お茶を美味しく飲む為に注意が必要な茶器選び

[2016.05.17] Written By

IMG_8647
これまでも何度か説明しておりますが、茶器の材料は思っている以上に茶の味に影響します。ただし、普段の生活の中ではお茶の味を異なる茶器間で比較する機会はあまり無いため、茶器で味が変わるという事実は殆ど知られておらず、また、それを説明しても半信半疑、或いは全く信用しない人が多いかと思います。ただ実際に複数の茶器でお茶をいれて評価して貰うと、多くの人が違いをはっきりと実感され、変化の大きさに驚かれます。ただし、茶器によってお茶の味が良くなるばかりではありません。本コラムでは、注意すべき茶器について説明致します。

誤った選択の茶器の使用は高級茶の味もフラットに

茶器で味が変わる事に気がつくと、同時に味を良くする茶器と、逆に悪くする茶器があることに気がつきます。味を良くするとは、お茶の余韻(コク)を高め、お茶の味をより豊にする事を指します。お茶の味を悪くするとはつまり、香りが立たなくなる、余韻をカットし味の奥行きをフラットする、また、舌に残る不快な渋味を呈するような事をさします。私はこれまで千以上の茶器を検証しておりますが、軽く見積もっても国産・台湾中国産に関係無く世の中に流通している茶器の半数程度は味を悪い方向に変化します。お茶の値段や品質は余韻の深さに比例しているため、余韻が無くなることは、高いお金を出して高品質のお茶を購入しても本末転倒です。ただ、多くの人が茶器が原因で味がフラットになっているという事実に気がつかないため、多くの場合「悪い味の原因は茶の品質のせい」と考えられがちです。私は余韻が強いお茶を専門としているだけに、陶器が原因で余韻が無くなっていた場合、非常に残念です。

陶器の急須だから味が良くなるとは限らない

多くの人が、「陶器の茶器=味を良くする」と信じておられます。しかし、陶器はどれも味を良くするというのは迷信です。ただ、実際に陶器はお茶の味を顕著に変化します。陶器は磁器と違って焼成温度が低いために、多くのミネラルが結晶の状態(溶けずに残っている)で存在しております。このため多孔性が非常に高く、ゆえに良くも悪くも味への影響が大きい素材です。良い素材の急須を使用すれば、余韻は劇的に深くなりますが、逆に、含まれているミネラルによっては、(例えば銅や亜鉛などを多く含む場合)余韻をフラットにし、渋味や雑味を呈します。

比較的味が安定しているガラスと磁器

磁器やガラスの場合も同様に味に対して影響をします。ガラスはニュートラルというイメージがありますが、ガラスからも金属イオンは微量ですが溶出します。(詳しくはこちらの記事をご覧ください。)ただし、ガラスや磁器の場合、焼成温度が高くミネラルの多くが融点に達しております。このため、多孔性が低く、表面積が小さいため、仮に味を悪くする素材を選んだとしても、影響は陶器ほどほど大きくありません。(ただし、色ガラスや模様付の磁器は色を発色するために使用されている金属ゆえに味の変化が大きくお勧めいたしません。)

土瓶の使用は要注意

意外に見過ごされがちなのが、土瓶をはじめとする、陶製の湯沸かしです。土瓶でお湯を沸かすと美味しい水になりそうな気がしますが、私の経験上、多くの土瓶は水の味をフラットにします。土瓶に用いられている素材が味にどう影響するかを検証した上で作られていれば別ですが、現実的にそう言った土瓶は非常に希です。お客様からお茶が美味しくはいらない原因を質問され、私が茶器や水を調べる際、経験的に真っ先に確認するのが土瓶の使用の有無です。特に台湾には土瓶が多く普及しており、作家によっては非常に美しい土瓶を製作しております。しかしながら、見た目とは裏腹に多くの土瓶が味をフラットにします。湯沸かしの材質が不適切な場合、そのミネラルが溶出するため、急須の性能にも影響を与えます。急須内面に土瓶由来のミネラルが蓄積し、その結果、購入当初はお茶の味を美味しくしていた急須も、暫く使用するとお茶が美味しくはいらなくなります。「急須の購入直後は味が良かったのに、使用しているうちに味が変わらなくなった」という話をされるお客さんが時々おられますが、調べてみるとその多くは土瓶に由来します。土瓶以外にも、アルミ、真鍮、銅製のヤカンは避けてください。これらの素材は、同様に余韻をカットする性質があります。

茶器の購入時には味の検証が必要

重要なのは高いお金を出したから、有名な産地だから、有名な作家の作品だからと言う先入観を持たず、新しい茶器を入手した際には、必ず、別の素材との間で味の比較し、味の検証を行うことです。急須であれば、ガラスや磁器の急須でいれたお茶と味を比較するのが妥当です。ガラスでいれた方が陶製の急須でいれたお茶よりの美味しかったというのは良くある話です。ヤカンの場合、鉄瓶、土瓶などを使用される場合、ステンレスのヤカンで沸かした湯と比較するのが良いと思います。鉄瓶でも、製法や素材、内面のコーティングに使われている材質によって、水が美味しくならない場合、また、逆に味をフラットにするものも中にはあります。中国では、多くの専門家がステンレスを使用して湯を沸かします。ステンレスがベストではありませんが、少なくとも味に対して悪さをしないというのが選択の理由です。

日本茶(緑茶)、中国紅茶、白茶、プーアル熟茶、プーアル生茶、ジャスミン茶、烏龍茶という厳選された茶葉7種のお試しセット

関連記事 RELATED ARTICLES

お茶に関する最新情報を確実にキャッチするには? SOCIAL NETWORK

1,Twitterをフォローする。2,FaceBookで「いいね!」を押す。3,メールマガジンに登録する。という3つの方法で、お茶に関する最新情報をキャッチすることができます。今すぐ下のツイッターフォローボタンや「いいね!」をクリック!

メールマガジン登録で無料サンプルをもらおう!
メールマガジンにご登録いただくと無料のサンプル茶葉のプレゼントや希少商品の先行購入など様々な特典がございます。ソーシャルメディアの購読だけでなく、メールマガジンへのご登録もお忘れなく!

HOJO TEAオンラインショップNEWS一覧を見る

東洞庭山産、無農薬無肥料の碧螺春を発売
碧螺春(Biluochun)は中国を代表する緑茶の一つで、その優れた品質と独特の風味で有名です。HOJOでは、無肥料無農薬栽培による、余韻の長い碧螺春をお届けします。 https://hojotea.com/item/g …
マレーシアで8年熟成の白鶯山古樹白茶2017を発売:トロピカルフルーツの香り
白鶯山古樹白茶2017を再度発売しました。同じ名称の商品をこれまでも販売しておりましたが、以前販売していたロットの商品は日本で熟成したお茶でした。今回発売する商品は8年間マレーシアで熟成をしたお茶になります。マレーシアの …

最新の記事 NEW ARTICLES

単株茶を含む2022年産の鳳凰単叢老欉を3種類発売
単株を含む、鳳凰単叢の老欉を3種発売しました。今回発売したお茶は以下の三種類です。何れも標高1200mの茶園産の茶葉原料から作られており、濃厚な香りと深い後味がする素晴らしいお茶です。 鳳凰単叢老欉夜来香 2022 鳳凰 …
東洞庭山産、無農薬無肥料の碧螺春を発売
碧螺春(Biluochun)は中国を代表する緑茶の一つで、その優れた品質と独特の風味で有名です。HOJOでは、無肥料無農薬栽培による、余韻の長い碧螺春をお届けします。 https://hojotea.com/item/g …
マレーシアで8年熟成の白鶯山古樹白茶2017を発売:トロピカルフルーツの香り
白鶯山古樹白茶2017を再度発売しました。同じ名称の商品をこれまでも販売しておりましたが、以前販売していたロットの商品は日本で熟成したお茶でした。今回発売する商品は8年間マレーシアで熟成をしたお茶になります。マレーシアの …
雲南省の稀少茶、大雪山野生白茶2024を発売
大雪山野生白茶2024の散茶を発売しました。 このお茶は、私達が実際に現地雲南省の産地に滞在し、現地で生産管理しながら作り上げたお茶です。 雲南省における野生茶の定義 これまで何度も説明しておりますが、雲南省 の人々は例 …
HOJO独自の新製法で実現した香り高い紅茶:雲南での挑戦
雲南省に1.5ヶ月滞在した期間中、良質な白茶やプーアル茶の生産はもちろん重要な課題でしたが、今回の大きな目標は、小ロット生産にも対応した新しい紅茶の生産方法を開発することでした。 一般的に雲南紅茶といえば、当店のラインア …
2024年の雲南省お茶シーズン:予想外の気温と収穫の混乱
長い雲南省の仕入れを終え、現在マレーシアのクアラルンプールに滞在しております。輸入したお茶の評価や海外用のお茶の発送など細かな手配が必要なため、クアラルンプールの会社に来月まで滞在予定です。 今年はシーズンの最初である3 …
2024年の白茶:理想的な天気と現地滞在で品質は上々
私たちが雲南省で力を入れているお茶の一つは白茶です。白茶は昔から、福建省と雲南省で作られてきました。 福建省の白茶は製茶はよく管理されている反面、慣行農園方式で肥料を用いた農業をしているため、原料の質に関して、私は満足で …
雲南のおもてなし文化:食事に込められた思い
中国では、挨拶代わりに「你吃饭了吗?」、つまり、「ご飯食べた?」と言うのが一般的ですが、雲南省にいると、色んな局面で、「吃饭」「吃饭」、ご飯食べていきなさいと言われます。ただ、長く雲南省に携わると、これらのご飯への誘いは …
野生茶を求め雲南省臨滄市南西部の山村へ
現在、雲南省臨滄市の南西部にてお茶の仕入を行っております。 当店にとって重要な商品の1つに野生茶があります。野生茶は製茶はもちろんですが、原料確保が一番大きな課題です。 今回、新たに野生茶が有る場所があるらしいと言う情報 …
雲南省のお茶産地にてプーアル茶、白茶、紅茶の生産
3月24日から中国の雲南省臨滄市の南西部、永德、鎮康県にてお茶の仕入れ、生産を行っております。 雲南省は世界一と言っても過言で無い極上の原料がある反面、生産に対する管理が甘いため、出来合のお茶を仕入れたのでは、理想とする …

PAGETOP