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  • お茶の品質を決める各種要素

お茶の価格は何が影響するのか、理解していただくために、一般的な価格決定要素を紹介したいと思います。本来、値段が上がるにつれて、感動のレベルも上がるのが理想なのですが、感動のレベルとは別の要素がお茶の値段を左右することもあります。

樹齢

日本、台湾、インドでは、ガーデン形式にお茶の木が仕立てられているため、お茶の木の樹齢は値段とは全く関係しません。それに対して、雲南省のお茶、鳳凰単叢、武夷岩茶等の場合、お茶の木の樹齢は重要な価格決定要素になります。樹齢が上がるほど、お茶が高価になる傾向があります。樹齢の高いお茶の木は成長が遅くなるため、時間をかけて成長したお茶は茶葉を構成する細胞が小さくなり、ポリフェノールやミネラルが濃厚になり、その結果、香りが濃く、体に染み渡るような長い余韻が感じられるお茶になります。

樹齢数百歳のお茶の老木

 

ただし、高樹齢の茶樹でも肥料を大量に与えた農法では、茶葉が著しく早く成長するため、樹齢が高くても品質に反映しません。そのため、樹齢だけでなく栽培方法も考慮することが重要です。高樹齢であっても品質伴わないお茶に高い対価を支払う意味はありません。老木産のお茶は高値で売れるために、より生産量を増やそうと、肥料を与える農家が多数存在します。

中国の場合、特に樹齢の高い木は他のお茶と混ぜるのではなく、1本だけの木を分けて製茶されることがあります。このようなお茶は「単株茶」と呼ばれ、非常に高値で取引されます。単株茶は値段は高いですが、肥料を使わない自然栽培の場合、値段以上の感動が得られることもあります。

標高:台湾茶、ダージリン、雲南省のお茶、正山小種、鳳凰単叢、安渓烏龍など、かなり広範囲のお茶に関して、標高は重要な価格要素です。標高が上がるほど、香りは濃くなり、余韻も増します。但し、樹齢と同じく、肥料を大量に与えた農法では、標高と品質の相関が崩れるため、無肥料・低肥料あっての標高です。

産地の知名度

有名な産地は知名度が高く、結果、多くの人がそれを求めると、需要の高まりから価格も上昇します。通常、有名な産地が注目される要因は、生産される茶葉の質が良いからという理由は希で、多くの場合、口に含んだ際の味と香りの広がり、つまりフルボディの個性がゆえに産地が有名になる傾向が強いと感じております。この傾向は、ワインの産地でも同様に見られます。ボディを高める要因としては、土壌中のアルカリ金属やケイ素などの成分が関連しており、たとえば、ボルドーやブルゴーニュなどの有名なワイン産地では、石灰岩がワインに豊かなフルボディをもたらしております。お茶においても、凍頂山、君山島、老班章、昔帰、馬鞍山、武夷山などの有名な産地は、どれもがフルボディの個性を持っています。

武夷山の茶園:巨大な岩は元々海底だったため、ボディに寄与するアルカリ金属を豊富に含んでおります。

有名産地を選ぶマイナス面としては、知名度が増すにつれてお茶の価格が上昇し、それに伴い、農家ではさらに儲けようと行動する傾向があります。結果、大量の肥料が使われることが高い頻度で発生します。このため、全てではありませんが、有名産地のお茶はボディは強くても、余韻のない薄っぺらい味香りになってしまうことが多く、一概に有名産地だからと言って油断は出来ません。有名産地のお茶は品質面では意外にハイリスクであることが多いのです。

希少性

産地や単株茶といくらか重なる部分がありますが、生産量が限られているお茶は、需給の関係から高値がつくことがあります。例えば、東方美人はその一例です。このお茶は強いマスカットの香りがあり、中国語では蜜香と呼ばれます。東方美人は春から秋まで作られていますが、マスカットの香りを引き出すには茶葉がウンカに沢山噛まれていることが必須です。東方美人の名が付いていても、実際に強いマスカットの香りがするものは希少であり、ゆえにマスカットの香りがするお茶は高値で取引される要因となっています。


東方美人茶の写真(上)と茶葉にとまったウンカ(下)

同様に、プーアル茶や黒茶など、保存して熟成する事が一般的なお茶の場合、昔に作られたお茶に希少性から高値がつくことも一般的です。

品種の希少性も値段に反映することがあります。例えば、鉄観音のような人気の品種は他の安渓品種よりも高値が付きます。鉄観音の場合、同じ条件で作られると、より長い余韻を呈するお茶であり、また、蘭の花のような華やかな香りがすることが人気の理由です。

希少性に関しては、必ずしも価格と感動のレベルが一致するとは限らないため、注意が必要です。

お茶摘みのタイミング

産地によってはお茶は年間を通じて摘まれますが、緑茶や烏龍茶に関しては春の一番茶が最も高い値段で取引されます。夏場のお茶は、一般に渋味が強く、香りが弱いため、安価な値段が付きます。ただし、これはガーデン形式のお茶に限った話で、雲南省のように、1本1本独立した喬木の場合、夏茶や秋茶は、芽の数が少なく、茶摘み効率が悪いために、春茶と同じ値段で取引されることが一般的です。

同じ一番茶でも、最初に発芽するのは頂芽であり、その後、側芽が発芽します。一般的に、頂芽は側芽よりも味が良いため、中国緑茶などでは頂芽を中心とする一番最初の一番茶はより高い値段がつく傾向があります。ただし、頂芽と側芽の違いによる値段の差は、品質の違いを顕著に反映しているため、一番最初に摘まれたお茶に高い金額を支払うのは理に適っております。

また、ダージリンの場合、夏茶(日本で言う番茶)であるセカンドフラッシュが非常に高い価格で売られる傾向があります。 台湾の東方美人のように、ウンカがしっかりと噛んだお茶は、マスカテルフレーバーを形成するために、高い需要があるのは分かります。ただ、マスカットフレーバーがない場合、セカンドフラッシュはただ渋いだけで、お世辞にも美味しくありません。マスカテルフレーバーが確実にすると分かっていれば良いですが、そうでない場合、ダージリンセカンドフラッシュに高値を支払うのは、お茶の価値に見合って無いように思います。

 

お茶摘みコスト

お茶の価格が上昇する背後にあるお茶摘みコストについて、一般的にはあまり知られていないかもしれません。しかし、同じ産地内であれば、お茶の価格はお茶摘みコストによって大きく影響されます。

お茶摘みコストとは、「茶摘み作業者の日当」と「1日に摘めるお茶の重量」の比で決まります。つまり、一定重量のお茶を摘むのに要するコストです。

例えば、白茶のシルバーニードルや紅茶の金芽、正山小種の金駿眉のように、単芽(単芽とは1本の芽だけのお茶です。)だけにより構成されるお茶は非常に高い値段が付きます。これら単芽茶の場合、小さな芽を摘むため、作業効率が非常に悪く、熟練者でも1日に摘める重量は400g程度です。お茶には沢山の水分が含まれているため、400gのお茶を製茶すると100gになってしまいます。従って、仮に日当が1日3000円だった場合、100gのお茶を入手するには、茶摘みコストが3000円かかる計算になります。(100g/3000円)これに、原料茶葉コスト、加工費、流通コスト、包装資材コスト、経費、利益が乗るわけなので、末端価格としては相当に高いお茶になります。シルバーニードルや金芽は、値段が高いので、超高品質のお茶と考える人がいますが、これはお茶の品質とは関係の無い、お茶摘効率が価格に関係しております。

逆に、プーアル茶のように1芽3葉で摘まれるお茶の場合、仮に同じ3000円の日当で、1日に10kg近く摘めます。(10kg/3000円)計算すると、100g当たりのお茶摘みコストは120円と言うことになります。前述した単芽茶とは茶摘みコストが大きく違います。

お茶摘みコストには大きな差が生じますが、品質はどうでしょう?
芽だけから構成されるお茶は、アミノ酸含有量が高いため、口に含んだときにクリーミーな口当たりがします。但し、香りは全体に弱く、また、余韻やボディについても弱めです。香りと余韻を楽しむという点では1芽2葉、1芽3葉の方が適しております。どちらのお茶が良いかは好みの問題であり、お茶摘みコストの値段は品質には反映しません。

気をつけるべきは、単芽茶の場合、品質の良し悪しに関係無く、お茶摘みコストが高い点です。質が悪いお茶でも、お茶摘みコストが高ければ、必然的に販売価格は非常に高くなります。

 

これまでの説明から分かるように、お茶の価格が品質を必ずしも反映しているわけではありません。高価なお茶にはどのような要因が影響しているのか、その理由を考えることも、お茶を深く理解する上で重要です。価格だけでなく、製造過程や産地、栽培方法なども考慮することで、お茶選びがより楽しく、賢いものになるでしょう。

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