お茶に対する日本の農薬基準

[2006.05.22] Written By

5月29日より新しい農薬基準が施行されます。それは通称ポジティブリスト制と呼ばれ、私も含め、農家を含め、食品の生産加工や輸入に従事している人は心穏やかではありません。と言うのも、この法律の施行により、従来とは比較にならないほど、農薬管理基準が厳しくなるのです。
これまで中国茶は希少性や品質等の付加価値さえあれば、自由に輸入が行われておりました。それは中国茶に限らず、ありとあらゆるジャンルの食品について同様でした。ところが、今回のポジティブリスト制の施行により、全ての輸入食品が検査の対象となり、基準を満たしていない食品は輸入が出来ないし、また、店頭の商品さえも抜き取り検査の対象となります。(国産の野菜果物も同様にポジティブリスト制の対象となります。)
これまでの法律から何が変わるかというと、主な変更点としては、

A 従来

指定された農薬に関し、検出レベルが基準値以下で有れば良かった。リストにない農薬に関しては何も規定が存在しなかった。

B ポジティブリスト施行後

①既存の基準値そのものが見直され、ヨーロッパ(CODEX)並みか、それ以上に厳しい基準が再制定された。
②加え、基準値の無い農薬に関しても、種類に関係なく、一律基準(0.01ppm)以下でなければならなくなった。これにより実質的にどのような種類の農薬も管理の対象となる。

この法律に対応するため、各国の輸出業者は対策に追われており、お茶業者も例外ではありません。但し、問題なのは業者の多くが十分な知識を持たず、「ヨーロッパにも輸出しているから大丈夫」という言い方をしてくる事です。確かにヨーロッパ基準も相当に厳しいですが、ポジティブリスト制はそれを上回る厳しさであり、独自の対応が必要になります。
この新基準に対応するためには、サンプルに基づく最終製品の検査だけでは十分ではありません。お茶は液体ではないため、サンプル間のバラツキが生じやすく、検査を行ったサンプルが良好な結果を示しても、それを完全に信頼することは出来ません。しかも、検査対象農薬が多すぎ抜き取り検査では対応しきれないのも現実です。
論理的には、各農園毎に何時、どのような農薬を、どれだけの量使用したかデータ管理が出来て初めて信頼することが出来ます。(トレーサビリティ)これらのハードルを越えられるお茶業者は多くなく、特に烏龍茶に関しては、激戦が強いられそうです。
近年、これら法律に対応するため多くの農園が有機茶の生産を開始しております。但し、現状の有機茶は有機栽培を優先しすぎるが余り概して質が悪く、高いお金を出す価値がありません。中国でもインドでも有機茶と言うだけで、質に関係なく飛ぶように売れている為、品質が蔑ろにされているそうです。私としては安全性だけでなく、それに加え「美味しい」と思えるお茶を販売することが絶対に必要と考えており、有機茶=良いとは考えておりません。(美味しい有機茶が有れば別ですが。)

追記

この記事を書いた2006年当時は日本の農薬基準が世界で一番厳しい基準と言われておりましたが、2016年現在は、台湾やヨーロッパの規準の方が日本よりも厳しい内容となっております。

日本茶(緑茶)、中国紅茶、白茶、プーアル熟茶、プーアル生茶、ジャスミン茶、烏龍茶という厳選された茶葉7種のお試しセット

関連記事 RELATED ARTICLES

お茶に関する最新情報を確実にキャッチするには? SOCIAL NETWORK

1,Twitterをフォローする。2,FaceBookで「いいね!」を押す。3,メールマガジンに登録する。という3つの方法で、お茶に関する最新情報をキャッチすることができます。今すぐ下のツイッターフォローボタンや「いいね!」をクリック!

メールマガジン登録で無料サンプルをもらおう!
メールマガジンにご登録いただくと無料のサンプル茶葉のプレゼントや希少商品の先行購入など様々な特典がございます。ソーシャルメディアの購読だけでなく、メールマガジンへのご登録もお忘れなく!

HOJO TEAオンラインショップNEWS一覧を見る

地元でも非常に入手が困難な2つの高級鳳凰単叢を発売
非常に高級な鳳凰単叢を2種発売しました。 今回発売のお茶は、鳳凰単叢老欉八仙王2022と鳳凰単叢老欉郁金香 単株2022です。 https://hojotea.com/item/houou.htm 鳳凰単叢老欉八仙王20 …
初の伊賀天然朱泥急須入荷、宝瓶と絞り出しも再入荷
伊賀天然朱泥急須、宝瓶、絞り出し、前川淳蔵氏による作品が発表されました。これまで多くのお客様から伊賀天然朱泥急須の制作についてのリクエストをいただいており、ついに実現することが出来ました。 https://hojotea …

最新の記事 NEW ARTICLES

お茶に適した水を考える:水の硬度とミネラル組成とお茶の味香りの関係
お茶を淹れるのに適した水について考えてみましょう。一般的には「軟水が好ましい」とされていますが、本当にそうなのでしょうか? 硬度以外にもある、水を選ぶ上での重要な注意点も併せて紹介したいと思います。 水の硬度とは 水の硬 …
5つの異なる茶園からなる古樹白茶特別限定セットを発売
HOJOの店舗でも非常に人気の古樹白茶ですが、今年の春も生産しました。その後、香りを更に高める為に、無酸素にて数ヶ月寝かしたことで、期待通りの香りへと熟成が進み、いつでも発売できる状態に仕上がりました。 古樹白茶は、1日 …
地元でも非常に入手が困難な2つの高級鳳凰単叢を発売
非常に高級な鳳凰単叢を2種発売しました。 今回発売のお茶は、鳳凰単叢老欉八仙王2022と鳳凰単叢老欉郁金香 単株2022です。 https://hojotea.com/item/houou.htm 鳳凰単叢老欉八仙王20 …
初の伊賀天然朱泥急須入荷、宝瓶と絞り出しも再入荷
伊賀天然朱泥急須、宝瓶、絞り出し、前川淳蔵氏による作品が発表されました。これまで多くのお客様から伊賀天然朱泥急須の制作についてのリクエストをいただいており、ついに実現することが出来ました。 https://hojotea …
自然栽培の老木から作られたプーアル茶、烏木龍古樹生茶2021を発売
烏木龍古樹生茶2021を発売しました。 このお茶は生産後マレーシアで2年間無酸素保存することで、熟成が進み、甘い香りへと成長しました。 昔ながらの農業が行われている烏木龍村 烏木龍は、永德県に位置する村の名です。この村は …
2023年産の大雪山野生白茶を発売!
2023年産の大雪山野生白茶を発売しました。 https://hojotea.com/item/w11.htm 特注だから出来る鮮やかな緑色の茶葉 大雪山の野生白茶は、野生のカメリアタリエンシスから生産される希少な白茶で …
2022年産の鳳凰単叢蜜桃香と老欉獅頭黄枝香を発売
2022年産の鳳凰単叢烏龍茶を2種発売しました。 今回発売したお茶は鳳凰単叢老欉獅頭黄枝香 2022と鳳凰単叢蜜桃香 2022です。 1年間熟成し、夏を2回経験したことで、お茶の熟成が進み、非常に香りが濃厚になりました。 …
2022産、鳳凰単叢老欉を2種類発売
2022年産の老欉鳳凰単叢を2種類発売しました。 https://hojotea.com/item/houou.htm 今回発売したお茶は、鳳凰単叢老欉草蘭香2022と鳳凰単叢老欉姜母香2022 これまで約半年間、無酸素 …
无量山古樹白茶 2018、マレーシア5年熟成の餅茶を発売
マレーシアで5年間熟成した无量山古樹白茶2018を発売しました。 このお茶は2018年に発売した当時も非常に人気が高く、極めて短期間で売り切れてしまったお茶です。 実は当時仕入れた半分を年間を通じて温度が高く熟成に最適な …
マレーシアクアラルンプールMidvalley Gardens店の新装開店
マレーシア・クアラルンプールのMidvalley Gardens Mall店は、改装が完了し、7月11日から新装開店を迎えました。改装工事にあたり、友人をはじめ多くの方々からのサポートに心から感謝しております。新しい店舗 …

PAGETOP