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凄い急須が出来そうです!
- [2011.07.20] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
日本にはあちこちに赤土と言われる土があります。
ただ、私が知る限り、その多くは赤と言うより黄色に近い色をしております。
これらの黄土ですが、ちょっと調べてみると、出土地域が縄文人が住んでいた土地と重なります。
つまり、縄文人はこれらの黄土が豊富な土地に住み、その黄土を使って縄文土器を作っていたと推察できます。
まず、黄土が出土する場所ですが、基本的にいわゆる「低地」にはありません。低地はどのように出来たかというと、川又は海の浸食により作られたわけで、低地の場合、海川由来の砂を多く含みます。
黄土が多く見られるのは、やや小高い場所です。
黄土というのは、実は鉄分を多く含む土で、粒子径が非常に小さいために粘度が高く、サラサラの赤土と異なり、黄土100%でも壺、茶碗、急須へと成形できる特徴があります。この為、歴史的に赤土で急須を作る際に、そのつなぎとして黄土が使用されてきました。
黄土100%で茶器を焼く場合ですが、焼く温度が高すぎた場合、粒子系が小さい=融点が低いことから土は溶けてしまいます。溶けてしまうと言うことは、つまり、ガラスを意味します。
ガラスのように一端表面が溶けると表面積が少なくなるため、また、鉄分(鉄鉱石の微粒子)が他の成分で覆われてしまうために、お茶を入れた際、ガラスの茶器でいれるのと殆ど変わらなくなります。
実は、中国宜興における、「朱泥」も黄色い土から作られます。宜興の朱泥も黄色をしており、粒径が細かいために低い温度で焼成をします。
黄色の土は焼くことで、オレンジ色へと変化します。オレンジ色ゆえに「朱泥」と呼ばれるわけです。つまり、本物の宜興の朱泥は習字で使う朱色の色をしており、赤色ではありません。
赤い色をしているのは、紅泥と呼ばれます。但し、宜興の朱泥は吸水性が非常に高い為、使用し始めるとみるみるうちにお茶の成分を吸い込み、そして吸収された成分は酸化により褐変をするため、最終的に朱泥は赤く変色します。
既に変色した朱泥急須の写真が多く流通しているため、朱泥=赤と考えている人が多くおりますが、誤りです。
実は現在、佐渡の黄土を用いて急須を作る実験をしております。
既にプロトタイプが届いたのですが、その色はまさに朱色をしております。
佐渡において「黄土」は、無名異土(赤いサラサラの土)のつなぎとして用いられておりました。赤土だけではサラサラで轆轤に適さないために粘性の高い黄土を混ぜる必要があったのです。
佐渡の無名異土も性能的には優れているのですが、性質の異なる黄土と混ぜると、性能が相殺されるため、どうしても宜興製の高性能な土にはかないませんでした。
ただ、混ぜている黄土自体も、天然の土ですし、色合いが宜興の朱泥にそっくりであるため、密かにこの土には昔から興味を抱いておりました。
高い温度で焼くと、溶けてしまうため、敢えて低い温度条件で焼いて戴いたところ、何と、想像を絶するほどに宜興製の朱泥と同じ色の急須が出来てしまいました。
更に性能をテストしたところ、それはそれは、凄いの一言です!遂に、日本製の急須が宜興の天然朱泥のレベルに到達した瞬間でした!
現在、焼成温度の最適化を行っている段階で、製品化にはあと数ヶ月かかりそうです。
佐渡の黄土を使ったプロトタイプの急須
佐渡の黄土を使ったプロトタイプの急須
中国宜興製の天然朱泥急須
中国宜興製の天然朱泥急須
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