佐渡の朱泥で宜興の朱泥と同等の性能の茶器をプロデュース

[2011.10.26] Written By
sado new clay
渡辺陶三氏の作品

私はこれまで日本の土で、中国宜興並みの優れた性能の急須を作れないか様々な試行錯誤を繰り返してきました。

 

優れた急須に求められるもう一つの機能

急須には2つの役割があります。1つめは言わずとしれた、お茶を淹れる役割です。
2つめですが、土と触れることでお茶が美味しくなります。美味しくなるとは、喉越しが増し、コクのある余韻の強いお茶になることを指します。但し、この様な土は非常に限られております。その理由として:

  1. 日本の場合、轆轤を使用することから、轆轤でひきやすいように土が予めブレンドする習慣がある。各土に含まれるミネラル間で性能が相殺されている。
  2. 焼成温度が高すぎるために、土の粒子が溶けてしまい、多孔性が失われる。
  3. 作家は急須を作る専門家だが、お茶の味を評価する専門家ではないため、昔から使われている土を使い続けており、味に着目した土選びをしていない。
  4. 鉄分以外に、マグネシウムや亜鉛などが含まれると、味を悪くする場合がある。
  5. 最近では土作りをせず、土業者がブレンドした土を購入し、利用する作家が多い。

伝統的に2種類の土をブレンドして作られる無用異焼

私は数年前より佐渡の焼き物を日本及び世界に紹介してきました。佐渡には、(旧)相川町にある相川金山周辺から採取される赤土を使い、無名異焼という焼き物を作っております。無名異焼には、赤い土と黄色い土が混ぜて使用されます。赤土は粘土が低く、サラサラしているために、粘性を出すために野坂という黄土を加えることで轆轤での成形を可能にしております。

 

宜興の朱泥とは色が異なる佐渡の無名異土

2種類の土がブレンドされて作られる無名異焼ですすが、地元では赤土が重要視されており、急須作家も良質な赤土を入手するために大変な苦労をされております。しかし、、宜興における朱泥は、もともと黄色の土です。黄土色をした原土を焼くことで、朱色になります。朱色というのは、習字で修正したりするのに用いるオレンジ色かかった艶のある赤色です。朱泥の場合、鉄分の純度が非常に高く、亜鉛、マンガン、マグネシウム、銅などのミネラルが非常に低い土と言われております。

 

灯台下暗し!実は優れた性能の野坂土

じゅうらい野坂土は粘性を高めるだけに用いられており、不思議にも野坂100%の茶器は作られておりませんでした。そこで、2種類の土、赤土、野坂の原土を焼成し、それぞれの土がお茶へどう影響するか確認しました。作家さんに野坂土100%でテストピースを作ってもらい、味の評価をしました。

評価して吃驚!何と、野坂土の方がお茶の味を遙かにまろやかにすることが分かりました。

 

野坂土100%を使い急須を試作

上記結果に基づき、清水謙氏と渡辺陶三氏に野坂土100%による茶器の製作を依頼し、最近になり遂に作品が完成しました。両作家共に野坂土を使っておりますが、同じ佐渡島内でも土を取得する場所がそれぞれ異なるため、性質が多少異なります。

両氏の作品共に、これまで私が体験したことのある日本の急須とは性能のレベルが違います。正直、信じられない位に味が変わります。
私は文化大革命前に制作された宜興製の朱泥茶壺を所有しており、この性能を宜興最高レベルと定義して、これまで日本製の茶器づくりを行う際の目標にしておりました。今回制作した茶器はその性能を遙かに上回る物でした。

これら茶器の販売は年末から開始し、制作状況に基づき徐々に展示品を増やしていく予定です。
来月には佐渡に出張するため、更に詳しい情報をお伝えできると思います。

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