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チャイナドリーム!プーアル茶で甘い夢を見る人々
- [2013.03.02] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
台湾、香港、東南アジアでは投機対象としてプーアル茶に沢山のお金をつぎ込む人がおります。プーアル茶投資がどのような仕組みで行われているのかその実態を説明したいと思います。
アジアでは良くあるプーアル茶投資話
日本ではあまり馴染みのない話ですが、東南アジアには投資と称してプーアル茶を買う人が大勢おります。彼らがプーアル茶を買うのはお金を儲けるためで、飲むためではありません。実は本当にお金を儲けているのは、プーアル茶を買い込んでいる投資家ではなく、この手法を運営するお茶屋です。
投機対象のプーアル茶は飛び抜けて低品質のお茶
投機対象のプーアル茶は私が取り扱っているような高品質のお茶ではありません。一般的に以下の3条件に合致するようなタイプのお茶が仕入れの対象となります。
- 茶園産の茶葉
- 大きな工場製
- 夏摘み茶
以上の3条件を満たすお茶は、業界では最低の品質で、当然、値段は非常に安く仕入れられます。357gの餅茶で200-500円くらいで売られるのが相場です。
「数年置いておけば必ず値上がりします」と言ううたい文句と現実
「今は新茶だからこのお茶は300円ですが、あと5年も保管しておけば3倍の値段になりますよ!」
「東南アジアは常夏だから、熟成が速く進み、中国のお茶会社がマレーシアでお茶を買いあさっているんですよ」
という話は良く聞きます。
ちなみに、お茶屋では5年前に仕入れたお茶は、5年後には言ったとおりの値段で売っております。
その販売価格を見ては、お客さんは、「5年前に買っておいて良かった、ホッ!」と思うわけです。
彼らの論理によると、保管期間が長いほど価値が上がり、値段も上がります。
値上がりしたお茶は誰が買い取ってくれるのでしょう?
「5年保管したお茶が3倍になったのは良いけど、誰が買い戻してくれるんだろう?」という疑問が生じます。
お茶屋は、「勿論、うちが責任もって買い取ります!全く心配はいりません」とお客さんに買取を保証しております。お客さんの多くは「本当に買い取ってくれるのかなあ?」と疑心暗鬼になりつつお茶を保管しますが、そのうちの何人かは本当に買取が成立するかどうか試そうとします。
値上がりしたお茶を買い取ることで、お客さんの信用を得る
「5年前におたくから買ったお茶ですが、3倍の値段で買い取ってくれますか?」とお茶屋に買取を迫るお客さんもおります。
その際、お茶屋はどう対応すると思いますか?
買い取ると思いますか、それとも、理由を付けて逃げると思いますか?
答えは、「買い取ります。」
お茶屋は買い取ります。
ただし、買い取ったという事実をその他多くの人に話し伝えます。
当然、お茶を売ることに成功したお客さんは、大喜びです。
元手が3倍になったのです。自分がお金を儲けたことを、多くの友人に話し、また、その人はお茶屋を100%信用し、お茶屋に入り浸り、また、お茶屋に来る人に口々に自分がお金を儲けたこと、このお茶屋が正直な点を話します。
こうして、信用を得たお茶屋は、数十キロ、数百キロ、数トン単位でプーアル茶をお客さんに売るようになります。
買い取ったお茶は別のお客さんに売りさばく
お茶屋としては、妙に高いお茶を買い取ってしまったものの、また他のお客さんにその値段で売り渡せば元では回収できます。
「既に5年経っているお茶ゆえに、希少価値が手伝って更に加速的に上昇しますよ」と言えば、多くの人が興味を示します。正に、不動産・株式市場と同じです。
お茶ではなく、夢に投資をし続ける中華系のビジネスマン
私の知っている人はプーアル茶をコンテナ単位で買っております。
彼は、お茶をテイスティングしません。お茶屋さんが「このお茶は将来値段が上がる」と言えば、それを信用して購入を決断します。
私が知っている人は、アパートを何カ所も借り、そこに大量のプーアル茶を集積しております。
たぶん私の何倍もの量のお茶を在庫しております。ちなみに彼はお茶屋さんではありません。自称「投資家」です。
東南アジアに保管されている多くのお茶はカビに汚染されている
私の知り合いが保管しているというプーアル茶を見せて貰ったところ、表面がカビでびっしりと覆われておりました。「こんな状態のプーアル茶は飲めませんよ!」と言ったところ、大変驚き、その場でお茶屋に電話をかけ相談しておりました。すると、お茶屋は「心配しなくても良いですよ。もしカビが心配なら現在の相場で全部買い取ってあげますよ」と言ったそうです。その瞬間、投資家のおやじは歓喜し、更に、数百キロ買い足しておりました、、、
東南アジアで熟成したお茶を中国人が買いに来るというのは迷信
アジアで伝説のように語られている、中国のお茶会社がマレーシアのお茶を大量に買いあさっているというのはただの作り話です。雲南省の乾燥した気候の方が余程お茶の保存には適しております。中国の会社がお茶を買い戻しているというのは、昔、マレーシアに残っていた骨董価値のあるお茶を個人的に買った人がいたという程度の話です。高湿度のマレーシアではお茶は熟成どころか劣化し、終いにはカビだらけになります。
東南アジアにはプーアル茶を投機対象としているお茶屋が多く存在
プーアル茶の投機の仕組みはお茶屋が作りだしたもので、その仕組みはアジアの社会で実に上手く機能しており、ある意味立派な商売です。全容が見えたとき、仕組みの巧みさにとても感心してしまいます。全てのお客さんが売りに走ったら、お茶屋は一瞬で倒産します。でも、常に値段が上がっていることを仄めかすことで、買い行動を誘導していることで、常に買いたいというお客さんがおり、それで商売が成り立っております。プーアル茶に投資する人達にとって、プーアル茶は飲むためではありません。お金が儲かるという夢が見られたらその対象がプーアル茶でも、急須でも、絵画でも何でも良いのです。
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