色だけで選んではいけない急須の選び方。中国茶におすすめの茶器

[2013.07.05] Written By

還元焼成と酸化焼成の野坂急須
急須は焼き方により土の色合いや、質感が変わります。同じ土でも焼く方法で赤くなったり、小豆色になったり、黒くなったりします。異なる焼き方で焼かれた茶器の場合、見た目の違いはもちろんですが、実はお茶の味や香りに対する影響も異なります。見た目の好みだけで急須を選ぶのではなく、味に対する影響も最大限に考慮する必要があります。

酸化焼成と還元焼成の対称的な焼き方

急須の一般的な焼き方ですが、2つの焼成法に大別することができます。焼成中に、酸素が十分にあり、完全燃焼している「酸化焼成」と、酸素が不十分で煙を伴う、「還元焼成」の2種類です。酸化焼成と還元焼成の中間的な焼き方も存在しますが、味香りへの影響は、酸化・還元のいずれかの傾向を示します。

青い炎の酸化焼成と、赤い炎の還元焼成

酸化と還元焼成についてもう少し分かりやすく説明したいとおもいます。ガスの調理器の炎は「青い色」をしておりますが、これは酸化炎と呼ばれます。十分な酸素が炎に供給されている状態です。逆に、ろうそくの炎、焚き火をしたときの炎は赤色をしておりますが、こちらは還元炎と呼ばれます。還元炎の場合、酸素不足による不完全燃の状態であり、一酸化炭素や水素が発生します。

3種類の宝瓶

左の宝瓶は無名異の還元、真ん中は常滑本朱泥の酸化、右は無名異の酸化

酸化焼成ではミネラルが酸化

酸化焼成の場合、高温の酸素を含むため、素材を酸化します。例えば、ガスの火で鉄瓶の湯を沸かし続けると、底の部分が薄く錆びたように赤くなりますが、まさにこの現象です。同様に酸化焼成で焼かれた急須のミネラルは酸化します。土が鉄を多く含む場合、鉄は酸化され、赤い色に変化します。
渡辺陶三氏による野坂土、酸化焼成

還元焼成とは

反対に、還元炎は酸素を含みません。還元炎には一酸化炭素や水素が含まれており、これらの物質は酸素を受け取って二酸化炭素や水(H20)になりたいため、素材から酸素を奪い取ります。その結果、素材は還元されます。例えば、土に鉄分が含まれていた場合、鉄は還元焼成により還元され、青〜黒の色へと変化します。

茶器の焼成方法は味に大きく影響する

異なる焼き方は急須の色ばかりか、お茶の味香りも顕著に影響します。私も無名異土や野坂土、近将来発売予定の古琵琶湖土など、同じ土で酸化焼成と還元焼成の両方で製作した茶器をプロディースしておりますが、色の好みだけで茶器を選択するのは賢明ではありません。焼き方は味と密接な関係があるため、茶器を選ばれるお客様は、焼き方と味香りの関係を意識することが重要です。焼き方の違いは味香りにたいして、以下のような影響をします。

近々発売予定の古琵琶湖土の急須と絞り出し

酸化焼成の茶器でいれたお茶

ボディは還元焼成よりも強く、コクは還元焼成よりも弱い。

還元焼成の茶器でいれたお茶

ボディは酸化焼成よりも弱く、コクは酸化焼成よりも強い。

ボディを重視するかコクを重視するか

上記の傾向は、土の種類に関係無く見られます。還元焼成の代表格である萬古焼の場合、ガラスの急須でいれた場合よりもボディは減少しますが、逆にコクは増します。ボディが弱いと言うことは、香りが立ちにくく、緑茶やプーアル熟茶にむきます。逆に、紅茶や烏龍茶をいれると香りが弱く感じられます。酸化焼成の場合、ボディが強くなるため、香りが口の中で拡散するように感じられ、香りをより引きだせる材質です。このため、発酵茶をいれる場合、概して酸化焼成の茶器の方が香りをより楽しむことができます。ただし、コクを重視するか、ボディを重視するかという点は個人の好みにも関係するため、一概に、どの茶器をどのお茶に使用するべきかという点は断定できません。香りが落ちても、透明感あるコクを楽しみたいという人もおり、その場合、還元焼成の茶器に喜びを見いだします。

2つの異なる種類の還元焼成と味への影響

還元焼成ですが、最初から還元炎で焼く場合と、いったん酸化焼成したものを、表面だけ還元炎で焼きなおす方法の2種類が一般的です。例えば、萬古焼の場合、最初から還元炎で焼かれます。私が販売している、野坂や無名異の還元焼成の場合、2度焼きの手法をとっております。一度酸化焼成した急須を、低めの温度にて還元焼成します。2度焼きをした茶器の場合、土の内部は赤い色をしております。ただし、味香りへの効果については、最初から還元焼成した急須も、最後に簡易的な還元をおこなった急須も同じような傾向を示します。

萬古焼の急須

舘正規氏による萬古焼の急須

舘正規氏による信楽

舘正規氏による信楽土の急須:この急須は肌色をしているが、焼き方は還元焼成。一部の土に関しては色だけで焼き方を判断するのは困難。

コクとボディの感じ方

コクとは、やわらかさ、まろやかさ、スムーズ、余韻などの言葉に置き換えることができる感覚です。
ボディとは、重量感、広がり、ふくよかさ、弾力などの言葉に置き換えることができる感覚です。

日本茶(緑茶)、中国紅茶、白茶、プーアル熟茶、プーアル生茶、ジャスミン茶、烏龍茶という厳選された茶葉7種のお試しセット

関連記事 RELATED ARTICLES

お茶に関する最新情報を確実にキャッチするには? SOCIAL NETWORK

1,Twitterをフォローする。2,FaceBookで「いいね!」を押す。3,メールマガジンに登録する。という3つの方法で、お茶に関する最新情報をキャッチすることができます。今すぐ下のツイッターフォローボタンや「いいね!」をクリック!

メールマガジン登録で無料サンプルをもらおう!
メールマガジンにご登録いただくと無料のサンプル茶葉のプレゼントや希少商品の先行購入など様々な特典がございます。ソーシャルメディアの購読だけでなく、メールマガジンへのご登録もお忘れなく!

HOJO TEAオンラインショップNEWS一覧を見る

餅茶で楽しむ個性的な香り、大雪山野生白茶2022と白鶯山古樹白茶2016を発売
大雪山野生白茶2022の200g餅茶と白鶯山古樹白茶 2016年産の200g餅茶を発売しました。 餅茶に加工した餅茶は熟成に向いており、今回発売した2種のお茶についても、熟成による個性的な香りをお楽しみ頂けます。 餅茶製 …
宮廷滇紅、待望の再入荷!紅茶とプーアル熟茶の魅力が凝縮された一杯
新しくなった「宮廷滇紅」が入荷しました。このお茶は、プーアル熟茶の宮廷金毫と、雲南紅茶をブレンドすることで、豊かで多層的な香りが楽しめます。 なお、雲南紅茶は生産地である雲南省を表す漢字「滇」と、紅茶を表す「紅」の合わせ …

最新の記事 NEW ARTICLES

中国のお茶愛好家に人気!実生の獅峰龍井茶の新茶を発売!
2023年産の獅峰龍井茶を発売いたしました。 https://hojotea.com/item/g06.htm 龍井茶は、釜に茶葉を押しつけるようにして、釜炒りをする事で作られます。この為、茶葉が扁平な形状をしている点が …
餅茶で楽しむ個性的な香り、大雪山野生白茶2022と白鶯山古樹白茶2016を発売
大雪山野生白茶2022の200g餅茶と白鶯山古樹白茶 2016年産の200g餅茶を発売しました。 餅茶に加工した餅茶は熟成に向いており、今回発売した2種のお茶についても、熟成による個性的な香りをお楽しみ頂けます。 餅茶製 …
宮廷滇紅、待望の再入荷!紅茶とプーアル熟茶の魅力が凝縮された一杯
新しくなった「宮廷滇紅」が入荷しました。このお茶は、プーアル熟茶の宮廷金毫と、雲南紅茶をブレンドすることで、豊かで多層的な香りが楽しめます。 なお、雲南紅茶は生産地である雲南省を表す漢字「滇」と、紅茶を表す「紅」の合わせ …
お茶の老木の値段高騰が引き起こす思わぬ弊害
ここ10年くらい、中国のお茶業界においては、鳳凰単叢烏龍茶、武夷岩茶、プーアル茶を含む雲南省のお茶を中心に、老木から摘まれたお茶が大きなブームとなっています。しかしながら、老木が希少性を持つようになり、雲南省や鳳凰鎮での …
野生のプーアル生茶、大雪山野生生茶 2022年産を発売
大雪山野生茶2022年の餅茶(200g) を発売しました。 野生茶とは山に自生しているお茶で、現地の人々は山菜を収穫するような感覚で、山に入り、お茶を収穫します。 https://hojotea.com/item/d27 …
ジャスミン茶の常識を覆す!プーアル熟茶を使った斬新な味わいの黒ジャスミン茶(黒茉莉茶)
私たちは完成したジャスミン茶を仕入れるのではなく、自分たちで選んだ原料をジャスミン工場に持ち込むことで、オリジナルのジャスミン茶を特注生産しています。これまでにも、プーアル生茶を原料としたプーアルジャスミン茶、古樹銀針( …
中国でもレアな薫香の高級正山小種、奇種伝統式が登場!
正山小種には、松の木を燃やしてお茶の乾燥を行うことで薫香を呈するタイプと、甘く華やかなフルーツ香が特徴のタイプの2系統のお茶があります。それぞれ全く異なる香りがするお茶ですが、一般的にフルーツの香りがする正山小種は高価な …
プーアル生茶は発酵茶?それとも緑茶?という議論
プーアル茶というと、発酵茶の代表格のように各書籍には書かれております。 プーアル茶は分類的には、黒茶に分類されることから、後発酵茶と定義されている事が一般的です。 しかし、プーアル茶と言ってもプーアル生茶とプーアル熟茶の …
武家寨古樹生茶 2022 秋茶 散茶を発売
  武家寨古樹生茶 散茶 2022の秋摘み茶を発売しました。 https://hojotea.com/item/d116.htm 秋のお茶は、個性がはっきりしており、春茶とはまた違った美味しさがあります。 高山 …
お茶で絶対にやってはいけない2つの保存法
お茶を保存する上で絶対に避けるべき保存方法を2つ紹介します。 冷蔵庫・冷凍庫での保存が劣化に寄与 お茶は冷蔵庫にいれておけば新鮮という印象がありますが、実は冷蔵庫はお茶を急速に劣化する大きな原因の1つです。 冷蔵庫がなぜ …

PAGETOP