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お茶の品質を評価する3つのポイント
- [2015.02.05] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
お茶の品質を語る際、私は「原料品質」と「加工品質」「保存品質」という3つの言葉を使って説明します。
原料品質の評価
原料品質とは素材の質を示しております。例えば、天然のブリと養殖のブリ、渓流で採れた三つ葉とハウス栽培の三つ葉、露地栽培の野菜と水耕栽培の野菜、これらは明らかに品質が異なります。
頭では品質が異なると分かっていても、果たしてどれだけの人がその違いを見極められるでしょうか?
魚にしても野菜にしても、そのままの状態で出てくれば、比較はしやすいでしょうが、料理として出されると調理法に影響されて、素材の見極めができないことが多々あります。実際、コツさえ掴んでしまえば、調理されていたとしても、素材の善し悪しを判断することが出来ます。
この判断指標を私は「コク」と呼びます。コクとは、軟らかさ、透明感、喉越し、奥行きなどの言葉でも言い換えることができます。私は以前に行った実験により、食材に含まれるミネラルがコクに影響していると考えております。
https://hojotea.com/jp/posts-737/
野生や健康的な環境で育った魚や野菜の場合、成長が非常に遅く、同時に個々の細胞が小さく、細胞密度が高くなります。それに伴い鉄分を初めとするミネラル分が豊富に含まれ、それらが、コクの深さに反映します。
例えば、天然のブリと養殖のブリを比べた場合、養殖のブリの方が脂肪はしっかりと乗っております。天然のブリは口当たりの点でさっぱりとしておりますが、食べたときに味にコク(深さ)が感じられ、余韻が強く、別の言い方をすると、味が濃く感じられます。
野生のエノキダケと栽培物のエノキダケを比較した場合、まず香りの濃さが全く違います。天然のエノキダケは、非常に濃い香りがしますが、栽培物は香りが軽く感じられます。食べてみると、天然のエノキダケは、コクがあり、甘味が感じられます。ここで言う、甘みとは、糖による甘みではなく、素材にコクがあったときに喉の奥で感じられる甘みです。
このように、より時間をかけ、より自然に近い状態で育った食材はコクという指標にそれを感じ取ることができます。お茶についても同様で、自然栽培茶や肥料を抑えて作ったお茶については強いコクが感じられます。コクの強さは、素材の本質を表しており、お茶の加工法の違い・優劣によってコクの強さが変わることはありません。例えば、同じ原料茶葉であれば、それを紅茶に加工しても、緑茶に加工しても、プーアル茶に加工しても、それぞれのお茶で全く同じ強さのコクを感じ取ることができます。お茶の製茶過程でミスがあったとしても、それは香りへは影響しますが、コクの強さには反映されません。このことは、先ほど紹介した実験でも分かるとおり、仮に茶葉を火で燃やし、炭にしてしまっても、燃やす前と後で同じレベルのコクが感じられます。コクは素材の善し悪しを読み取る唯一の方法であり、お茶に限らず、お酒、ワイン、香辛料など、あらゆる素材の潜在的な品質を評価する基本となります。
加工品質
次に加工品質ですが、これは料理に例えるならば、「料理の腕」「料理の技術」に相当します。素材の善し悪しとは関係無く、素材を加工する技術をさします。香りと味に含まれるノイズを検知します。
私は、加工品質はより厳密には3つに分けて評価を行います。
- 製茶前の茶葉の取り扱い
- 製茶
- 仕上げ
製茶前の茶葉の取り扱い
茶摘み→製茶工場の間の取り扱いを評価します。お茶が摘まれ、製茶上に届く前の茶葉の取り扱いが乱暴な場合、お茶の葉は酸化により褐変します。いったん変色したお茶は、その後、殺青しても、揉んでも、茶色のままとなります。香りにも影響するため、好ましくありません。
製茶
個性的な香りを引きだせているかどうかというプラスのポイントと、製茶過程でミスがなかったかというマイナスのポイントを評価します。
ただ、香りの種類については好みの問題でもあるため、品質と言うより、売れるか売れないかの判断指標と言った方が適切かもしれません。
重要なのは製茶過程でのミスを見極める事で、私は減点方式で採点します。殺青、萎凋、発酵などをそれぞれの工程に由来する問題を精査します。お茶の加工の場合、殆どの問題は、茶葉間の水分分布、茶葉内の水分分布が均一に管理できていないことに由来する問題が多いと感じております。
仕上げ
仕上げというのは、お茶を取り扱う上で非常に重要な工程です。一度完成したお茶を暫く置くことで、水分を均一にし、その後、高すぎない温度の熱を加えることで、お茶の渋味を無くし、また、お茶をクリアーな味わいへと変えます。この工程がないと、雑味や渋味が感じられます。
保存品質
お茶を評価するもう一つの指標は、「保存」になります。お茶は保存すれば酸化します。ただし、酸化にも色んなタイプの酸化があり、酸素のあるところで酸化した場合、水分の高い状況下で酸化した場合、水分も酸素もない環境で酸化した場合とでは、全く異なる結果になります。お茶の場合、輸送中の急激な温度変化で、表面に水分が凝集して茶葉が激しく酸化することがあります。逆に、水分を低く、酸素を完全に除去した状態で保存するとお茶はフルーツのような甘い香りへと変化します。酸化して傷むか、熟成してより魅力的な香りを生み出すかは保存の仕方次第です。熟成というと、プーアル茶をイメージする人が多いかと思いますが、お茶などんな種類のお茶でも熟成を楽しむことができます。例えば、日本茶でも無酸素で長期間保存した場合、栗や桃を連想するような甘い香りを生成します。
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