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縄文土器から学ぶ朱泥急須のルーツ
- [2011.08.23] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
縄文土器でお茶を飲んだらどんな味になるのか?その答えを解明するために実験をしました。
まず、実験方法について説明してみたいと思います。
良い土は水やお茶の味をまろやかにする
良い土の茶器でお茶を淹れると、お茶の味がより濃くなります。
これはお茶に詳しい人には常識的な話ですが、はじめての方にとっては眉唾な話ではないかと思います。
南部鉄器でお湯を沸かすとまろやかになるのと同じで、鉄分を多く含む多孔質の土で作られた急須の場合、鉄イオンと水分子との相互作用により、水の味自体が改善され、その結果、お茶の味も改善されます。急須でお茶を淹れると美味しくなると言いましたが、実際は急須を通しただけで美味しくなります。これについては、以下のビデオでより詳しく見て頂けます。
つまり、お茶を急須にためなくても、急須をほんの一瞬通しただけで味が変わります。長い時間急須に入れていた方が当然味は良くなりますが、1秒か、10分程度では殆ど差がありません。
陶器の角をお茶水面に触れるだけでお茶の味がまろやかになる
更に、実は急須を通さなくても、急須の端をほんの少しだけお茶に触れるだけでも味は同じように変わります。これは殆どの人にとって信じがたい事でしょうが、実際にやると目から鱗を落としつつ納得してくれます。
このように急須の蓋をお茶に触れるだけで味は変わります。
これは新しい土を検討する時のやり方です。土をビスケット上にした物を作家さんに焼いて貰い、お茶に触れることで土の性能を検証します。
縄文土器のお茶や水への影響を評価
つまり、縄文土器でどのようにお茶の味が変わるかをテストしようと思った場合、縄文土器のかけらを少しだけお茶にくぐらせれその性能を評価することができます。
縄文土器は私の家の畑に行けば見つかります。私の家の畑からは過去に縄文の遺跡が見つかったこともあり、よく見ると縄文土器の破片が落ちているのです。縄文土器を、洗った後、お茶に触れ、その性能を確認してみました。
家の畑から発掘された縄文土器の破片
縄文土器は宜興の朱泥茶壺なみの性能
結果、予想はしておりましたが、宜興の高品質な朱泥急須に匹敵する優れた性能が確認できました。縄文土器を触れたお茶や水は、劇的にまろやかになり、味の厚みが増し、香りの持続性も明らかに改善されました。縄文人が縄文土器をどのように使用していたのかは確かではありませんが、おそらく水などを保存することで、水質を改善し、飲んでいたものと思われます。
じっさい土器を作るには赤土である必要はありません。他の種類の粘度でも土器は作れます。にもかかわらず日本各地の縄文遺跡で出土する土器が一貫して朱泥と言う点を考がえると、縄文人は朱泥の性質を理解していたのかもしれません。
なお、縄文土器の場合、土そのものの性能もありますが、焼く温度が低いために、土表面がより多孔質となり、おなじ土を現代風の高い温度で焼くのとくらべると同じ土でも高い性能を発揮します。
縄文人の土選びの知恵はそのご発展せず……
ちなみに、縄文時代の朱泥土器の文化は、縄文時代で失われたわけではなく、その後の時代にも継承されてます。日本六古窯というのがあり、これらは大昔から現在に至るまでつづいている窯です。瀬戸、常滑、信楽などがこれに含まれます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/六古窯
これらの焼き物のルーツたどっていくと、じつは六古窯の古い焼きものの多くは朱泥であることが分かります。つまり、縄文人の素材へのこだわりが、これら歴史的な窯に受け継がれたと言えます。にもかかわらず、日本では朱泥の味にこだわる伝統は途中で途切れ、現在は見た目重視の焼き物が主流となりつつあります。ワビサビに代表されるような、見た目を重視する文化の影響力が多大だったために、縄文時代からの長い伝統だった、素材を大切にする文化が衰退したようにも思います。
中国では味を重視した焼き物の文化が発展
反面、中国では味を意識して茶器を作る文化は宜興を中心に根強く残っております。中国の茶器の場合、朱泥が味を良くするという事実は中国国内はおろか世界中で広く認知されており、今も文化として残っております。宜興の茶器が有名になったのは、朱泥の性能がおおくの人に認知されたことにほかなりません。
日本にもある良質な土
いまでは天然の朱泥を使った作家も数えるくらいしかいなくなってしまった日本ですが、日本にも非常に優れた天然朱泥があります。朱泥急須の良さをより多くの人に紹介し、理解してもらうことで縄文時代から続く「朱泥焼」の文化を絶やさないようにしたいものです。
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