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日本の紫泥と宜興の紫泥、言葉は同じでも全く異なる意味
- [2012.03.30] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
萬古焼は朱泥を還元することで紫色に発色させている
私が取り扱っている急須・湯飲みの1つに三重県四日市市産の萬古急須があります。
萬古焼というと紫泥焼と一般に呼ばれておりますが、正確には紫泥ではありません。萬古の土は、あえて分類するなら、朱泥に属します。
焼く前の土の色は、ベージュ〜黄色をしており、これをガス釜で還元焼成(不完全燃焼の炎)するために、窯の内部は酸素不足となり、土に含まれる鉄分が還元されて青色に焼き上がります。
窯の中では青い色をしておりますが、火を止めると外部の空気が窯内に流入するため、表面が微妙に酸化し赤色化します。そのけっか、赤+青で紫色(小豆色)に変色します。この外観から、萬古焼は紫泥と呼ばれるようになりました。
萬古の原土は写真の様に黄土色をしております。写真は四日市市指定無形文化財の舘正規氏
宜興の紫泥は、元の原土が紫系の色をしている
中国宜興の紫砂の1つも紫泥と呼ばれますが、こちらは元々の土が紫系の色をしており、焼き方も酸化焼成です。
なぜ土が紫色をしているかというと、鉄分以外に亜鉛、銅などの鉱物を豊富に含んでいるためです。
これらのミネラルは酸化焼成することで、それぞれ特徴的な色に発色します。
例えば、銅は酸化すると青、亜鉛は緑へと変色します。宜興の紫泥の場合、鉄分も豊富に含んでいるため、鉄は赤へと変色します。
鉄の赤+銅の青+亜鉛の緑=紫〜茶色と言った具合で、酸化焼成を行った結果、紫系の色へと変色します。
紫泥の手作り茶壺:見た目的には大変美しいですね。
紫泥:宜興にて
天日乾しされている紫泥:宜興にて
紫砂と紫泥は全く異なる意味
宜興の土は紫砂と呼ばれているために、紫泥と混同されがちですが、紫砂というのは、宜興で採取されるありとあらゆる土の総合的な呼び名です。つまり、紫砂=宜興の土と解釈するのが妥当です。紫砂と言う言葉に、紫と言う文字が含まれるため、紫泥が極めて頻繁に混同されます。紫砂の急須=紫色と勘違いしている人が大勢いるのも事実です。
紫砂の急須とは、つまり、宜興製の急須を指す言葉で、色は、赤、黄色、緑、クリーム色、オレンジ、赤、茶色、紫と千差万別です。
実際、紫砂の中で高い性能を発揮するのは、鉄の純度が非常に高く、粒子が細かい朱泥です。
朱泥は原土の状態は黄色〜ベージュ色をしており、低めの酸化炎(1100℃付近)にて焼くことで朱色に呈色します。
お茶には向かない宜興の紫泥
これに対して、紫泥ですが、味の観点からは、余りお勧めしません。中には良い物もありますが、非常に稀です。それは土の成分による特性が関係しております。市場に出回っている紫砂の茶壺の過半数が紫泥により作られているため、紫泥を所有されている人は多く、私が紫泥をお勧めしないというと人々から敵視されます。
紫泥の場合、銅や亜鉛を含むために、以下の問題を有します。
- 味がフラットになる
- 舌にざらつき、違和感を強く感じる
例えば、朱泥の急須でお茶をいれ、そこに亜鉛と銅の合金である5円玉をいれてみてください。これにより、亜鉛と銅が味に与える影響をシュミレーションすることが出来ます。
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