今では入手が非常に困難な常滑の天然朱泥茶器

[2012.08.12] Written By

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今では貴重となった常滑の本朱泥

これまで味を追求した茶器として清水謙氏と渡辺陶三氏による野坂シリーズを販売してきました。
私はこれらの性能には正直大変満足しております。ただ同時に、興味から常滑の土も取り扱いたいと思っておりました。
常滑の土で私が注目していたのは、本朱泥と言われる常滑の田土です。しかし常滑の場合、開発が進み、今では田んぼから採れる本朱泥はブレンドなしの状態では極めて入手困難な土となっております。

本朱泥を評価

また、同じ常滑本朱泥でも、採取する場所によってミネラル組成が異なるため、性能には雲泥の差があります。
実は昨年、作家の前川淳蔵氏と共に他県の土の調査を行っていたところ、思いがけず常滑の土に出会いました。
昔常滑で採取された土が、50年に渡り保存されていたのです。早速、性能をテストしたところ非常に強い喉越しが確認出来ました。
一般に新し産地で味を良くする土を探索・開発するときは、共に仕事をする作家さんに焼いたサンプルピースを作って貰い、それに基づいて味の評価を行います。
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私は以下の手順で評価を進めます。
土の種類決め→土の粒子径と味の関係の評価→焼成温度と味の関係→還元による評価
今回、入手した土は、酸化焼成の作品については、僅かですが舌にざらつきが感じられました。
このざらつきは鉄以外の特定のミネラルの存在により生じます。
渋味が余りに強い場合は、その時点で土をあきらめるのですが、比較的弱めのざらつきだったため、還元処理をする事でざらつきが軽減されると思いました。
一般に、酸化焼成の方がざらつきが生じやすく、同じ土でも還元することでざらつき感は収まります。
案の定、還元焼成の茶器はざらつきをおさえることが出来ました。
野坂シリーズと比べる喉越しは僅かに弱いように感じますが、それでも論理的科学的アプローチで見つけ出した土だけのことはあり、相当に高い性能です。お茶がとろりと円やかになります。
この茶器は少し低めの値段帯で販売できそうなので、値段と性能のバランスが非常に良くお薦めです。

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