ステンレスで沸かしたお湯とお茶との意外な相性?!

[2021.09.29] Written By


お茶を飲む際にどのような材質の湯沸かしでお湯を沸かすべきか、悩まれると思います。
中国・台湾におけるお茶のプロはステンレスでお湯を沸かすことが多いのが実情です。
実際、ステンレスが味の点でベストなのか、検証してみました。

ステンレスは素材の名称ではない

ステンレスは、素材の名称では無い事をご存じでしょうか?
英語でStain-Less Steel:ステイン(錆びる)レス(にくい)、スチール(鋼)、つまり「錆びにくい鉄合金」の総称です。

様々な種類のステンレス

ステンレス鋼は、鉄に一定量のクロムやニッケルなどを含む合金のことですが、同じステンレスでも、様々な種類があり、種類ごとに含まれている金属の種類や割合が異なります。

食器に用いられるステンレスで一般的なのは

SUS316:約18%のクロムと約12%のニッケルを含む
SUS305:約18%のクロムと約13%のニッケルを含む
SUS304:約18%のクロムと約8%のニッケルを含む。
SUS430:約18%のクロムを含む。
SUS410:約13%のクロムを含む。

上記の様にクロムとニッケルの含有割合によって、同じ「ステンレス」でも様々な種類に分類されます。

基本、鉄は水の味を良くするのに対して、ニッケルやクロムは味に対してマイナスの影響を与えます。
ニッケルを含まないという点で、SUS430が味の点では良いかと思ったのですが、私が評価したところ、意外にも突出して味にマイナス影響を与えたのはSUS430でした。
同じくニッケルを18%含むSUS304の方が味が良かったため、ニッケルが含まれることで、クロムのマイナス作用を相殺しているのかもしれません。

意外に味に対してマイナスの影響を与えるステンレス

ニュートラルと思われているステンレスですが、基本どのステンレスもお茶の味に対してマイナスの影響を与えます。アルミや銅、真鍮ほどではないものの、後味を軽くしたり、渋味を呈するなどが一般的な変化です。

ステンレスは水垢で劇的に味が改善

しかしながら、ステンレスには別の側面があります。それは、水垢(水に含まれるミネラル)が付着すると、日に日に味が良くなる点です。
水垢とは、カルキ、スケールとも呼ばれ、水由来の炭酸カルシウムや鉄分をはじめとする各種ミネラルで構成されております。
ステンレスのヤカンやポットを使い続けると、徐々に、内面にミネラルが蓄積し、これらミネラルによる皮膜が出来ることで、ステンレスの影響が徐々に弱まって行きます。
この為、ステンレスの湯沸かしに関しては、使用期間が長ければ長いほど味が良くなります。
同じメーカーの同一のステンレスポットであっても、使用期間が長いほど、お茶の味が良くなります。一年使用したステンレスのポットは、新品と比較すると味の点では雲泥の差です。

ステンレスに関して、味への評価が2分されるのはこのような事情があるためです。新品のステンレスで沸かしたお湯は本当に美味しくありませんが、使い込んだステンレスで沸かすお湯はは素晴らしい味になります。

勿論、クエン酸洗浄は厳禁です。折角、形成されたミネラル層が取り除かれることで、味が瞬時にまずくなります。

HOJOではマレーシアのクアラルンプールに直営店を運営してますが、店舗にて新しいステンレスポットを使い始めるときは、3ヶ月くらい毎日何回もお湯を沸かすることで、ミネラルを内壁に付着させてから店舗デビューします。

同じ水を沸かし続けることの重要性

使用する水を変えると、水やお茶の味が美味しくなくなることをご存じでしょうか?
基本、水ごとに含まれているミネラルの種類が異なるためです。
突然新しい水に変えた場合、以前の水と、新しい水由来のミネラル間で緩衝作用が起こり、付着しているミネラルの組成が大きく変わります。その後、水を元に戻しても、既に付着しているミネラルの組成が変化してしまっているため、味は暫く(数ヶ月は)元に戻りません。安定して美味しいお茶を飲まれたい場合は、必ず、1種類の水を使い続けることが重要です。

ガラスとホーローもステンレスと似た性質

ステンレスについて説明をしてきましたが、ガラスやホーローについても同じような傾向があります。
どちらの素材も味の点ではニュートラルと思われがちですが、実際に評価するとそうではありません。ガラスもホーローもステンレスと同じく、味にはマイナスに作用します。
ただ、ステンレスと同じく、継続して使用することで、ミネラルが内面に付着し、味はどんどん改善して行きます。ただ、ガラスの場合、ミネラルの付着に伴い、内面が白く曇るため、あまり見た目的には美しくありません。

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