• ホーム >
  • お茶の品質を決める各種要素

お茶や野菜に関して、緑色が濃い方が健康に良いというイメージがあります。
しかしながら、緑=高品質というのは先入観であり、必ずしもそうではない事を説明したいと思います。

自然の草木は緑ではなく黄緑色

春の自然の草原や土手草を観察すると、天然の植物は意外に黄緑色をしていることに気がつきます。反面、畑の野菜は濃厚な緑色をしており、遠くから見ても畑の輪郭がはっきりとしております。野原の草に肥料を投下するとそれまで黄緑色だった草木は、濃い緑色へと変化し、肥料が撒かれた部分のみ突出して大きく成長します。観葉植物なども肥料を与えないと黄緑色へと変化し、逆に肥料を与えると濃い緑色へと変化します。

無肥料栽培のお茶は茶葉が小さく黄緑色

お茶についても同じ現象を観察することができます。雲南省僻地の山村へ行くと、未だに昔ながらの方法でお茶の木が維持されております。彼ら小数民にとって、お茶は手をかけるものではなく、山で自然に生育しているもので、お茶の摘みの季節のみ下草を刈りお茶摘みをします。一年中、農薬は勿論、肥料も与えず、草も刈らず、ただ放置しておくだけの農法(農業と言えるのかどうかは微妙)が採られております。このような農法を日本では自然栽培茶、中国では野放茶や生態茶と呼びます。このような農法で作られたお茶は、茶葉が小さく、黄緑色をしております。雲南省で数百年前からこのような農業のスタイルが採られておりますが、最近ではこのような茶園は非常に減りつつ有ります。産地が有名になると、観光客の増加に伴いお茶の値段が高騰し、その結果、農家では生産量を高めて収入を増やすために、肥料を施肥するようになります。肥料が入ると、茶葉は深い緑色へと変化し、同時に茶葉のサイズは大きくなり、成長速度が速くなることから収穫量も数倍に増加します。

肥料を使わず、手入れすらしない自然放置方式の茶園

自然栽培のホウレン草は黄緑色

自然栽培のホウレン草を見た事は有りますでしょうか?ホウレン草というと、深い緑色が印象深いですが、窒素肥料を用いずに栽培されたホウレン草は、意外にも黄緑色をしております。勿論、肥料の使用をやめてから7-8年以上経過し、肥料が完全に抜けきった畑で作られたホウレン草をさしております。自然栽培のホウレン草に関しては紹介できる写真はありませんが、Googleなどで「ホウレン草」+「自然栽培」、或いは「ホウレン草」+「無肥料」で検索するといろんなイメージが出てきます。自然栽培のホウレン草は見た目が黄色っぽいために敬遠されやすいそうですが、食べると味がとても濃く、余韻が甘く、一度食べたら忘れられません。

生長している植物は濃い緑色

自然界の植物は基本窒素が慢性的に不足しているため、窒素肥料が加えられると、急速に窒素を吸収しようとします。植物は窒素を吸収すると急速に成長しようとします。その結果、葉緑素(クロロフィル)を合成し、植物工場である光合成を活発に行います。こうして、窒素を吸った植物は非常に濃い緑色へと変化し、また、より効率的に光を吸収するために葉の面積が広くなります。

下の写真は数年前まで自然栽培茶園だったところが、産地の知名度の上昇に伴い、急激に肥料栽培に変わった栽培地の写真です。上の自然栽培茶園と比べると、お茶の葉が大きく、色が濃く、表面に凹凸が沢山見られます。植物は葉の凹凸を設けることで表面積を増やし、光を吸収しやすくしていると考えております。

早い成長は味を薄くする

成長が早い農作物の場合、当然味については薄くなります。短期間で成長する養殖の魚と同じで、早く成長したお茶の味は薄くなります。時間をかけてゆっくりと成長したお茶は茶葉もしっかりしており、また、非常に濃厚な味わいがします。高山のお茶や老木のお茶が美味しいのも、この成長速度と関係しております。私はお茶を探す際、可能な限りゆっくり成長しているお茶を求めます。無肥料、無剪定、高山、老木、緯度がより北、土壌が粘土質などの成長が遅くなる条件が重なると、お茶の品質は感動するほどに良い物になります。

肥料を用いずに作られたお茶は、全体に黄色の傾向があります。

葉緑素に含まれるマグネシウムは渋味に影響する

緑色の色素である葉緑素(クロロフィル)は窒素の他にマグネシウムを分子内に含有しております。マグネシウムは非常に渋苦い金属です。例えば、素材にマグネシウムを多く含む急須でいれたお茶は美味しくありません。また、マグネシウムが水に触れると、水は渋苦く、極めて不快な味へと変化します。前述したように、肥料栽培によって、作られたお茶は葉緑素を多く含みます。加工工程でお茶の葉緑素が酸化すると、分子が壊れ、内部に含まれていたマグネシウムが離脱します。これは私の仮説ですが、微妙に酸化した慣行栽培(肥料栽培)の緑茶が非常に渋苦いのは、葉緑素が酸化分解することで、離脱したマグネシウムイオンが味に影響しているためと思われます。

まとめると、緑色は勢いよく生長している植物の証です。後味(余韻・味の濃さ・コク)を求めた場合、緑ではなく、むしろ茶葉が黄緑色であることが重要になります。ただ、例外もあり、日陰で栽培されるお茶は仮に自然栽培茶でも非常に濃い緑色へと変化します。もともと太陽光が少ない環境ゆえに、植物はより多くの葉緑素を合成し、通常よりも効率的に日光を吸収しようとするためです。上の写真は自然栽培ですが日陰に植えられたお茶です。

 

日本茶(緑茶)、中国紅茶、白茶、プーアル熟茶、プーアル生茶、ジャスミン茶、烏龍茶という厳選された茶葉7種のお試しセット

関連記事 RELATED ARTICLES

お茶に関する最新情報を確実にキャッチするには? SOCIAL NETWORK

1,Twitterをフォローする。2,FaceBookで「いいね!」を押す。3,メールマガジンに登録する。という3つの方法で、お茶に関する最新情報をキャッチすることができます。今すぐ下のツイッターフォローボタンや「いいね!」をクリック!

メールマガジン登録で無料サンプルをもらおう!
メールマガジンにご登録いただくと無料のサンプル茶葉のプレゼントや希少商品の先行購入など様々な特典がございます。ソーシャルメディアの購読だけでなく、メールマガジンへのご登録もお忘れなく!

HOJO TEAオンラインショップNEWS一覧を見る

2022年産の鳳凰単叢老欉柿花香単株と桂花香単株を発売
2022年産の鳳凰単叢老欉単株茶を2種類発売しました。 何れも極めて樹齢の高い木ゆえに、非常に奥行きのある、長い余韻のお茶です。濃い後味に加え、1年以上の熟成による、濃厚な香りをお楽しみ戴けます。 鳳凰単叢老欉柿花香 単 …
ダージリンファーストフラッシュとオータムナル紅茶を発売
ダージリンを2種類発売しました。今回の新商品は、Arya茶園の春摘みファーストフラッシュのルビーと秋摘みオータムナルのルビーです。春摘みのルビーは4月に仕入れ、その後無酸素状態で熟成させることで、香りをさらに高めました。 …

最新の記事 NEW ARTICLES

野生茶を求め雲南省臨滄市南西部の山村へ
現在、雲南省臨滄市の南西部にてお茶の仕入を行っております。 当店にとって重要な商品の1つに野生茶があります。野生茶は製茶はもちろんですが、原料確保が一番大きな課題です。 今回、新たに野生茶が有る場所があるらしいと言う情報 …
雲南省のお茶産地にてプーアル茶、白茶、紅茶の生産
3月24日から中国の雲南省臨滄市の南西部、永德、鎮康県にてお茶の仕入れ、生産を行っております。 雲南省は世界一と言っても過言で無い極上の原料がある反面、生産に対する管理が甘いため、出来合のお茶を仕入れたのでは、理想とする …
2022年産の鳳凰単叢老欉柿花香単株と桂花香単株を発売
2022年産の鳳凰単叢老欉単株茶を2種類発売しました。 何れも極めて樹齢の高い木ゆえに、非常に奥行きのある、長い余韻のお茶です。濃い後味に加え、1年以上の熟成による、濃厚な香りをお楽しみ戴けます。 鳳凰単叢老欉柿花香 単 …
ダージリンファーストフラッシュとオータムナル紅茶を発売
ダージリンを2種類発売しました。今回の新商品は、Arya茶園の春摘みファーストフラッシュのルビーと秋摘みオータムナルのルビーです。春摘みのルビーは4月に仕入れ、その後無酸素状態で熟成させることで、香りをさらに高めました。 …
標高2100mのシングルガーデン産プーアル生茶、 火地古樹生茶2021を発売
火地古樹生茶2021を発売しました。 このお茶は、小さな単一茶園(シングルガーデン)のお茶のみから加工されたプーアル生茶です。 https://hojotea.com/item/d147.htm シングルガーデン産のお茶 …
ペットボトル入りのお茶の味に大きく影響するビタミンCの存在
近年、多くの人々にとって、お茶を飲むということはペットボトル入りのお茶を飲むことが普通な今日この頃ですが、本コラムでは、ペットボトル入りお茶の特徴的な味に焦点を当ててみたいと思います。 酸化防止目的のビタミンCの添加 コ …
鳳凰単叢蜜蘭香2023と老欉姜花香2022を発売
鳳凰単叢烏龍茶を2種類発売しました。今回販売したのは、蜜蘭香濃香2023 No.1と老欉姜花香2022です。 https://hojotea.com/item/houou.htm 質の良い鳳凰単叢の特徴 良質な鳳凰単叢は …
ちょっと変わった白茶の楽しみ方!驚きの応用アイデアをご紹介
水出しで抽出した白茶と、お湯で淹れた白茶はまったく異なる香りになることをご存じでしょうか?本コラムでは、水出しを更に応用した白茶の楽しみ方を紹介したいと思います。 殺青工程の無い白茶には酵素が残存 白茶の特徴は、製茶工程 …
大雪山野生茶ベースの特注ジャスミン茶:野生普洱茉莉龍珠
半ば好奇心から、大雪山野生生茶をベースとしたジャスミン茶を作ってみました。 日本はもちろん、中国でも極めて珍しいお茶ができました。 https://hojotea.com/item/s08.htm ジャスミン茶を特注生産 …
ミルクの香りがする烏龍茶とは?
お客様から偶に「ミルクの香りがする烏龍茶」を紹介してほしいとお電話頂く事があります。また、台湾を訪れた際に飲んだミルク烏龍茶が忘れられないというエピソードも耳にします。このコラムでは、そんなミルクの香りがする烏龍茶に焦点 …

PAGETOP