お茶に適した水を考える:水の硬度とミネラル組成とお茶の味香りの関係

[2023.09.29] Written By


お茶を淹れるのに適した水について考えてみましょう。一般的には「軟水が好ましい」とされていますが、本当にそうなのでしょうか?
硬度以外にもある、水を選ぶ上での重要な注意点も併せて紹介したいと思います。

水の硬度とは

水の硬度は、一般的にミネラルの溶解物質総量(TDS:Total Disolved Solid)として表され、水中のミネラル濃度を示します。これは、1リットルの水を煮沸し、水分を完全に蒸発させたときに残る固体の量を測定することで計算されます。世界保健機関(WHO)の基準によれば、水の硬度は120mg/リットル未満を軟水、120mg/リットル以上を硬水と分類しています。

しかし、重要なのは、水の硬度は単にミネラルの総量を示す数字に過ぎず、その中に含まれるミネラルの組成によって水の味は大きく変化する点です。

硬度はミネラル総量を示すが水にはいろいろのミネラルが含まれる

ミネラルフォーターには様々なミネラルが含まれており、その中には微量のミネラルも含まれています。しかし、一般的にミネラルフォーターの裏ラベルに表示されているミネラルは、カルシウム、シリカ(Si)、マグネシウム、カリウム、ナトリウムに限定されています。そこで、裏ラベルで確認できる範囲のミネラル組成と、お茶を淹れた時の味や香りにはどのような因果関係があるのか、説明してみましょう。

硬度の低い水(軟水)の特徴

最も硬度の低い水は、蒸留水や逆浸透水(RO水)です。これらの水にはミネラルが含まれておらず、究極の軟水と言えます。これらの水でお茶を淹れると香りが鮮明で口に入れたときにトップノートが明瞭に感じられます。(トップノートとは最初に感じられる香りで、鼻の奥に抜けるような香りです。)

反面、硬度が低すぎる水は、お茶の苦味や渋味など、雑味を強調することがあります。さらに、口に含むとクリーミーさはほとんど感じられず、その代わりにシャープな口当たりとトゲトゲしたサッパリ感を伴う味が感じられます。天然水であっても、硬度が極めて低い場合、似たような傾向が見受けられます。

軟水という字は、「軟らかい」ととれるため、軟水で淹れたお茶は、口当たりが柔らかいと考えられがちですが、実際は軟らかいと言うよりもシャープで染みるような印象です。

硬水の特徴

一般的な傾向として、硬度が上昇すると、口に含んだ時のとろりとした感覚が増し、硬度が100mgを超えるような水になると、ドロっとした太い味が特に顕著になります。同時に、ふくよかさ(ボディ)が増し、味の骨格がしっかりと感じられるようになります。

硬度が上昇すると、それに伴いトップノートは減少し、香りの質としては丸みを帯びた香りに変わる傾向があります。このことから、例えば>150mg/Lなど、余り硬度が高すぎると、香りが抑えられてしまいます。

ボディに寄与する成分は主にシリカ、カルシウム、ナトリウム、カリウムであり、特にシリカとカルシウムは水の含有量が非常に多いため、ボディに強く影響します。

最近では、シリカを含むミネラルウォーターが人気ですが、これもフルボディでドロリとした食感の水です。

因みに、九州のシラス台地産の水はシリカ(ケイ素)を多く含んでおります。

 

お茶の味香りに多大な影響を与えるマグネシウム

これまで水の硬度について説明してきましたが、お茶に適した水を選ぶ際には、硬度=ミネラル総量だけでなく、ミネラルの組成も考慮する必要があります。前述したとおり、シリカ、カルシウム、ナトリウム、カリウムはボディ(ふくよかさ)に寄与します。一方、マグネシウムが多く含まれている水はお茶を渋苦くする傾向があります。マグネシウムは、苦汁成分としてプラス面が注目されることがありますが、お茶との相性は良くありません。実際、マグネシウムは「苦土」や「苦汁」とも称され、その名の通り、苦味や渋味を引き立てます。

一般的に、硬水にはシリカやカルシウムに加え、多量のマグネシウムが含まれる傾向が強く、これがお茶の風味に悪影響を及ぼすことがあります。多くの人が硬水はお茶に適さないと感じるのは、トップノートの問題ではなく、むしろマグネシウムの含有量に関連している可能性が高いと考えられます。

 

硬度が高めでもマグネシウム含有量が低い水

選択肢は少ないですが、硬度が高い水であっても、中にはマグネシウム含有量が低い水も見つけられます。例えば、「黒部の氷筍水」という銘柄の水は、硬度74〜167mg/Lと高めですが、マグネシウムは2.1〜4.1mg/Lと低濃度です。中硬水ゆえに、トップノートはやや控えめになりますが、マグネシウムの含有量が少ない為、口当たりが滑らかで豊かなボディ感があり、それはそれで、お茶を美味しく楽しむことができます。元々トップノートを強く求めないお茶、例えば中国紅茶、プーアル生茶、プアール熟茶、焙煎の強めの烏龍茶などを淹れてみると味がとても豊かになり、意外と相性が良いことがあります。

お茶を美味しく淹れられる理想の水は?

結論として、お茶を美味しく淹れるには、水の硬度とマグネシウムの量に気を配ることがポイントとなります。

硬度が非常に低い軟水の場合、トップノートは出やすくなりますが、お茶が渋味や苦味を呈しやすく、また、味がトゲトゲし、とろりとした口当たりに欠けます。
逆に、硬度が高い場合、とろりとした口当たりとふくよかなボディが感じられる反面、トップノート系の華やかな香りが抑えられます。

理想の条件を挙げると、硬度は低すぎず高すぎず、50mg〜120mg/L程度の中軟水が望ましいでしょう。(硬度が150mg/L以上になると、香りが立ちにくくなることがあります。) また、マグネシウムの含有量は低ければ低いほど、味と香りの観点からは理想的です。

また、多少水の口当たりがサラサラになったとしても、鳳凰単叢烏龍や東方美人、ダージリン紅茶など、トップノートを重要視したお茶の場合、硬度が30mg/L程度の軟水も検討材料になります。もちろん、軟水の場合も、マグネシウムは低い方が理想です。

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