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陶器や鉄瓶とコーヒーの味の関係
- [2015.02.13] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
私が急須作家の協力のもとにプロデュースしている茶器ですが、お客様の中には、お茶に使用するだけではなく、特にフリーカップなど、コーヒーをより美味しく楽しむ目的で購入される場合があります。そこで、各土の特徴がコーヒーの味にどう影響するのか解説してみたいと思います。
コクとボディが重要な評価指標
私はコーヒーの専門家ではありませんが、コーヒーは人並み以上に好きです。自分なりにこだわった豆を購入し、毎日のように飲んでおります。私には親しい友人でコーヒーの仕入れ・焙煎のプロがおります。彼と一緒にテイスティングをさせて貰うことがありますが、コーヒーについても、テイスティングの基本はお茶やワインと同じと言えます。味の立体感の要素であるコクとボディを評価することで、豆の品質的特徴を理解し、更に、苦み、酸味、渋味などを評価することで、焙煎や豆の個性を評価します。もちろん、これら以外にも評価する人によってそれぞれ独自の評価指標があるでしょうが、これらが最も重要な評価ポイントかと思います。
陶器によるコーヒーのコクとボディ変化
優れた性能の陶器をコーヒーに使用すると、お茶が変化するのと同じく、コーヒーでも例外なく味が変化します。(尚、この変化は私の経験上過半数の人が理解できますが、中には様々な理由から理解できない人もおります。)陶器をコーヒーに使用した場合、お茶と同じく、コク(奥行き、透明感、軟らかさ)やボディ(ふくよかさ、広がり、香りの豊かさ)が土の特徴どおりに変化します。例えば、お茶のコクを増す土は、コーヒーのコクも増します。また、お茶のボディを増す土は、同じくコーヒーのボディを増します。この変化は茶器に水を通した場合も同じように感じられます。
コクとボディにより変化する酸味と苦み
コーヒーの場合、コクやボディが変化すると、それに伴って、苦みと酸味の感じ方が非常に大きく変化します。コクが増えると、酸味が増強され、逆にボディが増すと、酸味があまり感じられなくなり、逆に苦みが気になるようになります。
もともと酸味の強いコーヒーを還元焼焼成系のようなコクだけを引き上げる陶器フリーカップで飲んだ場合、非常に酸味が強く感じられます。
コーヒーの個性を理解し、それを補う形で茶器を選択
私はコーヒーの個性にもとづいて、組み合わせるカップの素材を選ぶようにしております。例えば、あまり酸味がきついと感じられた場合、ボディを強めるタイプの陶器、例えば、清水謙氏の無名異や信楽土、また、私が現在開発中の伊賀天然朱泥のような土を選択します。酸味が強いコーヒーでも、「ボディを高める土」で飲むと不思議なくらい酸味が緩和されます。逆に、焙煎による苦みが強く、味に奥行きが感じられないコーヒーの場合、私はコクを増す土を選びます。そうすることで、苦みが緩和され、バランスの良い味へと変化します。
南部鉄器の湯でコーヒーを飲んだ場合
南部鉄器で沸かした水の場合も、同様にその水がコクを増すか、ボディを増すか理解しておく必要があります。南部鉄器の場合、釜焼き工程と言って、鋳込んだ鉄瓶を、炭火で焼き、表面を処理する工程があります。この工程を経ることで、銀色だった鉄瓶が、還元され、青黒い色へと変化します。ただし、メーカーにより、使用する炭の種類が異なります。白炭を使用した場合、還元が強くかかるためか、還元焼成の陶器と同じくコクを増すもののボディは高めない性質の鉄瓶になります。逆に黒炭を利用した場合、中性還元的な焼き上がりになるためか、コクだけでなくボディを高める性質になります。また、砂鉄の場合、コクとボディの両方を高める性質があります。流通している鉄瓶は、水の味をいずれかの方向へと変化します。従って、「鉄瓶=水を美味しくする」ではなく、コクとボディのどちらを高める性質があるのかを正確に理解することで、飲み物にあった使い方をすることが出来ます。
ジュースを陶器のカップで飲んだ場合
ボディを高めずコクを高める陶器を利用した場合、コーヒーの酸味が強調される点について説明しましたが、実は全く同じ現象が、フルーツジュースでも見られます。例えば、グレープフルーツジュース、オレンジジュースなどを野坂還元のフリーカップで飲むと、コクが増すと同時に酸味の強いジュースになります。逆に、酸味が強すぎるジュースを無名異酸化焼成の容器で飲んだ場合、ボディが増すと同時に酸味が軽減されます。
一概に土の土が適していると言うことではなく、コーヒーやお茶、更にはジュースなど、素材の個性を理解し、それにあわせて陶器を選択することが重要と考えます。
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