野坂酸化焼成

日本茶に適した茶器(土)を選ぶ際、どのようなポイントに注意して選ぶと良いか詳しく説明したいと思います。

茶器によるお茶の味の変化のしかた

茶器に使用されている土の種類により、お茶の味は変化します。ただし、茶器によるお茶の味の変化は多種多様ではありません。茶器に使用されている土、そしてその土に含まれるミネラルが水の味に影響をするわけですが、お茶の味の変化は以下の様にまとめることができます。

  1. ボディの増減
  2. コクの増減

ボディとは、ふくよかさ、味の広がり感、香り豊か、味わい豊かと言った感覚をさします。同じお茶でも、ボディが強化されると香りが強く感じられるようになります。ただし、ボディが増した場合、良い香りも悪い香りも強く感じられるようになります。
それに対して、コクは喉越し、透明感、クリアーな飲み心地、奥行きなどを指す言葉です。つまり、ボディは横の感覚、コクは縦の感覚をさします。ボディとコクの両方が感じられると、お茶の味が立体的に感じられ、主観的にとても美味しく感じられます。

古琵琶湖急須

日本茶の特徴に応じた茶器選び

さて、日本茶を飲むにあたってどのような土の茶器が適しているかという点ですが、それは飲む日本茶の種類、好みによって分かれます。茶器選びという観点から日本茶を分類すると、2つのグループに分けることができます。

  1. アミノ酸が多く含まれ、旨味を重視した作り方
  2. ミネラル・ポリフェノールが多く含まれる自然栽培・準自然栽培のお茶、在来種

アミノ酸が多く含まれる一般的な日本茶

日本茶業界では、お茶の色やアミノ酸による旨味が重要視される傾向があり、多くの日本茶はこれらの特徴を強化する方向で作られております。具体的には、窒素系の肥料が使用され、アミノ酸を豊富に含むお茶が作られます。肥料が入ることでお茶の成長速度が速くなり、その結果成長に必要な炭水化物を生産するために葉緑素をより沢山生産します。
また、均質感有る見た目を作り出すために製茶の段階で、茎が除去され葉のみが取り出されます。このような方法で作られ他お茶には以下の特徴が生じます。

  1. コクが少ない
  2. ボディが少ない
  3. アミノ酸(テアニン)による旨味、アミノ酸に火を入れる事で生じる独特の香り
  4. 海苔のような香り

肥料を与えられたお茶は早く成長し、その結果、鉄分などのミネラルが少なくコクが減少します。お茶のボディには茎が関係します。茎を除去したお茶にはボディが感じられません。おそらく、お茶のカルシウム代謝において、カルシウムが葉には蓄積しないためと思われます。

日本茶
窒素肥料は茶葉内にアミノ酸として蓄積されます。仕上げ工程で火をいれると、アミノ酸が酸化することで独特の甘い香りを作り出します。これはアミノ酸と糖が反応するメーラード反応という酸化反応が関係していると思われます。また、アミノ酸由来の香りとは別に、現代農業による育て方をしたお茶は煎茶や玉露は海苔のような香りが感じられます。

日本のお茶市場では、このタイプのお茶が殆どを占めております。このタイプのお茶をいれるには、コクのみを引き上げ、ボディは強化しない茶器が好まれる傾向にあります。その理由ですが、ボディを強化した場合、同時に海苔の香りやアミノ酸由来の香が強くなります。しかし、これら独特の香りをあまり好まない人もおります。

そこでボディを抑える機能がある茶器を用いることで、アミノ酸由来の香りや海苔の香りを控えめにします。さらに、もともと弱めだったコクを高めることで、味の透明感を高め、また香りが上品にに感じられます。玉露などはボディが弱い、還元焼成系の茶器でいれると、海苔のような香りが抑えられてとても上品な香りになります。ボディを高めずにコクを増す性質の土としては以下の土がお勧めです。

  1. 古琵琶湖
  2. 野坂酸化・還元
  3. 萬古

 

 

自然栽培系の日本茶

春日の茶園

自然栽培や有機栽培の日本茶の場合、窒素肥料が殆ど使われません。このため、お茶の木の成長は遅くなります。同時に成長に必要な炭水化物を作り出す必要もないために、茶葉は全体に黄色っぽくなります。ゆっくりと成長したお茶にはミネラルとポリフェノールが豊富に含まれます。ポリフェノールが豊富に含まれるため、台湾の烏龍茶を連想するような花の香りがし、海苔やアミノ酸由来の香りは殆どしません。このようなお茶の場合、発酵茶と同じく香りを引き出す特徴のある茶器(土)が向いております。香りを引き出すと言うことは、ボディを高める性質のある土であり、フローラルなお茶の香りが口いっぱいに広がるような性質にすることでお茶の香りがより豊に感じられます。ボディを豊かにする土としては、以下のタイプをお勧めします。

  1. 無名異 酸化・還元
  2. 無名異 上赤
  3. 秋津無名異 酸化・還元・炭化還元
  4. 伊賀
  5. 古琵琶湖
  6. 信楽

以上の考え方はあくまで参考として捉えてください。好みによってはボディが強くなる茶器を普通の日本茶に使っても問題はありません。あらゆるタイプの香りが強くなりますが、それが良いという人もいるでしょう。ただし、還元焼成の土を自然栽培系のお茶に用いた場合、お茶の香りの透明感が増し過ぎる為、個性がやや弱く感じられると思います。自分の好みが良く分からないという場合、また、両タイプのお茶を飲むという人はやや中間的な性質である野坂酸化や信楽土を選択すると無難かもしれません。

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