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プーアル茶とは?Wikipediaより詳しい!プーアル茶の完全ガイド
- [2017.03.27] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
プーアル茶とは?
どのような種類があり、何を持って良い品質とするでしょう?
また、どのような飲み方が最適なのでしょうか?
私は雲南省を毎年訪れ高山の少数民族の村に約1〜2ヶ月滞在してお茶の仕入れを行っております。以下、現地で学んで見識を紹介しつつ、プーアル茶に関する疑問に答えていきたいと思います。
先ず、プーアル茶とは雲南省の南部にある西双版納州と普洱市、臨滄市、保山市、大理市と呼ばれる地域で大昔から作られておりました。プーアル茶を理解するには雲南省とその周辺の地域の歴史を簡単に理解する必要があります。
プーアル茶の歴史
中国南部に位置する雲南省は、昔から中国だったわけではありません。実際に中国の一部となったのは明の時代であり、それまではモンゴル民族やタイ系の民族を含む様々な民族により複数の小国が作られ統治されておりました。この為、現在における国境線は当時の国境線とは異なりました。当然、プーアル茶は実際には雲南省だけでなく、その周辺諸国でもその昔から生産されており、それは現在に至っても同様です。実際に、ベトナム、ミャンマー、ラオスでも、樹齢が数百年を超えるようなお茶の木があり、プーアル茶が生産されているのも事実です。私たちも、ラオスやミャンマーの産地を訪問したことがあります。
実際にプーアル茶が作られるようになったのはごく最近
ただし、実際にプーアル茶(プーアル生茶)が作られるようになったのは700-800年前と言われております。それ以前はと言うと、プーアル茶ではなく、その時代ごとに異なる形式のお茶でした。例えば2000年前はというと、お茶をただ乾燥した、ちょうど漢方薬のような形態の茶葉が交易に用いられておりました。
プーアル茶は少数民族が好んで飲むお茶
700-800年前にプーアル茶が作られるようになってからも、プーアル茶は歴史的に中国本土の漢民族が飲むお茶では無く、少数民族が自分たちで飲むか、チベット、ミャンマー、モンゴル、東南アジアへと輸出され、馬や他の食料と交換するための交易品としての役割を果たしておりました。
雲南省のお茶は茶馬古道を通じて周辺諸国へ輸出され、馬と交換された
西双版納はベトナムやラオスと国境を隔てており、雲南省の最南端に位置する州です。ここで生産されたお茶の多くは北上し、プーアル(普洱)という町に集積されました。この交易に用いられたルートは「茶馬古道」と呼ばれ、現在では第2のシルクロードとも呼ばれております。
このことから、雲南省で生産されるお茶がプーアル茶(普洱茶)と呼ばれるようになりました。プーアル茶は広東語ではポーレイ茶とも呼ばれます。プーアル茶とポーレイ茶は同じ種類のお茶を指します。
良質なプーアル茶=四双版納と思っている人がおりますが、歴史的にも、原料を全て四双版納内で確保していたわけではなく、実際は臨滄を初めとする他地域の原料を集めては商品を作っておりました。臨滄地区は標高が非常に高いため、無名地域でも非常に良質の茶葉があります。そういう意味で、地域で品質を定義するのは、適切ではありません。
茶馬古道の起点となった易武の村 | 茶馬古道にて会話を楽しんでいる少数民族。 |
近年になり急速に高まったプーアル茶ブーム
プーアル茶は、かつて辺境の地の少数民族が飲むエスニカルなお茶という評価が一般的でした。また、中国の歴代皇帝もプーアル茶を飲んでいませんでした。1900年代には、香港や広東省でプーアル茶は流通していましたが、安くて美味しいお茶という位置づけでした。しかし、特に2000年以降、広東省、香港、台湾のマニアを中心にプーアル茶ブームが急速に広まりました。中国の驚異的な経済成長と相まって、プーアル茶の価格は高騰しましたが、同時に値段の高騰によって大量生産方式が導入され、品質低下が顕著な地域も増加しました。
2種類の異なるプーアル茶、生茶と熟茶
プーアル茶は全く異なる2種類のお茶から構成されております。それらは「生茶」と「熟茶」と呼ばれます。長い歴史を有し、何百年も昔から作り続けられているお茶は生茶です。また、コレクターや投資家が血眼になって集めているお茶も生茶です。以下の図はプーアル生茶とプーアル熟茶の製法の違いを示したものです。
プーアル生茶
茶摘みの規準
生茶は基本的に緑茶と同じ流れで作られますが、殺青条件とその後の乾燥方法が緑茶のそれとは異なります。茶葉は緑茶のように芽や1芯2葉だけではなく、1芽に対し、2~4枚の葉を付けて摘み取ります。葉は長い間、木についていた事から、ミネラルやポリフェノールが豊富に含まれており、良い香りと後味を出すためにも欠くことが出来ません。逆に芽の部分ばかりから作られたプーアル茶は、芽に含まれるアミノ酸が多すぎることからメーラード反応が促進し、長期熟成をした際に良い香りが出ません。
萎凋
通常、6〜12時間の萎凋が行われます。萎凋とは茶葉を徐々に萎れさせることで、酸化酵素を活性化し、発酵を促すことで花のような香りを形成する工程です。プーアル茶の萎凋は静置萎凋が一般的です。萎凋を長く行うことで、より香り豊かなお茶になりますが、長時間の萎凋は茶葉の水分値を下げるために、殺青時に焦げるリスクが高まるため、その日の温度や湿度、茶葉の水分に応じて萎凋時間や、茶葉の厚さを調節します。
殺青
収穫された茶葉は、薪火により釜で炒られます。これを殺青工程と呼びます。釜炒りですが、実際にはフライパンからの直熱で殺青を行っているわけではありません。釜炒りを行うと茶葉の温度が上がり、水蒸気が発生します。その水蒸気で茶葉を殺青します。鉄板からの熱で直接殺青する緑茶とは工程自体は似ている物の、原理が異なります。
プーアル茶の殺青は、緑茶よりも低い温度で行われます。基本的に前半は高温を維持し、後半で温度を下げます。これは、米を炊く原理と同様で、前半に水蒸気を引き出し、その蒸気が茶葉に充満することで殺青が進みます。したがって、後半では温度を下げ、焦げ付き防止と同時に蒸らすことが重要です。この方法は、緑茶のように急激な温度上昇を伴わないため、殺青中に茶葉の茎に含まれる酸化酵素の発酵を促す効果があります。
なお、殺青に使用されるフライパンの厚みやサイズは、お茶の品質に大きな影響を与えます。下の写真にあるようなフライパンは少数民族に一般的に使われるタイプですが、厚みがないため温度分布が不均一となり、その結果、茶葉が焦げやすくなります。また、サイズが小さいと一度に処理できる茶葉の量が少なくなり、茶葉内部に十分な水蒸気を保つことができません。小さなフライパンで殺青を行うと水蒸気がどんどん抜けていき、殺青が完了する前に茶葉が乾燥してしまいます。この問題を防ぐため、農民はより高い温度を加えようとしますが、その結果、茶葉が焦げやすくなります。より高い品質の加工を行うためには、厚みがあり、サイズの大きなフライパンが必要です。しかし、山奥にある少数民族の村では良質なフライパンが普及しておらず、そのような場所に限って良質なお茶が作られているため、茶葉を仕入れる側としては悩ましい問題です。
天日乾燥することで更なる発酵を
プーアル生茶は太陽光で乾燥されます。太陽の場合、温度が急激に上昇しないため、茶葉内に多少残っている酵素は徐々に発酵をします。但し、殺青をしっかり行っているプーアル茶は天日乾燥中の発酵が起こりません。プーアル茶の香りは天気に強く依存します。天気が悪い日に乾燥されたプーアル茶は、生乾きの洗濯物のような、不快臭がします。良いプーアル茶を作る為には天気は非常に重要な要素です。
熟成により、緑茶、白茶、烏龍茶、紅茶と香りが変化する
プーアル生茶の新鮮な茶葉は黄緑色をしております。但し、保存期間が長くなるにつれて、茶葉の色は徐々に褐変し、茶色へと変わっていきます。実際には5〜10年程で黄色系の色へと変わります。生茶の味は新鮮な内は緑茶や白茶に近く、熟成と共に花の香り、更に熟成すると、フルーツの香り、そして、最終的には乾燥フルーツの香りへと変化します。年々異なる味が楽しめることはプーアル茶を飲むことの楽しみの一つであり、保存の仕方によっても品質は変わります。(保存法については後で詳しく説明します。)
プーアル生茶の茶葉
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プーアル生茶の茶殻。
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プーアル熟茶
歴史が非常に浅いプーアル熟茶
700-800年の長い歴史を持つプーアル生茶に対し、プーアル熟茶は1970年代に開発されました。茯磚茶などの黒茶の製法を参考にして開発されたと言われております。プーアル熟茶は、生の茶葉から作られるのではなく、プーアル生茶を原料として使用します。茶葉は堆積され、水分を与えることで、放線菌を初めとする好気生菌、嫌気性菌、カビや酵母などの真菌による発酵で急速に熟成されます。これにより、短期間の間にお茶はまるで20年位寝かせた生茶のように完全発酵をします。
茶葉は黒~茶色へと変色し、お茶は深い茶色~赤の色を呈し、マイルドな口当たりが特徴のお茶です。
日本に流通しているプーアル茶の多くがプーアル熟茶
日本で主に流通しているプーアル茶は、その多くが熟茶です。市場ではプーアル熟茶の方が概して安価な値段が付くため、高級な原料になるほど生茶の生産に用いられます。ただ、中にはこだわりの高品質の原料で熟茶を生産している会社もあります。
春茶が極めて希なプーアル熟茶
プーアル熟茶の場合、その多くが、海外や中国北部の市場を対象としているため、春、夏、秋のお茶から作られた熟茶は最終的にミックスが行われ、品質と値段を平準化してから販売されることが一般的です。もちろん、突出して品質が良いお茶は春茶です。私たちは春茶の熟茶のみを確保するために、生産者と直接取引をしており、予約生産を行って貰っております。
プーアル茶の品質はどう決まるのでしょう?
プーアル茶に限らず、お茶の品質は、余韻の長さと口当たりのやさしさ、味香りの透明感などできまります。
余韻とは?
日本語における余韻という言葉は、理解しにくいですが、言い換えるならばコク、まろやかさ、やわらかさ、喉越し、後味、と言う言葉が適切かと思われます。お茶を飲んだ際に、低品質のお茶は香りが強く、それでいて後に残りません。良いお茶は、喉の奥までグッと入り、香りも甘みも長く持続します。この感覚を中国語では「回甘」Hui Ganという言葉で表します。
尚、お茶だけに限らず、美味しい食品、果物、野菜、ワイン、酒、そしてジュースの味を余韻というモノサシで説明することが出来ます。美味しいリンゴジュースと、あまり美味しくないリンゴジュースを比較してみてください。何が違うのでしょう?
甘さでしょうか?
美味しくないリンゴジュースに砂糖を加えたら、美味しくなるのでしょうか?
実は、全ての食品に共通していえるのが、美味しい食品には長い余韻が感じられます。つまり味の奥行き(立体感)を演出します。ミネラルを豊富に含み、長い余韻を呈する食品の場合、味が濃く感じられます。
お茶の品質は基本余韻の長さできまり、値段はそれらの強さに比例して高くなります。つまり、正確に余韻が何か分かっていない場合、品質と値段の関係がよく分かりません。
良い品質のプーアル茶を仕入れるための条件
プーアル茶を選ぶ際、どのような要素が長い余韻を生み出すのか理解することが重要です。余韻を高めるためには、成長速度の遅いお茶、つまり、ゆっくりと時間をかけて育ったお茶を見つけることが必須条件です。私たちにとって重要なのは、どのような条件がお茶の成長速度に関係するのか、その答えを知っていることです。お茶の産地は何千とあるため、ただ闇雲に試飲をしていても良いお茶には出会えません。ある程度、目星を付け、求める茶葉原料を作り出す環境を絞り込まねばなりません。
私たちは、長期間産地に滞在した経験から、以下の要素が余韻の長さに影響を与えると理解しております。
標高
プーアル茶に限らず、高い標高は良いお茶を生み出します。高い標高の場合、昼間は強い日差しを吸収し、一方夜になると温度が一気に下がるため、また、空気の濃度も下がることで、お茶の木の代謝活動が遅くなり、香りや味に寄与する成分が消費されず茶葉内に蓄積されます。
緯度
プーアル茶の産地はベトナム、ラオス、ミャンマーと国境を隔てており、場所によっては熱帯雨林性の気候の場所もあります。仮に標高が同じでも、緯度が南に行くほど、夜の温度は高くなります。従って、一般論として、緯度は高めの方が良いお茶が出来ます。一方、緯度が高すぎても、昼間の温度が低すぎて良いお茶は出来ません。
品質に影響を与えるお茶の木の樹齢
樹齢はプーアル茶を選ぶ上で重要な品質要素となります。木の年齢が古いほど根の全長は長くなります。長いと言うことは、より表面積が大きいことを意味しており、ミネラルの吸収能力が増します。但し、老木でも肥料が入ると、若い木と同じく、薄い味わいに変化します。成長速度が遅いことで、品質の高い茶葉を生み出す老木ですが、肥料栽培により、窒素濃度が高まり、その結果、成長速度が加速することが原因です。
樹齢はプーアル茶を選ぶ上で重要な品質要素となります。木の年齢が古いほど、根の全長は長くなります。長いということは、より表面積が大きいことを意味し、ミネラルの吸収能力が増します。但し、老木であっても肥料が与えられると、若い木と同様に味わいが薄くなります。老木は成長速度が遅いことで品質の高い茶葉を生み出しますが、肥料栽培により窒素濃度が高まった場合、成長速度が加速するため、品質が低下するのです。
お茶摘みの回数
お茶の質は、早い時期に摘まれたお茶ほど良く、摘んだ後に生えてくる2番茶、3番茶の質は1番茶には劣ります。重要なのは、1番茶を仕入れることです。清明節の前に摘まれる「明前茶」にこだわる人もいますが、樹齢が高かったり、標高が高いエリアのお茶は成長が遅いため、1番茶が4月中旬、場合によっては5月に発芽することも珍しくありません。重要なのは、あくまで1番茶であることです。
前年度に何度もお茶が摘まれた木は、翌年のお茶の質に影響します。春に一度だけ摘まれたお茶の場合、その翌年までの1年間でしっかりと時間をかけ、十分な量のミネラルを樹内に蓄積することができます。反対に、春、晩春、夏、秋と幾度も茶摘みが繰り返された場合、お茶の木は次々にミネラルを供給しなければならなくなり、冬になっても翌春に出る新芽に供給するための十分なミネラルが備蓄されません。そのため、春に出芽するお茶の品質は自然と低下します。有名産地の場合、お茶非常に高い値段で売れるため、年間を通じてお茶が摘まれることも珍しくありません。このような状況は結果的に産地全体の質の低下を引き起こします。
土壌の質
土は粘土質で鉄分が多いのが理想です。亜鉛や銅などのミネラルが含まれると、土は濃い赤色から紫色を呈します。このような土壌で作られたお茶は、渋味が強くなることが多く、あまり好ましくありません。
尚、ふくよかさに関係する要素として、カルシウムやカリウムなどのアルカリ金属を含む土壌が影響します。日本のお茶作りでは、お茶には酸性土壌が良いというのが常識となっていますが、私が知る限り、有名産地の多くは海底が隆起したことで、海底由来のアルカリ土壌で構成されている地域が多いです。
雨が少ないほど質の良いお茶ができる
ワインと同じく、お茶にも当たり年とあまり良くない年があります。プーアル茶は保存ができるお茶であるため、当たり年のものを多めに買い、在庫するなどのノウハウも必要となります。基本的に、お茶は成長が遅いほど良い品質になります。雨が少ないと、お茶が時間をかけて成長するため、より後味の濃い、余韻の長いお茶になるということです。お茶は比較的温かく、乾燥状態の方が良いお茶ができます。暖かい=日光が豊富なため、茶葉は香りや味の素となる成分を多く生成します。しかし、乾燥していると、夜の気温はさらに低くなり(放射冷却現象)、水分不足によって成長速度が遅くなります。
逆に、雨が多い年はお茶の品質が低下し、香りも弱くなります。雨が多いと、お茶はすくすくと伸びてしまいます。成長が早いと味が薄くなり、当然、余韻も短くなります。雲南省は非常に広く、総面積は38万平方キロメートルで日本よりも広いため、気候は一貫していません。南部はアジアの天気の影響を受け、南西・西部は大陸性の天気の影響を受けます。このため、雲南省でも最適な気候は州ごとに異なります。
自然農法
最後に品質に影響する最も重要な要素を紹介します。有機肥料、無機肥料に関係無く、窒素肥料が施肥された場合、お茶は成長が速くなり、光合成を行い、お茶の表面積を大きくします。お茶は同時にアミノ酸を細胞内に蓄えるために、テアニンを多く合成し、蓄積します。このテアニンは日本茶の旨味成分と言われておりますが、旨味成分=美味しさの成分ではありません。旨味というのは、味覚の1つ似すぎず、アミノ酸が多いから美味しいというのは大きな誤解です。実際、テアニンを多く含む茶葉は、ポリフェノールが少なく、ミネラル分の少ない茶葉になります。その結果、お茶の余韻は低下し、フラットな味わいになります。
高品質のお茶を生み出すためには、有機無機に関係無く窒素肥料を与えないことが重要です。ただし、お茶は成長するためには窒素が必要です。窒素を供給するためには、根粒菌のように空気中の窒素をお茶の根が吸収しやすい形で取り込むことのできる微生物の存在が欠かせません。これらの微生物が生態系を維持して茶園の土壌に生息するためには、茶園に生えている雑草をそのままに維持することが重要です。雑草を除去することは、無意識に土の中の巨大な生態系を破壊しているのです。
野生のお茶
お茶屋でよく見かける「野生茶」の実態
野生のお茶とは山に生えている天然のお茶を指します。プーアル茶の店や、インターネットで検索すると「野生プーアル」という文字を強調した名称をよく見かけますが、実際は多くが野生のお茶ではありません。
近年よく見かけるのは栽培していたお茶が放置され、野生化したお茶を「野生茶」して販売する方式です。ただ、これは野生茶ではなく、野放茶であり、野生茶と呼ぶのは適切ではありません。
また、雲南省では、カメリアタリエンシスが野生であろうと栽培されたものであろうと、野生茶と呼ぶ習慣があります。本来は自然の山中に自生しているものを野生茶と呼ぶべきですが、畑で栽培されたものでも、雲南省の人々はカメリアタリエンシスを見れば、迷わず野生茶と呼びます。これは、もともとカメリアタリエンシスが山に自生していたことに由来しており、我々日本人が畑で育てたタラの芽も山菜と呼ぶのと似た感覚です。そのため、市場に出回っている野生茶のほとんどは山で収穫されたものではありません。
別の例として、ヤマブドウを例に説明します。ヤマブドウは本来、山に自生している野生のブドウです。しかし、ワインなどの加工用に栽培されることもあります。栽培されたヤマブドウは、本来の意味での野生のブドウではありませんが、それでも「ヤマブドウ」と呼ばれます。カメリアタリエンシスが野生茶と呼ばれるのも同じようなニュアンスです。
野生茶探索ビデオ
以下の画像をクリックすると、Youtubeでビデオを見ることができます。
プーアル生茶の煙の香り
農家が自ら生産したお茶の場合、適切な生産設備を持たないことや、管理意識の低さから、殺青時に茶葉が焦げることがあります。農家から直接仕入れを行った場合、このようなタイプのお茶が多く見られます。実際には焦げている茶葉ですが、人によっては煙臭いと表現することも多々あります。私たちは焦げていないお茶を仕入れるようにしておりますが、中には焦げによる香ばしい香りを好まれるお客様がいることも確かです。
ビンテージプーアル茶について
プーアル茶は、生茶も熟茶も、熟成によって味や香りが変化しますが、この変化は微生物による発酵や酵素反応ではありません。微生物や酵素は、水分量が10%以下の環境では活動できません。お茶の熟成は、ワインの熟成と同じく、無酸素環境で起こる酸化還元反応が関与しています。酸化には必ずしも酸素が必要というわけではありません。化学的に酸化とは、酸素を受け取るだけでなく、電子を失ったり、水素を失ったりすることも指します。酸素がある環境下での酸化は、過度に進行してヒネ臭などの劣化を引き起こしますが、無酸素で長期保存された場合、限定的な酸化反応が進み、フルーツのような甘い香りが形成されます。
プーアル茶を熟成する理由
プーアル茶を熟成させる最大の理由は「香りの変化」でしょう。熟成させることでプーアル茶の香りは年々変化します。熟成により香りが顕著に変化するのは半発酵茶であるプーアル生茶ですが、プーアル熟茶についても熟成はお薦めします。
生茶の場合、熟成は長ければよいというわけではなく、自分の好みに応じた香りを作り出すことが重要です。例えば、数年熟成されたプーアル生茶は蜜のような甘い香りを生み出します。実際、多くのお客様がこの香りを好み、店でもお茶が蜜の香りへと変化すると、お茶は急速に人気が出ます。
特に女性や若者については、深く熟成させたプーアル茶よりも、数年熟成によって蜜の香りへと変化したお茶を好む傾向が見られます。
7~10年くらい熟成することで、乾燥杏やイチジク、黒糖のようなより甘い香りが生じます。黙って出すとお客様によっては、紅茶か烏龍茶と思われるほどに甘い香りがします。
このレベルの熟成は男性や年配の方に好まれる傾向があり、また、若い年齢層の方でも、冬場になるとある程度熟成されたお茶の方が美味しく感じられることが多いです。
つまり、長く熟成すればよいというわけではなく、自分の好みを把握して、それに合わせた熟成期間を設けることが重要です。
次にプーアル熟茶についてですが、熟茶の場合、熟成により舌触りがより滑らかになり、乾燥棗のような甘い香りがより増します。
熟茶の場合も、数年以上寝かせた方がより万人受けする香りへと変化します。
尚、熟成ですが、保存場所の年間平均気温が高いほど進みやすくなります。例えば、熱帯地方の場合、日本の数倍の速度で熟成が進みます。
お茶の質は何年寝かしておいても変化しない
お茶の重要な品質要素の1つである余韻(コク・後味)は、たとえ何年保管しようとも変化しません。生茶に関しては、お茶を何年保管したとしても、余韻の長さは原料となる茶葉の質で決まります。つまり、お茶の品質は熟成期間の長さに関係無く、摘んだときの茶葉の品質が重要であり、質の悪いお茶を長期熟成することで品質が上がるというような錬金術的なことは決してありません。
ただし、質を表す余韻とは別に、保存期間が長くなると舌触りや食感が軟らかくなります。長く熟成されたお茶は、口に入れると糖が溶けるような感覚を感じさせます。
プーアル茶の保管方法は迷信だらけ
プーアル茶の場合、外気に晒された状態で茶葉を保管すると、茶葉の水分値が上がり、茶葉品質劣化が起こります。特に、表面の水分が上昇しすぎると、カビが発生することもあります。もちろん、24時間365日空調管理下にある部屋で保管するならば別ですが。
当店では、プーアル茶の最適な保管方法として、しっかりと脱酸素処理がされたアルミ袋などに密封して保管することを推奨しております。
紫砂などの陶器の壺に入れて熟成する方もいますが、この方法は絶対に推奨しません。お茶は保存容器の影響を顕著に受け、味が変化します。多くの陶器容器は味に対してマイナスの影響を与え、長期保存することでお茶の余韻が消え、同時に渋味が強まります。仮に有酸素熟成をしたい場合でも、アルミ袋に入れ、しっかりと封をする方法が理想です。
プーアル茶が圧縮される本当の理由
そもそも、プーアル茶がなぜ圧縮されているかという点を考えてみてください。持ち運びが容易というのも1つですが、一番重要なのは、圧縮する事で中を無酸素状態にします。日本であれば、真空包装機を使えば簡単に出来ることですが、その様な最新設備がない数百年前からプーアル茶は圧縮により、内部は真空にされてきました。
昔のプーアル茶はカチンコチンに圧縮されていた
一昔前、鉄餅と呼ばれる、非常に高い圧力で圧縮されており、カチカチでまるで鉄のような餅茶が存在しました。私も経験がありますが、このカチカチのお茶はナイフでは全く歯が立たず、ノミで削るしか解体する方法がないほどでした。このようにカチカチに圧縮されたプーアル茶ですが、長期熟成すると、表面と内部の香りに違いがありました。強く圧縮されることで、茶葉内部が真空状態になっており、酸素が透過できなかったためです。鉄餅の場合、表面はややヒネ臭がする物の、餅茶内部のお茶を削り取って淹れると、フルーツや蜜のような香りがしたものです。
ところが、最近ではカチカチに圧縮した場合、硬すぎて多くの人からクレームが出ます。このため、現在ではプーアル茶の圧縮はゆるめに行われるようになりました。茶葉の解体はしやすくなりましたが、酸素が内部に透過しやすくなりました。私たちは、昔のカチカチのお茶と同じ条件を作るために、脱酸素剤を入れて酸素を除去しています。この保存方法は、昔の圧縮方法の原理を踏襲しており、実際にフルーツのような甘い香りを作り出します。
多くのプーアル茶コレクターは劣化臭を熟成香と勘違い
湿度に配慮せず、外気にさらされた状態で長年保管すると、茶葉は徐々に空気中の水分を吸湿します。その結果、かび臭いような極めて不快な香りへと変化しますが、それを熟成香と勘違いして拝んでいるコレクターが大勢いるのが実情です。
一般に、プーアル生茶の場合、1−3年ものは花のような香りがし、3−5年ものはフルーツのような香りへと変化し、更に、蜜や乾燥フルーツのような香りとなり、その後は木質の香りへと変化していきます。古ければ良いというわけでもなく、一般的に、女性や若者は1-7年程度のお茶を好む傾向にあります。
いろんな形のプーアル茶
「七子餅茶」はお茶の種類ではなく、形状を示す名称
プーアル茶というとピザのような形をしたお茶を思い浮かべられる人も少なくないのではないでしょうか。プーアル茶の本来の形は、散茶、毛茶と呼ばれ、緑茶と同じく、茶葉はバラバラで個々の茶葉が独立した形状をしております。私達が買い付けを行う際も、散茶で仕入れております。散茶の状態だと、混ぜ物があった場合に比較的容易に判断できます。散茶はその後、緊圧と言って、蒸気処理を行うことで柔らかくし、様々な形へと圧縮されます。
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プーアル茶が圧縮される理由ですが、その昔、交易品として長距離を運んだために、運搬がしやすいように圧縮されたと考えられております。但し、どのような形に圧縮するかと、それぞれの品質は全く関係ありません。七子餅茶のようにピザ形をしていても、沱茶のようにきのこ形をしていても、形状と品質は関係ありません。小型の、ミニ沱茶については、概して品質が悪いという先入観を抱いている人が多いですが、原料の茶がしっかりとした品質であれば、他の形状のお茶と品質は変わりません。七子餅茶のようなビザ形が一般的なプーアル茶ですが、飲みやすさから考えると、ミニ沱茶はお勧めの形状です。
プーアル茶の本来の形であるプーアル散茶。
但しこの状態だと、非常に嵩があり過ぎるため、
この状態で流通されることはまれであり、通常は緊圧により
様々な形へと「成形」されます。
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プーアル茶の成形は型さえあれば、様々な形へと成形が可能です。
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七子餅茶が357gの理由
ところで、なぜ、七子餅茶の標準的な重さは357gかご存じですか?昔から、餅茶は7枚セットで束にされておりました。357g x 7 = 2499gになります。中国の単位では500gが1kgなので、つまり、餅茶を7枚重ねると総重量が約5kgになるというわけです。
プーアル茶の緊圧工程詳細
以下、プーアル茶の緊圧の工程をを説明します。基本的に、散茶に蒸気をあてて柔らかくし、それを布の袋に入れて一気に成形を行います。全行程は1分以内に行われ、極めて手際よく作業が進められてゆきます。
1.プーアル散茶を計量します。 | 2.計量した茶葉を金属製の型の中へ入れます。 |
3.下から水蒸気を与え、茶葉を蒸し上げます。 | 4.柔らかくなった茶葉を型ごと布の袋に入れ、 形を維持しつつ絞り、そして縛り上げます。 |
5.この仮成形は後の緊圧工程に影響するため、 一貫した動作で流れるように形が作られます。 合計10秒程度で一つのお茶を仕上げてしまいます。 |
6.石で圧力をかけプーアル茶を圧縮します。 |
7.乾燥工程へ | 8.プーアル茶の成形は型さえあれば、様々な形へと成形が可能です。 写真はプーアル生茶 |
最後に
生産が終了した時点で発酵がほぼ完結している熟茶と異なり、生茶は残存する酵素の影響で徐々に発酵が進みます。プーアル熟茶は丁度「腐葉土」や「堆肥」に相当し、生茶は「干し草」や「藁」に相当します。畳もそうですが、最初は緑色ですが、徐々に色も香りも変化します。ハイジのドラマじゃないですが、干し草を数年寝かせておくと甘い香りに変化します。この変化はプーアル生茶の「熟成」に相当します。
プーアル熟茶の場合、生産された年ではなく、茶葉の質と発酵技術の優劣により商品の品質と性格が決まります。
それに対し、プーアル生茶の場合、毎年香りが変化していくために、生産された年は買う人にとって重要な要素でもあります。プーアル生茶の場合、ビンテージ物を追い求めるコレクターやマニアが大勢おり、中には数百グラムのお茶が、数十万円で取引されることもあるほどです。
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- 前川淳蔵作の伊賀天然朱泥の茶器が入荷しました。 今回入荷したのは、丸型宝瓶、急須、絞り出し、茶海です。 https://hojotea.com/item/maekawa_iga.htm 数百年前に古琵琶湖の湖底に沈殿した …
- 佐渡島:渡辺陶三作、無名異上赤茶壺と宝瓶が入荷
- 渡辺陶三氏作の無名異常赤急須および宝瓶が入荷しました。今回の入荷品は、後手タイプが中心です。 https://hojotea.com/item/tozo_joaka.htm 非常に稀少な上赤 「上赤」は、佐渡島の相川金山 …
- 非常に稀少な野生茶、永徳野生白茶2024を発売
- 永徳野生白茶を発売しました。このお茶は2021年に一度発売されましたが、瞬く間に売り切れ、その後の入荷はありませんでした。質が高く、個性的な香りで当店でも非常に人気の高いお茶です。 永徳野生茶は、雲南省臨滄市永徳県で、牛 …
- 2024年産の古樹白茶を発売: 雲南省にて生産監修することで品質向上
- 2024年産の古樹白茶を発売しました。 今年は、私たちが自ら現地に滞在し、茶葉の選定から生産に至るまで現場で監修したことで、自信のある仕上がりになっております。 https://hojotea.com/item/w25. …
- 単株茶を含む2022年産の鳳凰単叢老欉を3種類発売
- 単株を含む、鳳凰単叢の老欉を3種発売しました。今回発売したお茶は以下の三種類です。何れも標高1200mの茶園産の茶葉原料から作られており、濃厚な香りと深い後味がする素晴らしいお茶です。 鳳凰単叢老欉夜来香 2022 鳳凰 …
- 東洞庭山産、無農薬無肥料の碧螺春を発売
- 碧螺春(Biluochun)は中国を代表する緑茶の一つで、その優れた品質と独特の風味で有名です。HOJOでは、無肥料無農薬栽培による、余韻の長い碧螺春をお届けします。 https://hojotea.com/item/g …
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- an anにてジャスミンパールが紹介されました。
- an an 「マガジンハウス出版」 No.1865、2013年7月24日号「夏のお取り寄せ」特集で弊社のジャスミンパールが紹介されました。
- マレーシアの全国紙 “Star Newspaper”に掲載して貰いました。
- 先日、マレーシアの全国紙「Star Newspaper」でHOJOの特集をしてくれました。 Starはマレーシアで最も購読数の多い新聞で、マレーシアのメディアでは最も影響力の大きな新聞です。 新聞の内容は、茶器によりお茶 …
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