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常滑の赤土は本朱泥と呼ばれ、お茶をまろやかにする
- [2009.12.22] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
愛知県の常滑市は焼き物の街としてよく知られた場所です。常滑を含む愛知県、三重県、岐阜県一帯にはその昔巨大な湖がありました。この湖は東海湖と呼ばれ、現在の琵琶湖よりも大きな湖でした。常滑焼の朱泥はこの湖に堆積した土に由来します。
もともと常滑焼を有名にしたのは、味に関して優れた性能を示す朱泥でした。お茶の味がまろやかになるからこそ、お茶が好きな人の間で常滑の朱泥が広がったと仮定しております。常滑では天然の朱泥のことを「本朱泥」と呼びます。残念ながら現在の常滑には本朱泥を使って急須を作っている作家はほとんどおりません。オレンジや赤色をした急須も製作されておりますが、そのほとんどがブレンドした赤土から作られており、天然土のレベルでのまろやかさが得られません。本朱泥という土は名前だけでなく、性能を伴うことが大切です。これまで、有名作家の作った朱泥急須も含め、いろんな種類の常滑朱泥急須を試しましたが、やはり天然土のレベルのまろやかさは得られませんでした。
常滑の朱泥焼は杉江寿門という人により始められました。そもそも常滑の朱泥焼は、国産の土で宜興のような良い茶壺を作りたいという願いから開発されました。このため、杉江寿門氏の作った急須の多くが宜興の茶壺を模倣することで作られており、当然、杉江寿門氏自身が宜興の茶壺の良さを理解されていたはずです。つまり、当時の常滑では当然天然の朱泥を使って朱泥急須が焼かれており、その質はとても良かったと推察されます。
実は、先日出会ったある急須に「本朱泥」と説明が書かれておりました。その急須は本朱泥と言う名が付いており、色は赤と言うより淡いオレンジ色をしておりました。更に、焼き具合を見ると、通常よりも低めの温度で焼かれており、多少柔らかい印象を持ちました。
その作家さんは、普通の朱泥急須も作られているため、もしかして本朱泥は天然朱泥かもしれないと期待しました。
その作家さんは「義翠」さんという名です。実は先日、義翠氏を訪ね、本朱泥についていろいろ教えていただきました。義翠氏は文字通り本朱泥を100%使って急須を作っておりました。知り合いが昔から保管していた常滑天然朱泥を義翠氏がゆずりうけ、彼もまたずっと保管していたそうです。
早速急須を仕入れ、性能を評価してみたところ、佐渡の無名異焼と同じく、お茶がまろやかになりました。まろやかさのレベルとしては宜興の朱泥には及びませんが、雑味もなく、普段使いをするにはとても良い土だと思います。
今後、より多くの作家さんに素材の大切さを伝え、再び、常滑の優れた土が見直されたら素晴らしいことだと思います。
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