超高いお茶:君山銀針—黄茶

[2006.06.08] Written By

黄茶という種類のお茶をご存じでしょうか?白茶もそうですが、黄茶は日本では殆ど馴染みのないお茶ではないかと思います。

黄茶の製造では、摘み取った茶葉をまず緑茶と同様、釜炒りし、青殺(酵素を失活する。)したのち、揉捻し、火入れ乾燥を行います。ここまでの工程は緑茶と非常に似ております。
その後、6割程度の水分を蒸発させた状態の茶葉を積み重ねて、高温多湿の場所に放置しますが、この工程は悶黄と呼ばれ、黄茶特有のプロセスです。この工程は後発酵とも呼ばれます。
茶葉は最初の段階で釜炒りにより酵素を失活させているため、後発酵の工程では紅茶のような酵素発酵はありません。書物によると、軽度の微生物発酵と記載されているのですが、数時間から2日程度の短時間の悶黄で本当に微生物が繁殖するかどうかはやや謎です。もしかすると、微生物発酵ではなく、成分同士の非酵素的な酸化反応が徐々に進行しているのかもしれません。何れにせよ、この悶黄と呼ばれる工程により、茶葉はうっすらと黄色になり、黄茶独特の香りが生じるのです。
20060608004703.jpg
君山銀針黄茶型の最高級タイプ:先端の芽のみが摘採される。最高級品は葉が厚く、一つ一つの芽がふっくらとしている。
黄茶で最も有名且つ高価なお茶は君山銀針と呼ばれます。この茶は、湖南省にある洞庭湖に浮かぶ君山という小島で摘まれた茶葉のみを使用して作られます。その昔、唐の皇帝が献上茶として愛飲していたと伝えられており、非常に古い歴史を持っております。
君山銀針の悶黄は、紙袋に詰めた茶葉を木箱に入れて2度に分けて行い、初回は48時間、2度目は24時間と念入りに行われます。工程が非常に複雑であることから、茶葉は極めて希少で、本物を入手するのは超困難と言われております。私の取り扱うお茶の中では、値段が群を抜いて高く、現時点では岩茶と並び、最も高い茶葉原料です。
20060608004718.jpg
写真:君山銀針は透明なトールグラスで淹れるのがはやり。茶葉の吸水と熱による対流により、茶葉が上下する光景が非常に美しく、まるで竹林の笹の動きを見ているよう。
君山銀針と言う名前自体は日本でも非常によく知られております。しかしながら、日本国内はおろか、海外で流通している君山銀針の殆どが黄茶ではなく、緑茶タイプなのです。君山銀針は特許によりその生産が出来る会社は湖南省に一社しか有りません。つまり、その他の会社では生産をすることすらできません。私は展示会での出会いにより、中国で唯一の君山銀針の生産会社と親しく付き合うようになりました。当初、君山銀針のサンプルを取り寄せたところ、5種類くらいのグレードが送られてきました。但し、それらは全て緑茶タイプだったのです。後から知ったことなのですが、黄茶タイプの君山銀針は値段が高すぎることから、殆どの小売業者が買うことが出来ず、その為、君山銀針と言う名で流通しているお茶は概して緑茶タイプだそうです。君山銀針は中心の芽のみを用いて作られ、しかも非常に軽度の揉捻しかしないため、緑茶タイプでは味や香りが殆どありません。そんな緑茶タイプでも龍井茶並みに高いために、君山銀針を飲んだ人は、「味が薄いけど、デリケートなお茶とはこういう物なんだろう・・・」と納得してしまっているようです。
20060608004628.jpg
写真:左が君山銀針の緑茶タイプ、右が黄茶タイプの最高級品。黄茶タイプは色が濃く、全体的に黄色い。
数ヶ月前、私はスタッフを中国に派遣しました。勿論湖南省にも数日滞在して貰いました。それにより君山銀針の生産業者に私たちが真剣に高級茶を求めていると理解して貰うことが出来、その場で最高級の君山銀針黄茶タイプのサンプルを戴くことが出来ました。それは私たちが今まで試飲してきた緑茶タイプとは全く異なる品質でした。まず、お茶を淹れた際の香りが全く異なり、何とも言えない、ふんわりとした、それでいて特徴的な香りがするのです。これまで君山銀針を美味しいと思ったことがありませんでしたが、黄茶タイプを飲み、皇帝が愛飲したという理由が分かりました。君山銀心は見た目や名前だけでなく、本当に美味しいお茶でした。
生産業者が言うには、君山銀針黄茶タイプの最高級品は、高すぎることから売るのが非常に困難で彼らとしてもかなり苦心しているようです。今後も技術を継承し続けていくためにも、継続的に購入できるお客さんを確保することが大切なのでそうです。
話は変わりますが、この業者の取り計らいにより、中国湖南省にある湖南大学で中国茶の講習を受けられることが決定しました。お茶専門の学部の博士課程の研究員が、来月の上旬より10日間、英語による個人レッスンをしてくれるそうです。お茶の鑑定方法、淹れ方、文化、プロセス等総合的に中国茶の理論と実践を習うことになっており、非常に楽しみにしております。この際、君山銀針の生産会社にも2-3日間滞在し、工場や茶園を見せて貰うことになっております。日本では殆ど知られていない悶黄についても更に深く勉強したいと思っております。

日本茶(緑茶)、中国紅茶、白茶、プーアル熟茶、プーアル生茶、ジャスミン茶、烏龍茶という厳選された茶葉7種のお試しセット

関連記事 RELATED ARTICLES

お茶に関する最新情報を確実にキャッチするには? SOCIAL NETWORK

1,Twitterをフォローする。2,FaceBookで「いいね!」を押す。3,メールマガジンに登録する。という3つの方法で、お茶に関する最新情報をキャッチすることができます。今すぐ下のツイッターフォローボタンや「いいね!」をクリック!

メールマガジン登録で無料サンプルをもらおう!
メールマガジンにご登録いただくと無料のサンプル茶葉のプレゼントや希少商品の先行購入など様々な特典がございます。ソーシャルメディアの購読だけでなく、メールマガジンへのご登録もお忘れなく!

HOJO TEAオンラインショップNEWS一覧を見る

佐渡島の渡辺陶三作の無名異焼急須類が入荷
佐渡島の渡辺陶三氏製作の4種類の急須が入荷しました。 今回入荷したのは以下のラインアップです。 秋津無名異酸化焼成 秋津無名異還元焼成 秋津無名異炭化還元焼成 無名異常赤(酸化焼成) 以下茶器販売のページをご覧ください。 …
マレーシアで長期間熟成した鳳凰単叢烏龍茶3種を発売
当社マレーシア倉庫にて長期間熟成した鳳凰単叢3種類を発売しました。長期間お茶を熟成したことで、新茶では味わえない、非常に濃厚な香りをお楽しみ戴けます。 https://hojotea.com/item/houou.htm …

最新の記事 NEW ARTICLES

佐渡島の渡辺陶三作の無名異焼急須類が入荷
佐渡島の渡辺陶三氏製作の4種類の急須が入荷しました。 今回入荷したのは以下のラインアップです。 秋津無名異酸化焼成 秋津無名異還元焼成 秋津無名異炭化還元焼成 無名異常赤(酸化焼成) 以下茶器販売のページをご覧ください。 …
マレーシアで長期間熟成した鳳凰単叢烏龍茶3種を発売
当社マレーシア倉庫にて長期間熟成した鳳凰単叢3種類を発売しました。長期間お茶を熟成したことで、新茶では味わえない、非常に濃厚な香りをお楽しみ戴けます。 https://hojotea.com/item/houou.htm …
舘正規作の萬古焼急須が多数入荷
舘正規氏作の、萬古焼急須と湯飲みが多数入荷しました。 https://hojotea.com/item/banko.htm 産地物の土としては優秀な萬古焼の土 HOJOで販売している他の土の茶器は、すべて特注することで、 …
蘭の花のような香り!安渓産の蘭韻鉄観音を発売
安渓産の高級鉄観音、蘭韻鉄観音が入荷しました。 久しぶりに品質の良い蘭韻鉄観音を仕入れることができ、現物を手にしてほっとしています。 https://hojotea.com/item/o26.htm 中国三大烏龍茶の産地 …
鳳凰単叢老欉貢香22と獅頭黄枝香22を発売
2022年産の鳳凰単叢烏龍茶を2種類発売しました。 今回発売した商品は、鳳凰単叢老欉貢香2022と鳳凰単叢獅頭黄枝香2022です。 https://hojotea.com/item/houou.htm 鳳凰単叢烏龍茶は水 …
臨滄の名産地:鳴鳳山古樹生茶 散茶 2022を発売
臨滄永德県に位置する有名産地:鳴鳳山の春茶から作られたプーアル生茶の散茶を発売しました。 鳴鳳山とは 鳴鳳山村は中国雲南省の永德県に位置し、中心部の標高1,900メートル、年間降水量は1,400ミリメートル、平均気温は1 …
お茶に適した水を考える:水の硬度とミネラル組成とお茶の味香りの関係
お茶を淹れるのに適した水について考えてみましょう。一般的には「軟水が好ましい」とされていますが、本当にそうなのでしょうか? 硬度以外にもある、水を選ぶ上での重要な注意点も併せて紹介したいと思います。 水の硬度とは 水の硬 …
5つの異なる茶園からなる古樹白茶特別限定セットを発売
HOJOの店舗でも非常に人気の古樹白茶ですが、今年の春も生産しました。その後、香りを更に高める為に、無酸素にて数ヶ月寝かしたことで、期待通りの香りへと熟成が進み、いつでも発売できる状態に仕上がりました。 古樹白茶は、1日 …
地元でも非常に入手が困難な2つの高級鳳凰単叢を発売
非常に高級な鳳凰単叢を2種発売しました。 今回発売のお茶は、鳳凰単叢老欉八仙王2022と鳳凰単叢老欉郁金香 単株2022です。 https://hojotea.com/item/houou.htm 鳳凰単叢老欉八仙王20 …
初の伊賀天然朱泥急須入荷、宝瓶と絞り出しも再入荷
伊賀天然朱泥急須、宝瓶、絞り出し、前川淳蔵氏による作品が発表されました。これまで多くのお客様から伊賀天然朱泥急須の制作についてのリクエストをいただいており、ついに実現することが出来ました。 https://hojotea …

PAGETOP