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天然土なら良いとは限らない朱泥急須の性能
- [2014.06.24] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
朱泥は日本、中国を始め、世界のお茶マニアの間でとても人気のある素材です。朱泥の人気は、中国の江蘇省の宜興の朱泥茶壺(中国語で茶壺とは後手の急須を指す)に端を発します。1960年以前に宜興で作られた朱泥茶壺の中には、お茶の味をコクやボディの点で顕著に改質するものが多く見られました。
残念な事に近年作られた宜興の朱泥茶器の多くは、見た目は昔の朱泥茶器とそっくりでも、味の点では全く異質であり、年代物の宜興の朱泥茶壺のような高い性能のものを見つけ出すのは極めて困難となっております。これは良い朱泥が産出されないという問題もありますが、むしろ作家の意識の問題が大きく、朱泥の種類とお茶の味との相互関係を理解している作家がいなくなってしまったことが最大の問題だと考えます。
世界中にある朱泥
世界のお茶マニアの多くは宜興を朱泥の聖地のように考えており、優れた土は宜興にしかないと考えている人も少なくありません。ただ、私は、お茶の味をより美味しくする(コクやボディを強化する)土があるのは中国だけでなく、世界中、至る所に存在すると思っております。私が知る限り、朱泥と呼べる土は、日本にも、アジアにも、ヨーロッパにもあります。例えば、ワイン用のブドウの産地、オリーブの産地の多くは、赤土や粘土質の朱泥により構成されております。日本でも宇治茶の産地などは、茶園の土を少し掘ってみると下層は厚い朱泥層で覆われております。私にとって身近なところでは、私の家の畑にも朱泥が豊富に存在します。表層の黒い土を除去すると、その下は厚い朱泥の層で構成されております。
日本にも縄文時代からあった朱泥の焼き物
日本でも遙か大昔から朱泥は容器に使われてきました。他でもない、縄文土器です。私は以前、縄文土器と水の味との関係を評価したこともあります。これら朱泥の特徴としては原土は粘性が高く黄土色をしており、焼成することで朱色に焼き上がります。
お茶味を美味しくする朱泥を選び出す事が仕事
朱泥は至る所にあるものの、急須作家は極めて限られた地域にしかおりません。このことから急須産地外にある朱泥の存在は一般にはあまり知られていないのが実情かと思います。私は急須の産地として有名かどうかに関係無く、出来るだけ多くの朱泥を評価し、味の点から優れた素材を選び出すことを仕事としております。
土を評価する際にはまずテストピースを製作します。テストピースはまず原土から作ります。
テストピースを作成することで、土とお茶の味との関係を評価することが出来ます。
評価をするにあたっては、「美味しい」「美味しく無い」と言った、主観的な評価ではなく、より客観的に「コク」「ボディ」「渋味」をそれぞれ評価します。
数パーセントしかない理想の朱泥
前述したとおり、焼き上がった状態の色合いのみに注目した場合、「朱泥」を探すことは全く難しい事ではありません。おそらく日本全国に分布しているものと思われます。また、原土を専門とする土業者を訪ねれば朱泥は容易に入手出来ます。ただし、「コクやボディを改善し、渋味を呈さない土」となると極めて希にしか存在しません。私の経験上100種類の朱泥を焼成して評価し、数種類良い土が見つかれば良い方だと思っております。更に、例え味の点で求める性能が確認されたとしても、焼き上がった土の状態がボソボソだったり、高い吸水性を有する場合、水漏れしてしまうために、茶器には向きません。
鉄以外のミネラル分が朱泥の性能に大きく影響
実際、日本・台湾・中国では朱泥の茶器が多く製作されております。ただし、100%天然の土から作られた朱泥であってもお茶の味を円やかにするとは限りません。基本的に土に鉄分が多く含まれていれば、窯で焼くことで鉄分が酸化し(酸化鉄になるため)、赤く発色します。鉄分ばかりが注目されがちな朱泥ですが、もう一つ重要なのは鉄分以外のミネラルの存在です。金、銀、チタン、錫、鉄、プラチナのように味を良くするミネラルもあれば、アルミ、亜鉛、銅のように渋味を増し、コクやボディをカットし、渋味を呈するミネラルも存在します。実際にテストすると、コクやボディが劇的に減少する、渋味が強く感じられる等のマイナスの作用を示す土もあります。
お茶の味を美味しくするという点で「優れた朱泥」といえる土はごく僅かであり、その様な土を見つけ出す為には偶然に頼るのではなく、土と味の関係を客観的に評価することが重要かと思います。
中国宜興における先人達も長い歴史の中、経験的にスクリーニングを繰り返すことで優れた朱泥を見いだしてきたのではないでしょうか。
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