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色だけで選んではいけない急須の選び方。中国茶におすすめの茶器
急須は焼き方により土の色合いや、質感が変わります。同じ土でも焼く方法で赤くなったり、小豆色になったり、黒くなったりします。異なる焼き方で焼かれた茶器の場合、見た目の違いはもちろんですが、実はお茶の味や香りに対する影響も異なります。見た目の好みだけで急須を選ぶのではなく、味に対する影響も最大限に考慮する必要があります。
酸化焼成と還元焼成の対称的な焼き方
急須の一般的な焼き方ですが、2つの焼成法に大別することができます。焼成中に、酸素が十分にあり、完全燃焼している「酸化焼成」と、酸素が不十分で煙を伴う、「還元焼成」の2種類です。酸化焼成と還元焼成の中間的な焼き方も存在しますが、味香りへの影響は、酸化・還元のいずれかの傾向を示します。
青い炎の酸化焼成と、赤い炎の還元焼成
酸化と還元焼成についてもう少し分かりやすく説明したいとおもいます。ガスの調理器の炎は「青い色」をしておりますが、これは酸化炎と呼ばれます。十分な酸素が炎に供給されている状態です。逆に、ろうそくの炎、焚き火をしたときの炎は赤色をしておりますが、こちらは還元炎と呼ばれます。還元炎の場合、酸素不足による不完全燃の状態であり、一酸化炭素や水素が発生します。
酸化焼成ではミネラルが酸化
酸化焼成の場合、高温の酸素を含むため、素材を酸化します。例えば、ガスの火で鉄瓶の湯を沸かし続けると、底の部分が薄く錆びたように赤くなりますが、まさにこの現象です。同様に酸化焼成で焼かれた急須のミネラルは酸化します。土が鉄を多く含む場合、鉄は酸化され、赤い色に変化します。
還元焼成とは
反対に、還元炎は酸素を含みません。還元炎には一酸化炭素や水素が含まれており、これらの物質は酸素を受け取って二酸化炭素や水(H20)になりたいため、素材から酸素を奪い取ります。その結果、素材は還元されます。例えば、土に鉄分が含まれていた場合、鉄は還元焼成により還元され、青〜黒の色へと変化します。
茶器の焼成方法は味に大きく影響する
異なる焼き方は急須の色ばかりか、お茶の味香りも顕著に影響します。私も無名異土や野坂土、近将来発売予定の古琵琶湖土など、同じ土で酸化焼成と還元焼成の両方で製作した茶器をプロディースしておりますが、色の好みだけで茶器を選択するのは賢明ではありません。焼き方は味と密接な関係があるため、茶器を選ばれるお客様は、焼き方と味香りの関係を意識することが重要です。焼き方の違いは味香りにたいして、以下のような影響をします。
酸化焼成の茶器でいれたお茶
ボディは還元焼成よりも強く、コクは還元焼成よりも弱い。
還元焼成の茶器でいれたお茶
ボディは酸化焼成よりも弱く、コクは酸化焼成よりも強い。
ボディを重視するかコクを重視するか
上記の傾向は、土の種類に関係無く見られます。還元焼成の代表格である萬古焼の場合、ガラスの急須でいれた場合よりもボディは減少しますが、逆にコクは増します。ボディが弱いと言うことは、香りが立ちにくく、緑茶やプーアル熟茶にむきます。逆に、紅茶や烏龍茶をいれると香りが弱く感じられます。酸化焼成の場合、ボディが強くなるため、香りが口の中で拡散するように感じられ、香りをより引きだせる材質です。このため、発酵茶をいれる場合、概して酸化焼成の茶器の方が香りをより楽しむことができます。ただし、コクを重視するか、ボディを重視するかという点は個人の好みにも関係するため、一概に、どの茶器をどのお茶に使用するべきかという点は断定できません。香りが落ちても、透明感あるコクを楽しみたいという人もおり、その場合、還元焼成の茶器に喜びを見いだします。
2つの異なる種類の還元焼成と味への影響
還元焼成ですが、最初から還元炎で焼く場合と、いったん酸化焼成したものを、表面だけ還元炎で焼きなおす方法の2種類が一般的です。例えば、萬古焼の場合、最初から還元炎で焼かれます。私が販売している、野坂や無名異の還元焼成の場合、2度焼きの手法をとっております。一度酸化焼成した急須を、低めの温度にて還元焼成します。2度焼きをした茶器の場合、土の内部は赤い色をしております。ただし、味香りへの効果については、最初から還元焼成した急須も、最後に簡易的な還元をおこなった急須も同じような傾向を示します。
コクとボディの感じ方
コクとは、やわらかさ、まろやかさ、スムーズ、余韻などの言葉に置き換えることができる感覚です。
ボディとは、重量感、広がり、ふくよかさ、弾力などの言葉に置き換えることができる感覚です。
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