• ホーム >
  • お茶のコラム-雑学-歴史-文化

お茶の学名から見るお茶の品種の由来

[2014.10.14] Written By

アッサム種
お茶にはアッサム種、ヤブキタ種、中国種など様々な品種名がありますが、実際にはどのような規則に基づいて分類されているのか詳しく説明したいと思います。

種と品種は異なる事を理解することが重要

お茶は正式には、以下の様な分類になります。

Family (科)  Theaceae
Genus(属)   Camellia(カメリア)
Species (種)  Sinensis(シナンシス/シネンシス)

一般にお茶はCamellia Sinensisと表記されます。これはカメリア属のシナンシス種という意味です。
因みに、Species (種)に相当するシナンシス種はアッサム種やヤブキタ種の「種」とは同じ属性ではありません。
Speciesは直訳すると種であるのに対し、アッサム種やヤブキタ種の「種」は「品種」をさします。ただし、この品種という日本語(中国語)がまたくせものです。学名の場合、品種を指す言葉は2つあります。一つは、Variety、もう一つはCultivarと言う言葉です。

Varietyとは自然に作られた特異的な形質

varietyは人の手が加えられてないにもかかわらず、自然淘汰や突然変異などによって形質が固定され、群れが単一の形質を示す場合に用いられます。
例えば、インドのアッサム地方で発見されたお茶は、そのどれもが熱帯の気候に強く、葉が大きく、ポリフェノール量が多いという特徴を備えていました。特定の一本だけのお茶がこの特徴を有していたのではなく、アッサム地方で発見されたお茶の集団が皆同じような形質を有していたことから、アッサム種の「種は」= varietyと定義されております。
したがって、学名表記をする際にはCamellia sinensis var. assamicaと記載されます。varieryは表記上はvar.と省略して書かれます。var.がついていることで、アッサム種は人の手による選抜種ではなく自然に形成された品種であることをさしております。

アッサム種

アッサム種の茶園

Cultivarとは人の手で作られた選抜種

Varietyに対し、Cultivarですが、これは選抜種を指す言葉です。選抜種とは人の手により特定の形質を保存するために作り上げられたクローンです。

お茶は有性生殖であるため、お茶の花のめしべに、他の品種のお茶の花粉がつくことで自然交配されます。この為、例えば、ヤブキタの種をまいても生えてくるお茶はヤブキタではありません。
同様の事は果物などでも言えることで、例えば、ふじりんごの種をまいてもふりじんごは生えてきません。この為、ヤブキタやふじりんごは種まいて増やすのではなく、枝を切っては挿し木によって増やしてゆきます。このように、クローンによって育成された品種はCultivarと呼ばれ、学名ではcv.と書くか、’Yabukita’のようにシングルコーテーションでくくられます。

ヤブキタを具体的に学名表記すると、以下の様になります。

Camellia sinensis var. sinensis cv. Yabukita
Camellia sinensis var. sinensis ‘Yabukita’

Camellia sinensis var. sinensisとは?

ここである疑問が生じます。ヤブキタの名称にあるCamellia sinensis var. sinensisって何だろうと思われたのではないでしょうか?Sinensisが2回繰り返し用いられております。Camellia sinensis var. sinensis ですが、これはいわゆる中国種を指す言葉です。お茶が世界で最初に見つかったのが中国で有ることから、中国の小葉種のお茶と言う意味でvaerietyと分類されております。ダージリンでも標高の高い地域には、中国種と呼ばれるお茶が植えられておりますが、これらも学名表記するとCamellia sinensis var. sinensisとなります。

ダージリン

学名が曖昧なお茶、クローナル種

紅茶品種など紅茶用にアッサム種から育種したお茶の品種が沢山あります。これらはCamellia sinensis var. assamica cv. xxxxxというような学名になります。つまり、アッサム種系のクローン品種ということです。ダージリンに植えられているクローナルがこれに相当するように思います。クローナルの場合、実生(種から撒くこと)ではなく、挿し木によって増やした「選抜種」という意味ですが、実際にはアッサム種と中国種の交配選抜種が作られ、形質的に優れているものを挿し木によって増やしたものと思われます。実際、中国種とアッサム種を交配させてた場合、どういう名前になるのか想像が付きません。きっとイギリス人も学名をあきらめて、ただ「クローナル」と呼ぶ事にしたのかもしれません。

矛盾だらけの中国小葉種

17-18世紀にイギリス人がお茶の貿易をはじめるようになった頃には、中国では育種の技術が既に開発されていたはずです。イギリス人が小葉種と呼んでいたお茶は、すでに育種によって作られたお茶であり、実際は選抜品種を中心とするcultivarである可能性も大いに考えられます。当時、イギリスと貿易をしていたのは中国の福建省だったことを考慮すると、水仙種を中心とした小葉種の選抜種を中国種(Camellia sinensis var. sinensis)と呼んでいたのかもしれません。実際の所、中国には大葉種、中葉種、小葉種とあることから、中国におけるお茶のvarieryは実際には1つに絞ることが出来ないように思います。今となってはCamellia sinensis var. sinensisという学名は矛盾だらけの名称となっております。

日本茶(緑茶)、中国紅茶、白茶、プーアル熟茶、プーアル生茶、ジャスミン茶、烏龍茶という厳選された茶葉7種のお試しセット

関連記事 RELATED ARTICLES

お茶に関する最新情報を確実にキャッチするには? SOCIAL NETWORK

1,Twitterをフォローする。2,FaceBookで「いいね!」を押す。3,メールマガジンに登録する。という3つの方法で、お茶に関する最新情報をキャッチすることができます。今すぐ下のツイッターフォローボタンや「いいね!」をクリック!

メールマガジン登録で無料サンプルをもらおう!
メールマガジンにご登録いただくと無料のサンプル茶葉のプレゼントや希少商品の先行購入など様々な特典がございます。ソーシャルメディアの購読だけでなく、メールマガジンへのご登録もお忘れなく!

HOJO TEAオンラインショップNEWS一覧を見る

東山生茶・白毫銀針・茉莉銀針の3種類のお茶を発売
東山生茶2023、白毫銀針、茉莉銀針の3種類のお茶を発売しました。 東山生茶2023 https://hojotea.com/item/d63.htm 東山生茶2023を発売しました。東山生茶は当店でも非常に人気の高いお …
大雪山野生茶(生茶)2023年・2024年産 同時発売
大雪山野生生茶の2023年産と2024年産を発売しました。 2023年産については、マレーシアの倉庫で1年間熟成しております。 https://hojotea.com/item/d27.htm   雲南省でも入 …

最新の記事 NEW ARTICLES

東山生茶・白毫銀針・茉莉銀針の3種類のお茶を発売
東山生茶2023、白毫銀針、茉莉銀針の3種類のお茶を発売しました。 東山生茶2023 https://hojotea.com/item/d63.htm 東山生茶2023を発売しました。東山生茶は当店でも非常に人気の高いお …
大雪山野生茶(生茶)2023年・2024年産 同時発売
大雪山野生生茶の2023年産と2024年産を発売しました。 2023年産については、マレーシアの倉庫で1年間熟成しております。 https://hojotea.com/item/d27.htm   雲南省でも入 …
佐渡無名異焼作家の渡辺陶三作:野坂粗土還元急須が入荷
野坂粗土還元焼成の茶器を発売しました。 今回入荷したモデルは、茶壺(後手急須)、フリーカップ、マグカップの3点です。 https://hojotea.com/item/tozo_nosaka_reduction.htm …
佐渡島の渡辺陶三製作:野坂粗土酸化焼成の茶器が入荷
佐渡島の陶芸家、渡辺陶三氏による「野坂粗土酸化焼成」の茶器を発売いたしました。 https://hojotea.com/item/tozo_nosaka.htm   野坂は佐渡島の沢根にある地区名で、相川金山に …
2300mの野放茶園産、高山白茶を発売
高山白茶を発売しました。 このお茶の茶園には、次の2つの特徴があります。 1. 標高2200-2300mに位置する茶園 2. 完全に野生化したお茶の木で構成される野放茶園 非常に理想的な環境ゆえに、お茶の品質も素晴らしく …
標高2100mの無農薬・無肥料茶園産の高山紫茶2024
2024年産の高山紫茶を2種類発売しました。 https://hojotea.com/item/d53.htm 2種類とも、同じ生産者が同じ地域内に保有する茶園の茶葉ですが、茶園の位置が異なり、また、生産日も異なります。 …
大雪山野生茶(普洱生茶)2024の散茶を限定発売
大雪山野生茶は、雲南省臨滄市永徳県の大雪山に自生する野生のカメリアタリエンシスから作られたプーアル生茶です。 野生茶とは 野生茶とは、樹齢が高いお茶や野生化したお茶ではなく、山に自生している天然のお茶を指します。 過去に …
鳳凰単叢烏龍茶の産地、潮州市鳳凰鎮を訪問(2024)
先月、鳳凰単叢烏龍茶の産地である潮州市鳳凰鎮へ、仕入れと生産者との打ち合わせを兼ねて出張しました。ちょうど台風の時期と重なり、山から潮州に戻れなくなるなどのハプニングもありましたが、無事に仕入れを終えました。鳳凰鎮にはこ …
前川淳蔵作の伊賀天然朱泥急須、宝瓶各種入荷
前川淳蔵作の伊賀天然朱泥の茶器が入荷しました。 今回入荷したのは、丸型宝瓶、急須、絞り出し、茶海です。 https://hojotea.com/item/maekawa_iga.htm 数百年前に古琵琶湖の湖底に沈殿した …
佐渡島:渡辺陶三作、無名異上赤茶壺と宝瓶が入荷
渡辺陶三氏作の無名異常赤急須および宝瓶が入荷しました。今回の入荷品は、後手タイプが中心です。 https://hojotea.com/item/tozo_joaka.htm 非常に稀少な上赤 「上赤」は、佐渡島の相川金山 …

PAGETOP