茶のランキング-おすすめ
- お茶に関する動画
- お茶に関するQ&A
- メディア掲載
- an anにてジャスミンパールが紹介されました。
- an an 「マガジンハウス出版」 No.1865、2013年7月24日号「夏のお取り寄せ」特集で弊社のジャスミンパールが紹介されました。
- マレーシアの全国紙 “Star Newspaper”に掲載して貰いました。
- 先日、マレーシアの全国紙「Star Newspaper」でHOJOの特集をしてくれました。 Starはマレーシアで最も購読数の多い新聞で、マレーシアのメディアでは最も影響力の大きな新聞です。 新聞の内容は、茶器によりお茶 …
住所:Lot No. T-215, 3rd Floor, Mid Valley City, Lingkaran Syed Putra 59200 Kuala Lumpur