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玉露といえば、日本では京都宇治、静岡岡部、福岡八女の3つの産地がよく知られております。これらの地域は何れも丘陵地帯ではあるものの、標高は概して高くありません。
本山蛇塚玉露は上記3つの産地には何れも該当しません。お茶業界でも極めて珍しい静岡本山の玉露です。
本山蛇塚玉露の産地である、「本山」は安倍川流域一帯に位置する茶園で採れたお茶を示します。高級煎茶の産地であり、徳川家康御用達の将軍茶としても知られる名門の茶産地ゆえ、普通に煎茶を作っていても最高品質のお茶が出来ます。
更に、蛇塚は本山茶の産地の中でも800mと、極めて高い標高に位置します。標高が高いということは、冬が早くに訪れ、春が遅くに到来します。つまり、普通のお茶生産地と比べると、冬の期間が2ヶ月ほど長く、その分、休眠期が余分にあることから、茶葉に含まれるミネラルの量が劇的に増し、喉越しがとても強い素晴らしい品質のお茶が出来ます。
超高品質の煎茶を生み出すには絶好の極めて恵まれた立地条件にもかかわらず、あえて玉露が作られているという点が極めて面白く、生産者はよほど玉露の品質に自信があると推察されます。
本山蛇塚玉露の魅力はそれだけではありません。
まず、蛇塚の玉露はとても驚くべき手法により作られます。
何と日本茶には珍しい萎凋工程が意図的に行われております。
茶葉は通常の玉露の収穫を行うよりも気持ち大きくなるまで成長させた後に、茶摘みが行われます。やや大きめに生育することで、意図的に茶葉内のポリフェノール量を増やします。この考え方は烏龍茶の茶摘みと同じです。ある意味、あまり若すぎる状態で摘み取られた茶葉は有機化合物量の不足から、フレーバーが弱くなりがちです。
意図的にポリフェノール量を高めてから収穫された茶葉は、緑茶(しかも、玉露)にもかかわらず、萎凋を行います。
萎凋と言えば、烏龍茶、白茶、紅茶作りの代名詞のような工程です。24時間風邪通しの良い日陰で萎れさせることで、茶葉自身の持つ酵素による熟成を進め、花のような甘い香りを茶葉内部から一気に引き出します。
玉露の持つ従来の海苔のような香りに加え、フローラルな花の香りと、奥の深い喉越しが相まった、本山蛇塚玉露はこれまでにない、優れた特徴を有し、海外の銘茶にも引けを取らない品質です。
安倍川は日本でも有数の急流・清流であり、その流域には、急斜地が多く点在します。ここでは霧が多く発生し、平地と比較して日照時間も少ないため、また、静岡に点在する茶園の中でも相対的に標高が高いことから、上質なお茶を作る条件が揃っています。
「茶説集成」によれば、鎌倉時代、自生茶が安倍川流域に生育していたという記録があり、元々、この安倍川流域がお茶の生育に適した土地であったと思われます。
本山茶の起源は、「国師の駿河足窪(現 足久保)の茶植え(東福寺誌)」とあるように、鎌倉時代の聖一国師(安倍川支流の藁科川にある栃沢出身の禅僧)が、寛元二年( 1244年)、上野国の長楽寺を訪ねた後、故郷の栃沢に帰り、その際、山を隔てた足窪村に宋より持ち帰ったお茶の種を播いたとこの地では伝えられています。日本茶の祖と呼ばれる栄西が「喫茶養生記」を書き上げたのが 1211年のことですから、まさに日本茶の黎明と時同じくして、本山茶が始まったと言えます。
これ以降、様々な書物に茶の産地として、駿河国の記述が出てきます。そして、本山茶の地位を高めたのが、かの徳川家康です。家康は茶会に用いるお茶の品質保持のため、安倍川上流の大日峠に茶蔵を建設し、多数の茶壺を保存したそうです。以後、本山茶を江戸城への御用茶として献上したという記録が残っています。
本山茶の名付け親は、藁科川の清沢村(現在の清沢相俣)出身の「築地光太郎」。明治時代にお茶の輸出が盛んになり、日本各地でお茶が生産される中、自分の故郷の伝統あるお茶を他の産地と区別するために「本山茶(本家本元の茶)」と命名しました。
現在、静岡県はお茶の生産量日本一をほこり、安倍川のほとりの静岡市茶町は、お茶の集積場として、日本全国のお茶が集まります。そのお膝元で生産される本山茶は、絶えず厳しい目で選別され、上質な茶を提供しています。
本山の中でも特に標高が高く良質の原料茶葉が生産される蛇塚には、合計すると10件ほどの民家があります。但し、茶を作っているのは数家族しかおりません。もちろん、玉露を生産しているのは中村氏のみであり、蛇塚における玉露の生産技術は中村氏の父の代から始まったといわれております。同じ県内の岡部にて玉露の生産技術を学んだ中村氏の父が、蛇塚の高い標高を生かし、中村家独自の品質を生み出したのです。更に現在の中村氏の代になり、より洗練され、他では決して味わうことの出来ない花の香りが仄かにする不思議な玉露が作られるようになったのです。
静岡県静岡市から南アルプスを正面に、梅ヶ島に向かって北上すると安倍川や藁科川に出会います。 これらの地域から、南アルプスの裾のまでの山間の地域を包括して本山と称します。 つまり、一般に本山茶といえば、静岡県の北部、南アルプスの裾野付近で採れた山間のお茶を指します。 この中でも蛇塚は更に奥地の山間に位置し、静岡市の中心地からは車でも1時間以上要します。 蛇塚呼ばれる地域はその名の通り、高地に位置しており、その標高は約800mと、日本におけるお茶の生育限界に限り無く近い高度に茶園があります。
標高が高いために、早い時期に冬が訪れ、春が来るのも他の地域よりも1ヶ月ほど遅く、実質冬の期間が他地域よりも2ヶ月ほど長いのが特徴です。
日本におけるお茶市場はやや極端な面があり、出荷時期が早いほど相対的に高い値段が付く傾向にあります。
つまり、お茶の時期が始まる4月の中旬頃に収穫されたお茶は有無をいわさず高級茶として取引されます。
但し、重要な点としては、標高が低い茶園ほど春が来るのが早いということです。
春の到来が早いということは、つまり冬の期間が短いことを意味しており、お茶の品質としてはあまり良くありません。
短い冬の期間がどの様な点に反映するかというと、飲んだときに喉の奥にて感じられる後味の強度が、高山にて遅い時期に収穫された一番茶と、低地で早い時期に収穫された一番茶とでは大きく異なります。
蛇塚のお茶の場合、茶園が極端に高地に位置しているために、一番茶の収穫が始まるのは5月の中旬と、一般的な静岡茶よりも収穫時期が1ヶ月も遅く、市場に出した場合、品質とは裏腹に極めて安い値段が付くことを避けられません。
このジレンマを解消すべく、生産者の中村氏は蛇塚の優れた環境を生かし、煎茶だけでなく玉露を作り、その圧倒的な個性と品質を理解するお茶会社に対してのみ直接商売をする事で、蛇塚の名を世に紹介しているのです。
実は「蛇塚」にはもう一つの特徴があります。
蛇塚=蛇の墓と呼ばれるだけの事はあり、この地域は岩だらけで、茶園には多くの岩が転がっております。
この地域をしめる岩は、花崗岩系の岩ではなく、宜興、佐渡、伊賀の如く、紫砂(紫や赤)岩を中心に構成されており、その色合いから鉄分が主要ミネラル成分であることが分かります。
極めて鉄分が多く、肥料が限られた蛇塚の地質は、お茶に生育を遅くすると同時に、ミネラル分の吸収を促進し、極めて良質なお茶を生み出す母体となっております。
本山蛇塚玉露は「藪北」という品種を使用して作られます。5月の上旬に一番茶のみが全て手摘みにより収穫され、2番茶は収穫しません。
茶葉は朝露を避けるために、日が昇った後に摘み取られます。
朝露による水分が混入した場合、蒸し工程中に朝露の部分だけが熱水になることから、茶葉の細胞組織が過度に破壊され、良質の煎茶を作ることが出来ません。従って、上質の煎茶は晴れた日に収穫された茶葉から作られます。
本山蛇塚玉露の場合、通常の煎茶の収穫基準と比べると、葉がやや大きくなるまで意図的に待ってから茶摘みが行われます。これは後に控える本山蛇塚煎茶特有の萎凋工程のためであり、茶葉が成長することで、より多くのポリフェノールを作りだし、それが萎凋により花のようなフレーバーを生み出すことを目的としております。
尚、通常の玉露と同じく、茶園は被覆により覆われております。茶園には限られた量の日の光しか届かないため、茶葉はその表面積を大きくし、また、より多くの葉緑素を作り出すことで、少ない日射量でも効率的に光合成が行えるように環境に適応した形へと変異します。
以下、詳細です>>
玉露の栽培では、摘採の数十日前になると、茶園をよしず又は黒いシートで覆います。遮光率は初期の7-10日間は65-70%、それ以後は97-98%です。
実は葉が日光を吸収することで、テアニン(アミノ酸)の一部が分解され、カテキンへと生合成されます。従って、遮光をすることで、カテキンの合成が一部阻害されテアニンの含有量は相対的に高まります。つまり、玉露特有の円やかな味は遮光により形成されます。
テアニンは緑茶の「旨味」を呈する成分です。テアニンの相対量が高いお茶は円やかになり、逆にカテキン等のポリフェノールの相対量の高いお茶は渋みや苦みを呈するお茶となります。
また、玉露に特有の青海苔様の香りの主成分は、ジメチルスルフィドという物質ですが、このジメチルスルフィドの前駆物質であるメチルメチオニンスルフォニウムも遮光することで茶葉に蓄積します。そして、その後の玉露の製造工程で加わる熱によって、分解し、ジメチルスルフィドを生成します。
そして、玉露に特徴的な深い緑色ですが、茶園が被覆されることにより、茶葉は十分な光が吸収できなくなります。その結果、茶葉は表面積を拡大し、通常よりも更に多い量の葉緑素を作り出すことで、光合成を行おうとします。このため、玉露の葉は深い緑色へと変化していきます。
基本的に個人茶園ですゆえ、奥様を中心に近所の知り合いの手を借りることで茶摘みが行われます。収穫された茶葉は自宅兼工場へと搬送され、中村氏の手により作業が進められます。
茶葉は竹製の笊に広げられ、風邪通しが良く湿度のない例暗所にて24時間放置されます。これが蛇塚のお茶の特徴でもある、萎凋工程です。萎凋工程を行うことで、茶葉は徐々に酵素反応を促進し、果物が追熟するのと同じように、甘い香りを作り出します。
玉露用の生葉は、水分が多く、茶葉が非常に繊細故、蒸しは煎茶より短い時間(約20秒)となっています。
高温の蒸気を短時間で万遍なく与える事で、茶葉はさらっとした感じに仕上がり、結露水により濡れることがありません。
高温の飽和蒸気を短時間で万遍なく与える事で、茶葉はさらっとした感じに仕上がり、結露水により濡れることがありません。これが美味しいお茶を作る上での重要なポイントです。
蒸すことで熱を持った茶葉を、冷却し同時に茶葉に含まれる水分を飛ばします。敏速に湿熱を除去することで、二次的な熱劣化を防ぎます。
熱風中で茶葉を攪拌することで能率よく乾燥し、揉みながら茶葉に形をつけていきます。
唯一熱を用いない工程です。茶葉に荷重を加えながら円形運動をし、茶葉の水分を均一に分散させます。茶葉を揉むことで摩擦熱が発生するため、定期的に茶葉をもみほぐすことで、熱を発散させます。
回転式の乾燥機を用い、茶葉を軽く揉みながら乾燥を進め、水分を均一にしつつ、茶葉をよりながら細かくしていきます。
直線的な前後の動きと円を描く様な横の動きにより煎茶特有の針のような、「より」を作り上げます。一本一本が黒光りし、硬く良くしまっていることが重要です。
精揉を終えた茶葉はまだ水分を含んでいるため、乾燥することで水分を5%程度まで落とします。こうして乾燥が終わった茶を「荒茶」と呼びます。
荒茶は仕上げの「火入れ」が行われていないため、仕上げ茶と比べると生の葉の香りと苦みが強いのが特徴です。
本山蛇塚煎茶の場合、新鮮な花のような香りを大切にするため、HOJOではあえて弱火にて加工しております。このため、最近の煎茶に多い、火香が殆ど無く、お茶の素材が作り出す新鮮な香りを堪能することが出来ます。
各製茶会社は通常荒茶を原料茶葉として購入し、この荒茶を各社独自の方法で火を入れることで、オリジナルの香り・味に仕上げます。こうして出来上がったオリジナルの火入れ茶を複数ブレンドすることにより、製茶会社オリジナルの「仕上げ茶」が完成するわけです。
HOJOの本山茶・本山蛇塚煎茶の場合、茶園独自の伝統的な味香りを重視するため、ブレンドは一切行っておりません。
玉露の味は、深い旨味と甘みが特徴です。トロリとした濃厚感があり、口の中でまろやかなコク味が残ります。伝統的ないれかたの場合煎茶とは淹れ方が違うので注意が必要です。
水道水を使用される場合は、消毒用の塩素を取り除くため3~5分沸騰させてください。但し、例え沸騰しても塩素を完全に除去することは出来ません。可能な限り、浄水器を用い、水中の塩素を除去してください。そうしないと、お茶の香り成分と塩素が共に反応し合い、本来の香りが楽しめません。市販されている水を使用する場合は、硬水よりも軟水が適しています。硬水ですと、味が淡白になったり、白く濁ったりしてしまいます。
通常、40mlの湯に対し1gの茶葉を用います。つまり、200mlの湯が入る急須の場合、200÷40=5gとなります。同様に300mlの場合8gの茶葉を用いてください。本格的な作法に基づくと、玉露の場合、濃い目に入れることで、青のりのような旨味を楽しみますが、実際は、やや薄めにいれた方が癖が無く、毎日飲み続けても飽きません。その場合、茶葉と湯の比率を1対50にしてください。つまり、煎茶を入れる場合と同じです。
伝統的ないれかたの場合、通常より多めの茶葉(水の容積÷40=茶葉の重量)を50℃くらいまで温度を下げ、2分くらいかけてじっくりと侵出します。このいれかたの場合、まったりとしていて、お茶と言うよりスープというか、宇宙食のような味です。
侵出時間の基本は、温度が高いほど短く、逆に温度が低いほど長く浸す事です。
1煎目をいれ終わった後は、必ず蓋を取ってください。蓋を置いたままの状態ですと、茶葉が余熱で煮えてしまい、2煎目以降茶葉が急激に酸化します。酸化した茶葉は、黄色っぽく変色し、味も香りも落ちます。茶器内に湯を残さないように注ぎきり、蓋を外しておくことで、出来るだけ早く茶葉を冷却する効果があります。茶器内に湯を残したままにしておくと、2煎目以降の味が台無しになりますので、面倒でも毎回注ぎきるようにしてください。
日本茶をいれる際に一番難しいのが2煎目です。2煎目の時間管理を誤った場合、お茶を楽しむことの出来る回数が激減します。2煎目の侵出時間は数秒以内としてください。数秒では味が出ないのでは?と心配されるお客様がおられますが、湯を含んだ2戦目の茶葉からは即味が出ます。
3煎目は10秒、それ以降は10秒ずつ侵出時間を増やしてください。つまり、4煎目の侵出時間は20秒、5煎目は30秒となります。
味を均一にするためそれぞれの茶碗に少しずつ数回に分けて注ぎます。これを廻し注ぎといいます。また、急須にお湯を残さないよう最後の一滴まで注いでください。これは、旨味のあるお茶を最後まで注ぐという目的と二煎目を美味しくするためという目的があります。また、注ぎ終わったら急須の蓋を開けて、お茶が蒸れることを防止しましょう。
水で淹れた玉露は、玉露のイメージとはかけ離れた爽やかな味わいと、甘く、円やかな喉越しが特徴です。 以下、水出し玉露を作るメリットです。
茶葉は5-8g(お好みに応じて調整してください。)に対し、1リットルの水を準備してください。水の水質には気を遣いましょう。浄水器を通していない水道水の場合塩素が入っており、体にも悪いし、お茶の味を破壊します。必ず、塩素がないことを確認しましょう。
水を先に入れてから、次に茶葉を投入します。30分から1時間おけばできあがり。飲みきってしまったら、再び水を足してください。簡単で美味しく飲めるのが水出し茶の特徴です。
この方法の場合、お茶を淹れる時間が数秒と短いために、茶葉が殆ど劣化せず、何煎も淹れ続けても鮮度の高い香りを楽しんで頂く事が出来ます。
常温にて保管されることをお薦めいたします。
お茶は湿度に弱く、水分を少しでも吸収した場合、即劣化が開始されます。
水分は以下のような状況で意図せず吸収されますのでご注意ください。
実際、茶葉が劣化する最大の原因は4と5のようです。
冷蔵庫に保管した場合、袋の内部は冷えており、テープなどでしっかりとシールしていても、かなりの率で外気が中に進入し、結露を起こします。茶葉を結露してしまった場合、2-3日で香りが劇的に変化します。
出来る限り、常温で保管し、しっかりと乾燥した部屋でシールをすることで湿度を避けて保管してください。開封したら数ヶ月内に消費してしまうのが理想です。
未開封で真空包装されている商品につきましては、1年以上の保管が可能です。更に熟成を進めたい場合、常温にて、未開封のまま(真空包装のまま)保管してください。尚、購入直後のままの品質を維持されたい方は冷蔵庫にて保管してください。冷蔵庫に保管された場合は、必ず、24時間かけ常温に戻してから開封するようにしてください。半日もおけば大丈夫と思われがちですが、茶葉は大変表面積が大きく、天然の断熱材と言っても過言ではありません。手で触ってみると、既に常温に戻っているように感じられますが、内部は冷えており、十分に温度を常温に戻すには24時間必要です。尚、一端冷蔵庫からだし、開封された後は、常温にて保管してください。秋~春は外気の温度が低いため、常温保存をしても数ヶ月以上美味しい状態を維持することが出来ます。
市販の商品で、真空状態を作り出すことの出来るタッパーがございます。普及品ではありませんが、お茶の保存には最適ですので、それらの特殊容器を求められるのも良いかと思います。
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