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急須の性能が低下する3つの原因
- [2015.02.02] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
土の性能の良い急須は、お茶のコクを増したり、香りをふくよかにする働きがあります。しかしながら、購入直後はお茶をまろやかにしていた急須でも、その後の使い方によっては味の改質効果が無くなってしまうことがあります。特に、気をつけるべき点は3つあります。
1.やかんが水をフラットにしている事に気が付かず、使い続けた場合
私の経験上、特に注意すべきは土瓶です。日本では湯を沸かす際、ステンレスか鉄瓶が使われ、中国ではステンレスかガラスが一般的です。それに対し、台湾では比較的多種類の土瓶が生産されております。土瓶は見た目的にも美しく風合いがあるため、ステンレスやガラス、電気ポットでお湯を沸かすよりもお茶の味が美味しくなるだろうと思われがちです。しかし、市場に流通している土瓶の場合、耐熱性と色合いだけを基準に土が選ばれていることが大半で、多くの場合、素材と味の関係が検証されておりません。良かれと思って使っている土瓶が実は味を悪くしているというのは意外に良くある話です。「土瓶は水の味を良くするだろう」という強い先入観から土瓶が水(お茶)の味をフラットにしていることに気がつかない場合が一般的です。
重要なのは、自分の土瓶は大丈夫と思わず、先ずは、土瓶の性能を疑うことです。土瓶で沸かした湯と、ステンレスのやかんで沸かした湯でそれぞれ同じお茶をいれて、味を比較してみてください。仮に、土瓶が味をフラットにしている場合、即、土瓶の使用を中止されることをお薦めします。味をフラットにするにもかかわらず、土瓶を継続使用した場合、土瓶由来のミネラルが急須内面に付着することから、性能が目に見えて低下します。継続的に使用し続けると、急須の性能はどんどん低下し、最終的にはガラスでお茶をいれるよりも味がフラットになります。
2.やかん自体の性能は問題ないが、急須との相性が合わない組み合わせで使用し続けた場合
南部鉄器も使い方によっては要注意です。南部鉄器の製作には、釜焼きという工程があります。この工程では鋳込みを終えた鋳鉄を炭火で焼くことで、表面を還元し、鉄が酸化しにくいように処理します。釜焼きに使用される炭ですが、工房によって、白炭を使用したり、黒炭を使用しますが、使用する炭の種類により、炎の状態かかわることから鉄の表面が強く還元されたり、中性還元気味となったりします。例外もありますが、釜焼きで白炭を使用した場合内面が強く還元されることから、還元焼成の急須と相性が良く、逆に、中性気味の炎で釜焼処理された鉄瓶の場合、酸化焼成の急須と良い相性をしめします。私が海外のお客様などへ販売している鉄瓶メーカーとしては、薫山工房と鈴木盛久工房があります。薫山工房は鉄瓶内部を強く還元していることから、萬古焼や野坂や無名異の還元焼成と相性が高く、逆に、酸化焼成の茶器とは相性が良くありません。逆に鈴木盛久の鉄瓶の場合、酸化焼成の茶器との相性が良く、逆に、萬古のような還元焼成の茶器との相性が良くありません。また、砂鉄鉄瓶という材料の鉄瓶がありますが、砂鉄の場合、釜焼き工程がないため、一般的に酸化焼成の茶器と高い親和性を示します。鉄瓶を使用して湯を沸かす場合、鉄瓶がどちらのグループに属するか理解し、それにあわせて急須を選ぶことが重要です。適さない組み合わせにもかかわらず、継続的に使い続けた場合、急須の性能は低下します。
尚、この現象は鉄瓶に限らず、他の材質でも頻繁に起こります。例えば、1.でも言及した土瓶についても酸化か還元のどちらかで焼かれております。一般的に還元焼成の土瓶と酸化焼成の急須を組み合わせた場合、また、その逆、酸化焼成の土瓶と、還元焼成の急須を組み合わせた場合も同じような問題が生じます。
3.急須と相性の合わないお茶をいれ続けた場合
急須によって、特定のお茶との相性が悪い場合があります。例えば、安渓の鉄観音、鳳凰単叢烏龍茶、武夷烏龍茶は萬古焼と信楽焼との相性が良くありません。鳳凰単叢烏龍を萬古焼でいれた場合、渋味を呈する上に、コクが無くなりフラットに味わいに変化します。せっかく、高級な鳳凰単叢烏龍茶を購入しても、萬古焼でいれると単叢ではなく、量産品のような味に変化します。萬古焼の場合、日本茶や台湾のお茶などをいれると、コクを増強するためにお薦めしているのですが、特定のお茶に対してのみ、マイナスの作用を示します。当然、相性の悪いお茶をいれ続けた場合、急須の性能は落ちます。いったん急須の性能が落ちると、その後、日本茶など、従来相性の良かったはずのお茶をいれても、味がフラットになったり、渋味を呈したりと悪影響が出るようになります。
急須の性能を元に戻すには
急須の従来の性能が落ちてしまった場合、急須を処理して元に戻す必要があります。要はマイナスの影響を与えている原因、つまり急須内面に付着した目に見えないミネラルの層を除く事が重要です。
私の場合、ステンレスのヤカンで湯を沸かし、それを急須に注ぎ入れます。その後、何回も、湯を取り替える作業(夜の間も漬け込む)を継続することで、従来の土の性能が徐々に戻ります。もっと早いリセット方法として、重曹で煮る等の方法を推奨されている人もおりますが、この方法については未だ私自身で検証できてないため、人にはお勧めできません。今度、急須と相性の悪いやかんなどを使うことで意図的に急須を駄目にした後に実験したいと思っております。ただ、私の経験上、重曹やクエン酸などで急須を処理した場合、それらの影響が土に残ります。それをを取り除くために、やはり暫くは「湯をいれては捨て」を繰り返すことで急須をリハビリする必要があります。この事を考慮すると、最初っから地味に湯をいれて元に戻した方が良いかもしれません。湯と一緒に茶葉を漬け込むという方法もありますが、私は個人的に湯だけで処理する方法で十分と感じております。
私はニュートラルな素材のヤカンを使用
私はヤカンについては、ステンレスを常用しております。それで十分に美味しいお茶がはいるためです。ヤカンまでこだわるとヤカン+急須+お茶で組み合わせを検討する必要があり、非常にややこしい話になるため、ヤカンについては影響が少ないステンレスを選び、急須の素材にこだわることが出来ます。逆に、急須はシンプルにガラス急須や蓋碗を使用したいという人は、ヤカンの素材にこだわってみるのも良いかと思います。
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