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旨味調味料多用によるお茶の嗜好の変化
- [2016.11.07] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
偏った食生活は味覚や好みに影響を与えると言われておりますが、調味料の偏りが実際に味覚にどう影響を与えるか私の経験をシェアしたいと思います。
東南アジアで大量に使用される旨味調味料
私は一年の半分を海外で生活しておりますが、その中でも東南アジア、特にマレーシアやシンガポール、台湾で外食をすると、グルタミンナトリウム(体表的な商品は味の素株式会社の味の素)の使用頻度や使用量が日本と比べて非常に多い点が気になります。例えば、マレーシアの首都のクアラルンプールでは基本外食した場合、殆どのレストランで味付けに旨味調味料であるグルタミン酸ナトリウムが使用されております。テイスティングのトレーニングをすれば、グルタミン酸ナトリウムの有無は香りを嗅いだだけでも分かるようになります。
グルタミン酸ナトリウムの特徴的な味
グルタミン酸ナトリウムというと旨味ばかりが注目されがちですが、実は旨味以外にも特徴的な味を示します。グルタミン酸ナトリウムが使用された場合、味に以下の様な特徴を感じ取ることが出来ます。
- ボディが非常に強くなり、味がふくよかでふわっとした感じが強く感じられる。
- 奥行き・余韻のない旨味(アミノ酸の特徴的な味)が口の中で感じられる。
おそらく、ボディ(ふくよかさ)と言う概念が分かる人にとっては、グルタミン酸ナトリウムの使用の有無を感じ取るのは非常に簡単かと思います。
グルタミン酸ナトリウムの過剰摂取でふくよかさを味の濃さと感じるようになる
グルタミン酸ナトリウムを加えると、ボディが増すために味がふくよかになり、同時に付与される旨味によって、多くの人がそれを美味しいと思います。私は個人的に人工的な旨味と妙にふくよかな旨味調味料特有の味が嫌いですが、多くの人は美味しいと思うわけで、ゆえに、レストランでは積極的に使用します。特に東南アジアの多くの国ではグルタミン酸ナトリウムを沢山使わないと売れないとまで言われており、日本では想像できない量の旨味調味料が使用されております。例えば、マレーシアで有名なチキンライスですが、店によってはご飯を炊く際にご飯茶碗一杯のグルタミン酸ナトリウムを使用しております。
グルタミン酸ナトリウムが多用された結果、多くの人が強いボディ(ふくよかな味わい)に慣れ、あらゆる食品にボディを求める傾向が感じられます。つまり、ボディを味の濃さと勘違いしております。この為か、マレーシアではお茶に対しても、お客さんの多くが、執拗なまでにボディを求めます。余韻が強い自然栽培茶であってもボディがないと、味が薄いとコメントする人が多くいます。私はお茶を選ぶ際には余韻(コク)の深さを素材の品質と定義して重要視しておりますが、ボディの強さについてはお茶の個性と捉え、5-6年前までは、あまり強く意識して仕入をしておりませんでした。その為、当時はHOJOのラインアップ中にボディの強いお茶が比較的少なく、お客さんに味が薄いと言われる事が多くありました。このような経験から、近年ではラインアップの半分くらいはボディの強いふくよかなお茶、残りはスッキリとしたライトボディのお茶を取り揃えるようにしております。ただし、ボディの強弱に関係無く、お茶の余韻は仕入の必須条件としております。
グルタミン酸ナトリウムの使用頻度が少ない地域では余韻が重要視される
私が毎年訪れている、雲南省の山奥や潮州はグルタミン酸ナトリウムが他地域と比べて余り使用されておりません。特に、雲南省の山奥については、グルタミン酸ナトリウム自体が普及しておらず、人々は鶏ガラなどをしっかりと煮込むことで出汁を取っております。また、日本についても、刺身や天ぷらを初め比較的素材を行かした料理が多いため、外食が続かない限りグルタミン酸ナトリウムの摂取量は東南アジアと比べたら少ないと思います。これらグルタミン酸ナトリウムの摂取量が少ない地域では、人々は余韻の深さを重要視し、ボディはあまり強く求められません。
特に、雲南省の山奥へ行くと、生産者の多くが余韻の強さを非常に重視し、より深い余韻を求めるがために樹齢の高いお茶の木から作られたお茶は高値で取引されます。お茶の素材の品質の善し悪しを反映する余韻の深さが価値・値段に反映されているというのは非常に健康的な状況です。同様の状況が潮州の鳳凰単叢烏龍でも見られます。つまり、旨味調味料を含まない食事が多い地域では人々は余韻を味の濃さととらえ、逆に旨味調味料が多く使われる地域ではボディを味の濃さと捉えているように思われます。
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