釉薬の種類で変わるお茶の味

[2010.01.23] Written By

天目茶碗という茶碗をご存じですか。
天目とは、中国浙江省の天目山で使用されていた黒い釉薬のかかった茶碗を、お坊さんが日本に持ち帰ったことが由来とされております。
現在でも、天目茶碗は中国、台湾、日本で作られており、青磁などと並び、非常に高級な茶器の一つです。
黒い釉薬は、鉄を多く含んでおり、それを還元することで、黒い色を発色します。
釉薬に含まれる、鉄分やその他ミネラルの濃度により、油滴状、放射状、或いは星空のように発色します。
現在天目茶碗は、日本及び台湾で主に作られております。
天目茶碗の場合、鉄を釉薬に使っていることから、お茶の味を円やかにします。
但し、土物の茶器と異なり、釉薬の場合、表面がつるつるで多孔質ではないため、表面積が小さいために、優れた陶器のように極端に味をまろやかにはしません。
最近では、天目の発色具合をより美しくするため、伝統的に使われていた鉄釉だけでなく、その他のミネラルが加えられ、茶色や緑色が出されたりもしております。

 

先日、台湾のお茶関係の仕事をしている人から、台湾製の天目茶碗を戴きました。
従来の、抹茶椀のように大きな茶碗ではなく、煎茶椀やぐい飲み程度の小さなサイズに作られており、とても使いやすく、魅力的なサイズだと思いました。但し、茶碗は全体に緑に発色しており、亜鉛などのミネラル分を主体とした釉薬が使われていることが推察されました。亜鉛はお茶の味をフラットにする特徴があります。実際にお茶で試してみたところ、見事にフラットな味になり、どのお茶を飲んでも美味しくありませんでした。

 
茶器には2つの流れがあり、味を極限まで追求して作られた茶器(中国宜興の朱泥・紅泥茶壺)と、見た目を極限まで追求して作られた茶器(日本の抹茶関係の茶器)があります。どちらが良いとは言い難いところですが、茶器である以上、素材とお茶の味との相性は本来重要な要素ではないかと個人的には思います。

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