プーアル茶生茶、プーアル熟茶、白茶など、さまざまなお茶が餅茶として加工されています。通常、餅茶の製造は形状や硬さに焦点を当てられ、品質にはあまり影響がないと思われがちですが、実際には餅茶への緊圧作業はお茶の品質に大きな影響を与えます。そのため、緊圧工程は製茶の重要な一環であり、慎重に管理された作業が必要です本コラムでは、餅茶加工における重要なポイントをいくつかご紹介いたします。

輸送し易いように緊圧茶が考案された

プーアル茶の産地である雲南省では、プーアル茶は外国との貿易において重要な商品でした。雲南省には、かつての交易ルートである茶馬古道が存在し、これを通じてプーアル茶は中国周辺の諸外国に輸出され、お茶と馬が物々交換されていました。輸送には主にロバが利用されましたが、散茶の性質上、非常に嵩張り、体積が大きくなるため、運搬を容易にするために緊圧(圧縮成形)されるようになりました。

熟成しやすいように圧縮した等の説もありますが、私はこれは後付けの説だと考えております。プアール茶は元々「辺境の地のお茶」と言うような位置づけであり、当時は熟成香が云々というような繊細なお茶ではありませんでした。

圧縮の方法ですが、基本の流れは、

1. 餅茶のサイズに基づき茶葉の計量
2. 計量した茶葉を金属の筒にいれ蒸気を茶葉に通すことで、茶葉を軟らかくする。
3. 布の型に軟らかくなった茶葉をいれ、成形
4. 万力や、巨大な石、人が上に乗るなど各種方法で圧縮
5. 乾燥

 

プーアル熟茶を餅茶に加工している動画です。

ただし、プアール生茶と熟茶では圧縮方法が異なります。生茶はお茶の成分がそのまま残存しており、非常に粘性が高いことから手作業で緊圧することが出来ます。加圧する際の圧力も軽めで、比較的緩く緊圧されています。それに対して、熟茶は微生物発酵を経て作られるお茶であるため、発酵後のお茶は粘性がなく、パサパサした物性です。このため、プーアル生茶のように手作業で緊圧を行った場合、茶葉は崩れてしまいます。このため、熟茶の緊圧は油圧の強力なプレス装置を用いて行います。このことから、熟茶はそれなりの規模の工場がないと、餅茶加工を行うことができません。

白茶を餅茶に加工している動画です。基本、生茶の餅茶加工も全く同じ手順で行われます。

 

茶葉に通す蒸気の熱量の重要性

餅茶の加工において品質に大きな影響を与える要素は2つあります。まず、最初の工程は茶葉に通す蒸気の熱エネルギーの大小です。

上記の動画をご覧いただくと分かるように、茶葉を軟らかくするためには蒸気を使用しますが、この蒸気の出力(温度)が最終的な仕上がりに劇的な変化をもたらします。多くの業者は、茶葉をより迅速に軟化させるために、強力な蒸気を使用します。ただし、この強力な蒸気を使用すると、茶葉が高温に晒され、その結果、まるで蒸青緑茶のような味わいになってしまいます。

高温の蒸気により、茶葉に含まれる葉緑素(クロロフィル)が酸化分解し、葉緑素と結合していたマグネシウムが遊離するため、渋味や苦味を呈するお茶になります。そのため、蒸気の温度管理は非常に重要であり、適切な温度で茶葉を処理することで、望ましい風味と品質を確保できます。上記の動画では、ゆったりとした蒸気を通しており、さらに筒を二段にすることで蒸気による熱ダメージを抑えています。工場によっては、シューと音を立てるほど強い蒸気をあてる場合も珍しくありません。

餅茶の乾燥方法の重要性

次に、蒸気と同じく重要なのは、緊圧したあとの餅茶の乾燥方法です。お茶の乾燥には主に乾燥機を使用する方法と、自然乾燥の2つがあります。

乾燥機を利用する方法と、自然乾燥とでは、商品の仕上がりが全く異なる上に、熟成をしたときのお茶の変化にも大きな差が生じます。

緊圧する業者の方針、依頼をするバイヤーの好みで、乾燥方法が変わりますが、どの方法がよいかという点は人それぞれで、皆それぞれに異なる論理があります。

私達は、長年の経験からから、自然乾燥を採用しております。乾燥時に熱を極力かけないことで、茶葉に含まれる成分を変化させたくないという理由からです。

お茶の緊圧作業は、プーアル茶製茶工場では一定の規模を持つ工場の多くが自社で行っています。ただし、蒸気の通し方や乾燥方法においては、各工場で異なる手法が取られており、丁寧な仕事をする理想的な工場は非常にまれです。私達は、以前、理想的な餅茶製造工場を見つけるために、雲南省にいる多くの知人から情報をもらい、数多くの加工業者を訪問しました。その結果、現在お付き合いしている、餅茶加工の専門業者と出会うことができました。彼らはお茶に対するケアが非常に優れており、常に満足できる仕事を提供してくれます。仕上がりの餅茶の水分についても、希望通りに制御できるため、輸送中に発生するかもしれないカビなどの心配もなくなりました。

当店では、プーアル茶や白茶は各種生産者から散茶の状態で調達し、それを餅茶加工スペシャリストの工場に送ります。この流れを構築したことで、近年では安心して餅茶加工が任せられるようになりました。

日本茶(緑茶)、中国紅茶、白茶、プーアル熟茶、プーアル生茶、ジャスミン茶、烏龍茶という厳選された茶葉7種のお試しセット

関連記事 RELATED ARTICLES

お茶に関する最新情報を確実にキャッチするには? SOCIAL NETWORK

1,Twitterをフォローする。2,FaceBookで「いいね!」を押す。3,メールマガジンに登録する。という3つの方法で、お茶に関する最新情報をキャッチすることができます。今すぐ下のツイッターフォローボタンや「いいね!」をクリック!

メールマガジン登録で無料サンプルをもらおう!
メールマガジンにご登録いただくと無料のサンプル茶葉のプレゼントや希少商品の先行購入など様々な特典がございます。ソーシャルメディアの購読だけでなく、メールマガジンへのご登録もお忘れなく!

HOJO TEAオンラインショップNEWS一覧を見る

2022年産の鳳凰単叢老欉柿花香単株と桂花香単株を発売
2022年産の鳳凰単叢老欉単株茶を2種類発売しました。 何れも極めて樹齢の高い木ゆえに、非常に奥行きのある、長い余韻のお茶です。濃い後味に加え、1年以上の熟成による、濃厚な香りをお楽しみ戴けます。 鳳凰単叢老欉柿花香 単 …
ダージリンファーストフラッシュとオータムナル紅茶を発売
ダージリンを2種類発売しました。今回の新商品は、Arya茶園の春摘みファーストフラッシュのルビーと秋摘みオータムナルのルビーです。春摘みのルビーは4月に仕入れ、その後無酸素状態で熟成させることで、香りをさらに高めました。 …

最新の記事 NEW ARTICLES

野生茶を求め雲南省臨滄市南西部の山村へ
現在、雲南省臨滄市の南西部にてお茶の仕入を行っております。 当店にとって重要な商品の1つに野生茶があります。野生茶は製茶はもちろんですが、原料確保が一番大きな課題です。 今回、新たに野生茶が有る場所があるらしいと言う情報 …
雲南省のお茶産地にてプーアル茶、白茶、紅茶の生産
3月24日から中国の雲南省臨滄市の南西部、永德、鎮康県にてお茶の仕入れ、生産を行っております。 雲南省は世界一と言っても過言で無い極上の原料がある反面、生産に対する管理が甘いため、出来合のお茶を仕入れたのでは、理想とする …
2022年産の鳳凰単叢老欉柿花香単株と桂花香単株を発売
2022年産の鳳凰単叢老欉単株茶を2種類発売しました。 何れも極めて樹齢の高い木ゆえに、非常に奥行きのある、長い余韻のお茶です。濃い後味に加え、1年以上の熟成による、濃厚な香りをお楽しみ戴けます。 鳳凰単叢老欉柿花香 単 …
ダージリンファーストフラッシュとオータムナル紅茶を発売
ダージリンを2種類発売しました。今回の新商品は、Arya茶園の春摘みファーストフラッシュのルビーと秋摘みオータムナルのルビーです。春摘みのルビーは4月に仕入れ、その後無酸素状態で熟成させることで、香りをさらに高めました。 …
標高2100mのシングルガーデン産プーアル生茶、 火地古樹生茶2021を発売
火地古樹生茶2021を発売しました。 このお茶は、小さな単一茶園(シングルガーデン)のお茶のみから加工されたプーアル生茶です。 https://hojotea.com/item/d147.htm シングルガーデン産のお茶 …
ペットボトル入りのお茶の味に大きく影響するビタミンCの存在
近年、多くの人々にとって、お茶を飲むということはペットボトル入りのお茶を飲むことが普通な今日この頃ですが、本コラムでは、ペットボトル入りお茶の特徴的な味に焦点を当ててみたいと思います。 酸化防止目的のビタミンCの添加 コ …
鳳凰単叢蜜蘭香2023と老欉姜花香2022を発売
鳳凰単叢烏龍茶を2種類発売しました。今回販売したのは、蜜蘭香濃香2023 No.1と老欉姜花香2022です。 https://hojotea.com/item/houou.htm 質の良い鳳凰単叢の特徴 良質な鳳凰単叢は …
ちょっと変わった白茶の楽しみ方!驚きの応用アイデアをご紹介
水出しで抽出した白茶と、お湯で淹れた白茶はまったく異なる香りになることをご存じでしょうか?本コラムでは、水出しを更に応用した白茶の楽しみ方を紹介したいと思います。 殺青工程の無い白茶には酵素が残存 白茶の特徴は、製茶工程 …
大雪山野生茶ベースの特注ジャスミン茶:野生普洱茉莉龍珠
半ば好奇心から、大雪山野生生茶をベースとしたジャスミン茶を作ってみました。 日本はもちろん、中国でも極めて珍しいお茶ができました。 https://hojotea.com/item/s08.htm ジャスミン茶を特注生産 …
ミルクの香りがする烏龍茶とは?
お客様から偶に「ミルクの香りがする烏龍茶」を紹介してほしいとお電話頂く事があります。また、台湾を訪れた際に飲んだミルク烏龍茶が忘れられないというエピソードも耳にします。このコラムでは、そんなミルクの香りがする烏龍茶に焦点 …

PAGETOP