良い茶器をプロデュースするための土探し

[2012.02.20] Written By

優れた土の焼き物を紹介しようと思った場合、各作家が伝統的に使っている土に頼るだけでは限界があると感じております。
日本の場合、素材と味の関係はさほど重視されておりません。どちらかというと見た目重視の作陶が中心です。
この為、例えば常滑、信楽、伊賀、萬古のように元々良質の土が生産されていた産地でも、焼き上がりの見た目を重視した土、或いは、特定の色を出すためにミネラルをブレンドした土などが作品の殆どを占めております。陶芸としての伝統は継承されていても、「土の品質」の伝統はどこかで途切れてしまっております。

実際、有名な産地は、その昔良い土があったからこそ有名になったのだと思いますが、朱泥をはじめとする良質の土は今では殆どの産地で使用されておりません。勿論、幾つかの産地で朱泥急須と名のつくものは作られておりますが、これは名ばかりで、普通の土に酸化鉄を混ぜたり、複数の土をブレンドしたり、朱泥とはほど遠い性質の土から作られており、見た目は赤くても、本来の朱泥の性能はありません。朱泥は天然の土を混ぜ物の無いままに使用して初めて高い性能を発揮します。
ともかく、優秀な「刀鍛冶」=「刀の達人」ではありません。陶芸の名人であっても、お茶のことは専門ではないため、やはり優れた土の茶器を作り上げるには、お茶の専門家と陶芸の専門家が共に取り組むことが重要だと思います。
私は良い土を探す事を重要な仕事の1つと位置づけております。
評価法は至ってシンプルです。産地で取得したサンプルをクッキー状のサンプルピースにし、焼いて貰います。
焼き終わったクッキーを水又はお茶に触れることでその土の性能を評価します。写真は常滑の原土です。常滑で数十年前に採集された土が他の地域で50年近く保管されておりました。紛れもない朱泥です。常滑の土
左に行くほど焼成温度が低く、右に行くほど焼成温度が高い。テストピースに記載してある数字は焼成温度

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