日本の急須で中国宜興の茶壺レベルの性能がだせなかった理由

[2011.01.14] Written By

yixing teapot

私は30-50年前に宜興で作られた手作りの朱泥茶壺を持っております。未だ文化大革命前に作られた作品なので、作家名はなく「中国宜興」とだけ書かれております。この朱泥茶壺ですが、素人でも分かるレベルでお茶を円やかにします。これほどまでに強烈な効果を目の当たりにしてしまうと、「何故日本にはこれに匹敵する土がないのだろう?」という疑問を持たずにはいられません。

日本の急須もお茶の味をまろやかにする急須はあるし、それぞれに満足が行く性能だと思います。しかし、性能の優れた宜興の朱泥茶壺と比較すると性能に大きな差があることを思い知らされます。

日本の土は中国宜興の土にはかなわないのでしょうか?(尚、私がここで言う中国宜興の土とは、性能の高い朱泥をさしております。日本の急須でも現在宜興の一般的な茶壺より優れた性能のものは多くあります。)私は日本にも大変優れた土があると思います。優れた急須を製作するための制約になっていると思われる2つの問題点を以下に紹介致します。

 

理由その1
日本の急須の場合、金属音がする程度まで焼成するのが一般的です。金属音がする=土の結晶がガラス化をしている=既に大部分が溶けてしまっている訳です。つまり、叩いたときにキーンと高い音のする急須は、土の性能が十分に生かされておりません。先日のブログで陶器を焼く温度との関係は、焼けば焼くほど、表面積が減り、土が水を円やかにする効果は減少するという内容を説明しましたが、その論理が適応されます。
私が所有している宜興の朱泥茶壺の場合、叩くと、低い音がし、土が軟らかい事が即見て取れます。焼成温度が低いために、土には独特の匂いがあります。
一般に日本ではこの匂いが嫌われる傾向にあります。また、低い温度で焼かれているため、茶壺を丁寧に扱わないと直ぐに壊れます。この問題ゆえに、日本では低い温度で急須が焼かれるのはごく希です。
理由その2
日本の急須の殆どが轆轤で作られます。轆轤は回転させることで成形してゆくため、土には粘りと腰が求められます。この問題を解消するため、日本では赤土に粘性の高土が加えられます。この黄土を加えることで、さらさらの朱泥に粘性と腰を付与し、轆轤でひけるようにするのです。
この黄土を加えることには、成形の点ではプラスなのですが、性能の点ではマイナスに作用します。
それには2つの理由があります。
黄泥を混ぜることで、黄泥由来のミネラルと、本来の朱泥に含まれるミネラルが競合(拮抗)し、性能をお互いに相殺します。
例えば、萬古の土と、佐渡の土は相性が悪く、本来どちらの土も良い土なのですが、萬古の急須で淹れたお茶を、佐渡の朱泥の茶碗に入れると、お茶の味はフラットになります。土同士を混ぜた場合にも同様の現象が生じるでしょう。
一方、宜興の場合、轆轤を使いません。宜興では、土を叩き板状にした物を茶器の形に組み立てる技法が用いられます。この技法では、轆轤製法ほどに土に粘りや腰が求められないため、天然の朱泥100%を茶器に使えます。

 

以上2つの理由により、私は日本の土は土自体の性能が低いのではなく、製法が制約となって性能を十分に発揮できていないと考えております。
逆に、これら2つのジレンマを解消すれば宜興に匹敵する優れた性能の急須が作れるかもしれません。

追記:2013年1月:上記2つの問題点を考慮し、佐渡島の金山付近で産出する朱泥を100%用いて野坂急須を開発しました。この急須は私の持っている宜興製の朱泥茶壺を性能面で超えました。

日本茶(緑茶)、中国紅茶、白茶、プーアル熟茶、プーアル生茶、ジャスミン茶、烏龍茶という厳選された茶葉7種のお試しセット

この記事に関連するHOJO Teaの商品


関連記事 RELATED ARTICLES

お茶に関する最新情報を確実にキャッチするには? SOCIAL NETWORK

1,Twitterをフォローする。2,FaceBookで「いいね!」を押す。3,メールマガジンに登録する。という3つの方法で、お茶に関する最新情報をキャッチすることができます。今すぐ下のツイッターフォローボタンや「いいね!」をクリック!

メールマガジン登録で無料サンプルをもらおう!
メールマガジンにご登録いただくと無料のサンプル茶葉のプレゼントや希少商品の先行購入など様々な特典がございます。ソーシャルメディアの購読だけでなく、メールマガジンへのご登録もお忘れなく!

HOJO TEAオンラインショップNEWS一覧を見る

2300mの野放茶園産、高山白茶を発売
高山白茶を発売しました。 このお茶の茶園には、次の2つの特徴があります。 1. 標高2200-2300mに位置する茶園 2. 完全に野生化したお茶の木で構成される野放茶園 非常に理想的な環境ゆえに、お茶の品質も素晴らしく …
標高2100mの無農薬・無肥料茶園産の高山紫茶2024
2024年産の高山紫茶を2種類発売しました。 https://hojotea.com/item/d53.htm 2種類とも、同じ生産者が同じ地域内に保有する茶園の茶葉ですが、茶園の位置が異なり、また、生産日も異なります。 …

最新の記事 NEW ARTICLES

2300mの野放茶園産、高山白茶を発売
高山白茶を発売しました。 このお茶の茶園には、次の2つの特徴があります。 1. 標高2200-2300mに位置する茶園 2. 完全に野生化したお茶の木で構成される野放茶園 非常に理想的な環境ゆえに、お茶の品質も素晴らしく …
標高2100mの無農薬・無肥料茶園産の高山紫茶2024
2024年産の高山紫茶を2種類発売しました。 https://hojotea.com/item/d53.htm 2種類とも、同じ生産者が同じ地域内に保有する茶園の茶葉ですが、茶園の位置が異なり、また、生産日も異なります。 …
大雪山野生茶(普洱生茶)2024の散茶を限定発売
大雪山野生茶は、雲南省臨滄市永徳県の大雪山に自生する野生のカメリアタリエンシスから作られたプーアル生茶です。 野生茶とは 野生茶とは、樹齢が高いお茶や野生化したお茶ではなく、山に自生している天然のお茶を指します。 過去に …
鳳凰単叢烏龍茶の産地、潮州市鳳凰鎮を訪問(2024)
先月、鳳凰単叢烏龍茶の産地である潮州市鳳凰鎮へ、仕入れと生産者との打ち合わせを兼ねて出張しました。ちょうど台風の時期と重なり、山から潮州に戻れなくなるなどのハプニングもありましたが、無事に仕入れを終えました。鳳凰鎮にはこ …
前川淳蔵作の伊賀天然朱泥急須、宝瓶各種入荷
前川淳蔵作の伊賀天然朱泥の茶器が入荷しました。 今回入荷したのは、丸型宝瓶、急須、絞り出し、茶海です。 https://hojotea.com/item/maekawa_iga.htm 数百年前に古琵琶湖の湖底に沈殿した …
佐渡島:渡辺陶三作、無名異上赤茶壺と宝瓶が入荷
渡辺陶三氏作の無名異常赤急須および宝瓶が入荷しました。今回の入荷品は、後手タイプが中心です。 https://hojotea.com/item/tozo_joaka.htm 非常に稀少な上赤 「上赤」は、佐渡島の相川金山 …
非常に稀少な野生茶、永徳野生白茶2024を発売
永徳野生白茶を発売しました。このお茶は2021年に一度発売されましたが、瞬く間に売り切れ、その後の入荷はありませんでした。質が高く、個性的な香りで当店でも非常に人気の高いお茶です。 永徳野生茶は、雲南省臨滄市永徳県で、牛 …
2024年産の古樹白茶を発売: 雲南省にて生産監修することで品質向上
2024年産の古樹白茶を発売しました。 今年は、私たちが自ら現地に滞在し、茶葉の選定から生産に至るまで現場で監修したことで、自信のある仕上がりになっております。 https://hojotea.com/item/w25. …
単株茶を含む2022年産の鳳凰単叢老欉を3種類発売
単株を含む、鳳凰単叢の老欉を3種発売しました。今回発売したお茶は以下の三種類です。何れも標高1200mの茶園産の茶葉原料から作られており、濃厚な香りと深い後味がする素晴らしいお茶です。 鳳凰単叢老欉夜来香 2022 鳳凰 …
東洞庭山産、無農薬無肥料の碧螺春を発売
碧螺春(Biluochun)は中国を代表する緑茶の一つで、その優れた品質と独特の風味で有名です。HOJOでは、無肥料無農薬栽培による、余韻の長い碧螺春をお届けします。 https://hojotea.com/item/g …

PAGETOP