南部鉄器のメーカーごとに異なる鉄瓶と水の味との関係

[2013.08.20] Written By

南部鉄器 薫山工房

南部鉄器はお茶の味をまろやかにすると言われておりますが、メーカーや製法により水に与える影響は同じではありません。私は海外向けに鉄瓶を販売しており、メーカーともお付き合いがあるため、メーカーの協力のもと、製法と味の関係を検証するための実験を行いました。

釜焼き工程と鉄瓶の性能(水の味)の関係を実験

鉄瓶は鋳物です。鋳物とは鋳型にドロドロに溶けた鉄を流し込み、冷やすことで、型の形に成形します。鋳込んだ直後の鉄瓶は銀色をしておりますが、このままでは錆びやすいことから、炭火で鉄瓶を焼く、「釜焼き」という工程があります。

釜焼き前の鉄瓶

釜焼き前の鉄瓶

釜焼き後の鉄瓶

釜焼き後の鉄瓶

盛岡では釜焼き工程の目的は、鉄瓶の表面に酸化皮膜をつけてサビから守ることと説明しております。酸化皮膜と呼ばれておりますが、実際のところは鉄瓶は還元されております。炭火は還元炎であるため、鉄瓶の表面は還元され、色が青っぽく変化します。この釜焼き工程は味の点で性能に大きく影響を与えます。このことを実験するために、以下のサンプルを製作して頂きました。なお、以下の実験を行うに辺り、釜焼きに使用した炭は白炭です。

  1. 釜焼きを通常の倍の時間行った鉄瓶
  2. 全く釜焼きしない鉄瓶

これらの鉄瓶を通常の鉄瓶をコントロールとして比較してみました。

結果は以下の通りでした。

  1. 釜焼きを通常の倍の時間行った鉄瓶は水を殆どまろやかにしなかった。ステンレスのやかんとコクに大差がなかった。ただし、ボディはステンレスで湧かした水よりも減少
  2. 最も水のコクとボディを強くしたのは釜焼きをしない鉄瓶で、その差は顕著だった。
  3. 時間に関係無く、釜焼きをすると元の水よりもボディが減少する

純粋に味のみを追求した場合、釜焼きをしない方が味はよい

以上の実験から、釜焼きの時間は味と密接な関係があることが分かりました。釜焼きをしない鉄瓶はコクもボディも強くなるのですが、使っている最中から錆が進行します。どのように使っても、錆びてしまうため、味の点では優れておりますが、実際に使用するには現実的ではないように思います。

釜焼きにより表面が溶けることが味に影響すると推察

釜焼きの時間を増すことで、水のコクが減少する点ですが、私は、鉄瓶の表面構造が関係していると推察しております。急須の場合もそうですが、高温で焼くと、コクの強さ(まろやかさ)は落ちます。急須の場合、温度が上がることで、急須表面の粒子が溶け、表面積が減少するためと考えられております。鉄瓶は鋳物であるため、表面は複雑な構造をしており、大きな表面積を有しております。釜焼きをすることで、鉄の表面が僅かに溶け、表面積が減少することが、コクを減少させる主要因ではないかと考えております。

釜焼きに使用する炭の種類でも味が変化する

釜焼きに使用する炭、釜焼きの諸条件はメーカーにより違いがあります。例えば、高温になる白炭を使用するメーカー、比較的低温の黒炭を使用するメーカーと、釜焼きに用いられる炭一つとっても同じではありません。使用する炭の違いは、商品の性能にも影響します。味の観点のみから判断すると、高温にならない釜焼きが理想なのかもしれません。

砂鉄鉄瓶

南部鉄器には砂鉄で出来た鉄瓶があります。砂鉄と言っても、メーカーにより使用する材質は同じではありませんが、重要な点は、砂鉄瓶には釜焼き工程がありません。砂鉄は鉄の密度が高く、錆が内部に浸潤しにくいことから、一般的に釜焼き無しで商品化されます。砂鉄の鉄瓶は、強いコクと強いボディの両方を兼ね備えており、味の点からは非常に理想的な鉄瓶です。ただし、砂鉄は割れやす取り扱いが非常に難しく、更に値段が非常に高いため、あまり気軽に使用できる鉄瓶ではありません。

砂鉄 鉄瓶

砂鉄 鉄瓶 薫山鉄鉢型霰0.9L

 

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