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緑茶を沸騰水でいれるのは非常識?常識にとらわれない緑茶のいれ方
- [2013.01.30] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
日本茶は60-80℃の低い温度でいれるというのが常識のように言われておりますが、この方法は全てのお茶には向いているとは限りません。
低い温度でいれる方法ですが、2つの理由があります。
1.1つ目は渋みや苦みの成分であるポリフェノールが高温で抽出されにくいため。
2.旨味成分であるアミノ酸の存在感をより引き立たせるため。
低温でいれる理由 その1
1については、確かに春の終盤に摘まれた煎茶をいれる場合、低温が適しております。おそくに摘まれたお茶は、生の茶葉そのものが非常に渋くて苦いため、緑茶に加工してもとうぜん苦みと渋味を呈します。
このようなお茶の場合、やや低めの温度でいれると、渋みと苦みが抽出されず、不快感なくお茶を楽しむことができます。
プーアル生茶でも同じ方法が用いられます。市場には春の終わりから夏に摘まれた茶葉から作られたプーアル生茶が流通しております。私は決して手を出さないような品質ですが、現実的には世の中に流通しているプーアル生茶の8割以上が強い渋味と苦みを伴うお茶です。
夏に摘まれた茶葉は苦みが強烈で、普通にいれたのでは口の中が渋いばかりか胃が痛くなります。ところが70 – 80℃位の温度で手短にいれると、苦みや渋味が感じられません。
低温でいれる理由 その2
アミノ酸は低めの温度の方がその食感を感じやすいものです。日本ではここ数十年お茶に含まれるテアニンなどのアミノ酸が美味しさの規準と考えられており、いれかたもテアニンの存在感が十分に引きだせる方法が推奨されてきました。アミノ酸の旨味は、低めの温度の方が舌で感じやすくなります。例えば、85℃位で試飲するのと、60℃位で試飲するのでは、異なる食感が感じられます。高温ではサラサラすぎてアミノ酸の存在が薄れてしまいます。逆に50-60℃位の温度になると、液体その物がどろりとしてくるため、アミノ酸の存在を捕捉しやすくなります。確かに、アミノ酸を最大限に感じようと思ったら、低めの温度が適しております。ぎゃくにアミノ酸の多いお茶を高い温度でいれると、アミノ酸の味・食感が感じられなくなります。
旨味=美味しさではない
ただ、1つ説明しておきたい点として、旨味は、美味(おいしさ)という意味では無いということです。旨味は味の種類の1つで、英語でもUmamiと呼ばれます。問題なのは、「旨」という字を書くために、「美味しい」と混同される点です。旨味とは、グルタミン酸ナトリウム(商品名:味の素)に代表される味です。
なめても、美味しいわけではないし、水に溶かしても美味しくありません。お茶にグルタミン酸ナトリウムを添加しても、おいしさが増すとは思えません。また、アミノ酸が増えたからと言ってまろやかさが増すわけではありません。まろやかさにきよするのは鉄分などのミネラルで、アミノ酸はむしろふくよかさに寄与しております。私はお茶に含まれるアミノ酸とそれによって感じられる、味と香りは、質を左右する指標ではなく、お茶の個性の1つととらえております。
お茶のアミノ酸とミネラル量は反比例するようで、経験的にアミノ酸の多いお茶には強いコクがありません。このことから、旨味の強いお茶を高い温度でいれた場合、旨味が感じられにくく、さらにコクがもともと少ないため、物足らないお茶になります。
コクを与え、お茶の質を高めるのはミネラル
逆に、宇治煎茶 鷲峰山、月ヶ瀬在来煎茶、春日在来煎茶のような無肥料、浅めの枝がり、粘土質の土壌で育った自然栽培・準自然栽培のお茶にはアミノ酸がほとんど含まれず、旨味はほとんど感じられません。逆にこれらのお茶は強いコク、まろやかな味、透るような香りが特徴です。旨味が少ないお茶のばあい、従来のいれかたでは、もの足らなく感じられます。自然栽培系のお茶は、むしろ台湾の烏龍茶のように高温で短時間のいれかたをするのが理想です。同じ日本茶でも、コクが強くまろやかなお茶の場合、高い温度でいれた方がコクと香りの広がりが強調され、満足度が増します。これは煎茶ばかりではなく、玉露にも言えることです。本玉露のように伝統的な藁の被覆で作られた玉露の場合、コクが強いお茶が多く、沸騰水で数秒サッと淹れると意外に美味しいものです。但し、普通の玉露の場合、低い温度で、アミノ酸を味わいながら飲むのがよいでしょう。
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