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急須の使い始めに下処理は必要?
- [2016.02.04] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
新規に急須を購入した際、使い始める前に何か特別な処理をする必要があるのでしょうか?
土に不快な臭いがある場合
新しい急須の場合、土が臭う場合があります。これは中国宜興の茶壺(後手の急須のこと)においてよく問題となります。主な原因の1つは急須が低い温度で焼成されていることです。低い温度で焼成された場合、無機性の様々な物質が揮発せずに残っており、新品の急須でも匂いが非常に気になることがあります。急須によっては、お茶をいれると、お茶が土や墨汁のような臭いになる場合もあり、香りに敏感な人は直ぐに気がつきます。一般的に焼成温度が高くなるほど、土の収縮率も大きくなり、焼成中に製品が割れる可能性が増します。低温焼成をする中国の生産者の場合、土の性能を意識してと言うよりも、歩留まりを上げるために敢えて低温で焼成していると言われております。日本の急須の場合、一般的に1100℃以上、多くは1150℃以上で焼かれることが多く、不快臭がする土はほとんど見かけません。
焼成温度が低くいために臭いがある場合、どのような方法でも除去できない
このように不快臭がする土の場合、そのままではお茶の香りに影響があるため、人によって様々な方法にて処理を行います。例えば、ショウガといっしょに煮込む、お茶の葉を湯と共に漬け込み毎日新しい茶葉と交換する、お茶の葉と一緒に煮込む等々、人それぞれの方法があります。ただし、これらの方法を行ったとしても、臭いの原因そのものがブロックできるわけではなく、乱暴な例えをするなら、臭い物に消臭スプレーをかけているのと同じです。時々、お客さんが、既に何十年も使われた茶壺を持ってきて「評価して欲しい」と店に茶壺を置いて行かれるときがありますが、中が茶渋で真っ黒になっているような茶壺であっても、同じように例の不快臭がします。私も色んな方法で、不快臭がブロックできるかどうか試しましたが、どのような処理をしたとしても、暫く時間をおくと、再び臭いが元に戻ります。臭いがすると言うことは、実際に物質が溶出しているわけでもあり、体への害も懸念されます。陶器の急須の場合、窯の臭いを吸着した結果、多少の臭いがすることはありますが、あまり臭いが強い商品はお勧めしません。
急須でいれると多少の雑味が感じられる場合
天然の土の場合、天然土ゆえに、味に多少の雑味呈する場合があります。例えば、その急須でお茶をいれるとお茶の味がまろやかになるものの、同時に舌に感じられる渋味が気になる場合があります。
このような雑味は、土によって差はありますが、天然土である限り、ある程度は感じられるものです。雑味の原因には、土に含まれる様々な種類のミネラルが関係しております。この問題への対処方法として、特定の水でお茶をいれ続けていると、水由来のミネラルが急須表面に徐々に沈積し、その効果によって、雑味が薄れてきます。特に同じお茶をいれ続けていれば、水に加え、お茶由来のミネラルも付着することから、雑味が緩和され、滑らかな舌触りへと徐々に変化します。以前、ある実験を行ったことがあります。新しくおろした急須に毎日水を注ぎ入れ→乾燥を毎日繰り返しました。店にいる会社のスタッフにお願いして、毎日必ず水を入れ続け、一ヶ月後に未処理の急須と味を比較してみました。結果は非常に顕著でした。水を入れ続けた急須は、雑味が緩和され、また、余韻の深さについても新品よりも深くなっておりました。水を入れ続けただけでも、土は馴染むものなのです。ただし、お茶をいれる水と、急須を洗浄する水は必ず同じ水をご使用ください。
良い急須であれば特別な下処理は不要
結論としては、急須を新たにおろす場合、私は特に特別な処置をする必要は感じておりません。重要なのは内部を十分に洗浄し、砂や埃を除去することです。
土が仄かに臭う場合、それは窯の臭いの場合もあります。その様な場合、茶殻をいれた状態にて、湯を注ぎ、一晩おくのを数回繰り返すことで、窯由来の臭いはほぼ気にならなくなります。
仮に雑味が感じられる場合、前述したような水や茶葉のミネラルを陶器に付着させる為の処置をすると良いと思います。私自信はというと、特に特別な処置をしなくても、使用しながら徐々に慣らすようにしており、それで特に不便を感じたことがありません。ただし、低温焼成された茶器は選びません。
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