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雲南白茶、理想を形にする現地生産
- [2025.04.11] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
3月25日に雲南省に入り、現在まで白茶の製造に取り組んでいます。
本コラムでは、雲南省における白茶生産の実情や、その品質、管理のあり方についてご紹介します。
何故雲南省で白茶を作るのか
白茶といえば、まず思い浮かぶのは福建省の白茶ではないでしょうか。
当店でも、かつては福建省の白茶を取り扱っておりましたが、現在ご紹介しているのは雲南省の白茶のみです。
私たちが雲南省の白茶にこだわる理由は、その圧倒的な茶葉原料の質にあります。
白茶は製茶工程が極めてシンプルであるため、茶葉そのものの質がそのまま味香りに表れます。
無肥料で自然のまま、高標高の環境で長い年月をかけて育った樹齢数百年の茶樹は、ゆっくりと成長することで、豊富なミネラルを蓄え、豊かな香りと深い余韻を備えるようになります。雲南省には、こうした理想的な条件を満たす茶園が存在し、このような原料を用いることで、他の産地では決して生み出せない白茶を作ることができます。
理想の白茶を形にするために現地で生産に深く関与
雲南省における白茶の歴史は2000年以上とされていますが、逆に言えば、適当に干したお茶でも分類上は白茶に含まれるため、伝統的に確立された製法が存在するわけではありません。現地では、人々の気質や読み書きができないといった事情もあり、生産管理が非常に甘いため、出来合いの白茶を探しても、原料や製茶精度の点で理想とするものを見つけることは困難です。また、雲南ではよくあることですが、作るたびに品質にばらつきが生じやすく、萎凋管理が不十分なまま酸化発酵が進み、茶褐色を帯びた「過発酵」の状態になっている例も少なくありません。私たちは2016年から雲南省での白茶生産に携わっており、福建省の製法を基にしつつ、現地の気候や原料の特性に合わせて製茶方法をカスタマイズしています。シーズン前から現地に滞在し、受注量を事前に確定したうえで、最初から最後まで自ら管理して生産を行う体制を整えています。こうして仕上げた白茶は、雲南省では極めて珍しい、瑞々しい緑色と明瞭なフローラルノートを備えた仕上がりとなっており、一口含めば、他の白茶にはない深みと力強さが広がります。特に、後味や余韻をしっかり感じ取れる方にとっては、まさにオンリーワンの白茶と呼ぶにふさわしい仕上がりです。
白茶を生産する上で重要な時期的要素
白茶の生産工程は、原料茶葉→萎凋→乾燥のみと非常にシンプルです。
他のお茶のように揉む工程(揉捻工程)がないため、茶葉表面の産毛がそのまま残り、白く見えることが「白茶」という名称の由来です。
しかし、この萎凋工程が曲者です。湿度が高いと萎凋に時間がかかり、その結果、茎が褐色になります。さらに、シーズンが進んで温度が上がると、茶の茎が太くなり、温度の影響で茎部分が過発酵しやすくなるため、白茶生産には不向きです。
こうした理由から、白茶の生産は基本的に4月15日までに終わらせるように決めています。現在、古樹白茶の製造はすべて完了しており、このところは単株茶や標高の高い高山白茶の生産のみとなりました。ひとまず、古樹白茶の必要量が確保できてほっとしております。
萎凋の科学的メカニズム
白茶は発酵茶です。しかし、発酵茶という割に色は緑色をしております。これは、私たちが一般に「お茶の発酵」と聞いて連想する酵素反応とは、まったく異なる仕組みで発酵が進むためです。
お茶の発酵と聞くと、紅茶の発酵に関与するポリフェノール酸化酵素(PPO)を思い浮かべがちですが、実はお茶の発酵はそれだけではありません。萎凋という工程も、香りを作るための重要な発酵工程であり、加水分解酵素が香り成分を遊離させることで香気が生成されます。萎凋中にはPPOが活性化しないため、茶葉の色は緑色のままです。
萎凋中に茶葉がしおれて水分が減少すると、細胞膜が損傷し、酵素と基質が直接接触しやすくなります。これにより、β-グルコシダーゼの一種であるβ-プライムベロシダーゼなどの加水分解酵素が活性化し、配糖体型の香気成分が分解され、ゲラニオールやリナロールなどの香り成分が生成されます。この酵素反応によって、萎凋工程を経た茶葉からは独特のフローラルな香気が引き出されます。
一方で、紅茶の発酵におけるPPOは、茶葉中のカテキンなどのポリフェノールを酸化し、赤褐色の色調を生み出し、紅茶特有の発酵香を形成します。萎凋では主に花香が強調されるのに対し、発酵では発酵香が生まれるという点が大きな違いです。
白茶の生産で重要なポイントは、「加水分解酵素を活性化しつつ」、同時に「PPOが活性化しない条件」で萎凋を行うことです。萎凋のやり方が不適切だと、本来は関与しないはずのPPOが働いてしまい、テアルビジンというタンニンが形成され、色調が茶褐色になり、蒸れ臭をはじめとする不快臭を伴う白茶になってしまいます。
鮮度を守る、時間との競争
製茶が完了した白茶は、時間と共に酸化が進みます。従って、早く日本とマレーシアに送り出すことが出来れば、それだけ新鮮な品質をお届けすることが可能になります。
超高速で出荷を行うため、包装作業はすべて私たち自身で行っています。もし、生産者に任せたとしたら、繁忙期と重なるため、おそらく出荷されるのは1ヶ月先になるでしょう。
なお、お茶をそのまま送ると、輸送中に結露してしまうため、1kgずつアルミラミネート袋に詰め、ヒートシーラーで完全に封をしています。ただ、白茶は嵩が大きく、袋づめにはかなり手間がかかります。一袋ごとに形を整えながら封をする作業は、時間も体力も食います。さらに、茶葉に付着している細かい産毛が体中に付着し、そこら中が非常にかゆく、目がしばしばします。
白茶の袋づめは、雲南出張で一番の難関です。ようやく今週、主要な白茶の袋づめと出荷が終わり、ひとまずほっとしています。
時間と共に変化する白茶の香り
白茶は作りたての状態でも魅力がありますが、無酸素で約1年ほど寝かせると、さらに香りが強まります。3年以上経つと熟成が加速し、ナチュラルワインのようなフルーツ香が立ち上がることもあります。現在販売しているのは、昨年作った古樹白茶で、リリース当初よりも香りがいっそう豊かになっておりますので、ぜひお試しください。水出しや、炭酸生成機で作るスパークリング水出し白茶もおすすめです。
なお、白茶における「鮮度の低下」と「熟成による変化」は、まったく別の現象です。白茶の鮮度は保存期間の長さではなく、空気中の酸素にさらされることで劣化します。したがって、製茶後できるだけ早く無酸素状態で保存することで、鮮度の低下は確実に防ぐことができます。一度無酸素の状態にした白茶は、たとえ長期間保存しても、鮮度は保たれたままです。変わるのは鮮度ではなく、香りの質や方向性です。
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