意外に知らないお茶の発酵の基礎

[2006.09.17] Written By


お茶の解説にはとても頻繁に「発酵」という言葉が出てきます。
頻繁に出てくるだけに、今更「発酵って何?」とも聞き辛いし、まして知らないとお茶について理解を深められません。
そんなわけでお茶の発酵について出来るだけ「詳しく易しく」説明してみたいと思います。

お茶の発酵とはどんな現象?

本来発酵とは、微生物が関与する、人間にとって有益な現象を指す言葉でした。
しかしその後、よくよく研究をしてみると発酵には微生物の体の中にある「酵素」が関係していたのです。
「じゃあ酵素だけ取り出せたら、或いは酵素だけ作り出すことが出来れば微生物がいなくても発酵を自由自在に制御できるのでは?」と研究者たちは考えました。これがいわゆるバイオテクノロジーです。実際食品や薬品をはじめとする広い分野で、微生物から取り出された酵素が使われております。バイオリアクター、固定化酵素等様々な関連する技術が発達しました。
ともあれ今では微生物発酵も酵素発酵も「発酵」と定義されるようになりました。
お茶の場合「酵素による発酵」と、「微生物による発酵」があります。
以下の分類をご覧ください。2.は酵素による発酵で作られるお茶、それに対し3.は微生物による発酵で作られるお茶です。

1.不発酵 :緑茶、黄茶

2.酵素発酵  2-1.発酵度が僅か :白茶
2-2.発酵度が中間 :烏龍茶茶/プーアル生茶
2-3.発酵度が高い :紅茶

3.微生物発酵:黒茶(プーアル熟茶等)

発酵という限りは、人にとって有益な現象を指していなければなりません。
お茶の場合、発酵とは具体的にどういった現象なのでしょうか?

酵素による発酵-白茶、烏龍茶、プーアル生茶、紅茶

お茶の場合、酸化酵素による「酸化反応=発酵」です。酸化酵素の正式名称はポリフェノールオキシダーゼ(PPO)とよばれ、文字通りポリフェノールの酸化を触媒する(仲介する)酵素なのです。
お茶における酸化は、リンゴが茶色くなる現象と似ております。リンゴが茶色くなるのは、リンゴに含まれるポリフェノールが酸化酵素によりし、タンニンと呼ばれる色素に変化するためです。リンゴの表面のpHを酸性にしてあげたり、塩で酵素に嫌がらせをしたりするとリンゴは酸化しにくくなります。だから、切ったリンゴに塩水やレモン汁をつけると色が茶色くなりません。
強引に言えば、これも発酵、いえ、茶色のリンゴはあまり有益ではないため、やっぱり腐敗です。
お茶の場合、酵素の仲介する酸化で何が起こるのでしょう?お茶にもポリフェノールが重量の数十%も含まれており、それが酸化の主役です。お茶が酸化した結果主には以下のような現象が起こります。

1-苦みが渋みに変わる
2-生の葉に特有の香りが消え、別の「よい香り」が形成される。
3-緑色が退色し、同時に赤や黄色の色素が形成される。

これらはすべて酸化による結果です。

微生物発酵-黒茶

これについては以前にも説明しました。
黒茶の場合、主には緑茶を原料に微生物で発酵させます。チーズや味噌の発酵と同じです。カマンベールチーズの表面にはカビがついてますが、黒茶も同じで、良質のものは割ると中にカビが生育しているのが見えます。
カビが生育した結果、緑茶の成分がカビの作り出す酵素で分解され、さらに酵素の関与しない化学的な酸化も相成って黒茶特有の香り、色、味が形成されます。

以上をまとめると、
1-白茶・烏龍茶・紅茶は、お茶自身が持っている酵素による発酵
2-黒茶は、微生物の持っている酵素による発酵
ということになります。
黒茶の場合、製造に用いられる微生物が変われば当然その微生物に含まれる酵素も変わります。そうなると、作り出される香りも、味も、色も、更にはお茶の機能性も変わってきます。逆に言うと、危険性も秘めています。
しかし、安全性さえきちっと検証できているならば、黒茶には普通のお茶とは本質的に異なる成分が含まれている可能性があり非常に面白いと思います。

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