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萬古焼きの伝統工芸士「舘 正規」氏を訪問
- [2007.04.07] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
万古焼き(萬古焼き)で次に訪ねたのは伝統工芸士の「舘 正規氏」です。
この方は、主に萬古焼きの急須を専門に手がける芸術家です。以前ブログで萬古焼きに興味があると説明したのですが、それをみたお客さんの一人が、萬古焼きと言えば舘正規氏の作品が素晴らしいと、紹介してくださったのです。
その後、自分でも調べた結果、舘正規氏は萬古焼きでは1,2を争う凄腕の伝統工芸士と分かりました。21歳の時、当時は未だ大勢いた年輩の伝統工芸士を抑え、いきなり通産大臣賞を取得、地元で天才と言われた人物です。
是非、本人に会い、彼の考え方、作品に対する思いを直接聞きたいと思い、連絡先を調べ、直接面談をお願いしました。電話をしたところ、意外にも私の訪問を快諾してくださり、今回ご本人と会うことが実現したのでした。
工房は四日市の万古という場所に位置している舘さんの自宅に併設されておりました。工房の脇には簡単な作品の陳列棚があり、そこで様々な話しを交わしました。
舘 正規氏の凄いところは、一代にして著名な伝統工芸士となったことです。概して世襲制の感が強い伝統工芸の世界なだけに意外でした。彼が若い頃に師事していた名人は、芸術家上がりではなく、職人上がりの人で、轆轤(ロクロ)ひきから始まり、全てにおいて基礎的な技術を重要視する人だったそうです。その為、舘正規氏の轆轤(ロクロ)ひきの凄さ・・・それは一般の人の3倍くらいの速度で作品を仕上げてしまい、しかも丁寧なのです。
正規氏が言われるには、四日市の陶芸家の中で、職人の技を習得しているのは彼が最後の世代だそうです。それ以降の若い陶芸界の場合、「芸術面」から入るのが一般的で、ゆえに速度が遅く、結果的に値段も高くなります。
陶芸家の先生というと、一人で作品を仕上げているイメージがあります。しかし、実際は奥さんとの二人三脚で仕事が進められます。奥さんの担当は、最後の仕上げ。舘正規氏のところでも、美しい奥様が常に舘氏の傍らにおり、私との面談にも最初から最後までお付き合い頂きました。
舘正規氏は、「使ってもらえる急須を作りたい」、「お茶が美味しく飲める急須が作りたい」と繰り返し説明してくださりました。値段が高くなりすぎると、皆、使うことを恐れ、飾ってしまいます。その為、値段は4000~9000円台が中心で、最も高い物でも2万円を超えることはありません。これだけ有名な陶芸家が作っているにもかかわらず、とても良心的な値段帯だと思いました。
萬古焼きの急須はあまり色つけをせず、素材そのものの良さを楽しみます。急須は紫~茶色の独特の色合いを放っており、見る角度や温度によっても色合いが微妙に変わります。更に、使い込むことで趣が一段と増し、愛着がわきます。独特の雰囲気を持つ急須ですが、意外に日本の家屋に合う色をしており、特に現代風の建築には良く合うそうです。また、萬古焼きの急須で淹れたお茶はとても美味しいと言われており、私自身、愛用の急須は他でもない萬古焼きです。
全ての作品は勿論100%手作りです。一つ一つを轆轤(ロクロ)でひき、作品に仕上げていきます。その為、私の要望をお伝えし、私の求める形状の急須を作って頂くことも可能です。私は舘正規氏にお願いし、手のひらサイズの小さな急須を製作していただく予定です。高いお茶を飲む際、あまり急須が大きいと茶葉を沢山使わねばならなくなります。その為、手のひらサイズの1人用急須はお手軽で個人的にも大好きです。なお、全てオーダーメイドであるため、注文から製作まで1ヶ月近くを要します。
これは手のひらどころか、指サイズのミニ急須です。正規氏曰く、「小さい急須は幾らでもあるが、私の急須は本当に使える急須だ」。正規氏ご本人が実際にお茶を淹れ、急須の機能が満足行くレベルであることを確認されたそうです。彼の作品は機能重視で作られているのです。因みに、小さいから安いわけではなく、小さくても値段は同じです。
私のサイトでは、今年から茶器の販売も手がける予定ですが、日本の急須に関しては舘正規氏の作品、その中でも特注により作って頂いた手のひらサイズの急須を紹介していく予定です。販売時期はおそらく夏頃になりそうです。
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