ラプサンスーチョンは本当は煙臭くない?!

[2006.04.14] Written By
紅茶と言えばスリランカやインドを連想しがちですが、紅茶は中国が元祖です。中国紅茶は手作業による非常に複雑な工程により作られ、味香りとも非常に洗練されておりストレートで飲んでも美味しく味わうことが出来ます。
イギリスもその昔は紅茶を全量中国から輸入しておりました。当時紅茶の消費量は右肩上がりで伸びており、その状況下値段が安い紅茶を安定的に供給したいという目的でインドやスリランカのプランテーション開発が進められたのです。
中国紅茶で一般によく知られているお茶にはキムーン(祁門)、雲南(滇紅)、ラプランスーチョン(正山小種)の3つがあります。その中でも、特に個性が際だって変わっているのがラプサンスーチョンではないでしょうか。このラプサンスーチョンですが、名前からしてとても魅惑的な響きを持っております。名前の由来は、福建省武夷山の桐木村に自生している正山小種(Zhengshan Xiaozhng)と呼ばれる種類の茶が、英語で発音された際、訛ってラプサンスーチョンと呼ばれるようになりました。
LS2.jpgLS.jpg

ラプサンスーチョンは紅茶の元祖であり、世界の紅茶の中で最も古い歴史を持っております。
このお茶は松の薪を使って萎凋や火入れ(葉を萎れさせる工程)を行うため、正露丸のような独特の煙臭さを伴います。人によって好みがはっきりと分かれますが、ヨーロッパでは非常に好んで飲まれているお茶です。
但し、伝統的な方法で作られたラプサンスーチョンは煙臭さが殆ありません。松の薪は乾燥の目的で燃やされるのであって、本来、着香目的ではありません。何故、一般の(特に安価な)ラプサンスーチョンは猛烈に煙り臭いかというと、その昔、ヨーロッパのお茶商人がより強い香りを求め、それを要求し続けたため、意図的に煙り臭が付与されるようになったそうです。ヨーロッパの水は非常に強い硬水であるため、軟水と比べて香りが出にくい性質をしており、それ故、人々は強い香りのするお茶でも、容易に受け入れることが出来たのでしょう。
ラプランスーチョンのもう一つの特徴として、竜眼と呼ばれるフルーツの強い香りが感じられます。竜眼香とは、乾燥竜眼の香りのことです。実際、乾燥竜眼の香りは上質のラプサンスーチョンと非常にそっくりです。ラプサンスーチョンのグレードは煙臭さではなく、この竜眼臭の質と強度により決まります。
20060414141912.jpg20060414141844.jpg
写真:竜眼
因みに、かの有名なフレーバーティのアールグレイはラプサンスーチョンをコピーしようとする試行錯誤の過程で作られたと言われております。中国からイギリスに渡ったラプサンスーチョンは大変な人気になりましたが、その独特な竜眼香に匹敵する香りは当時のヨーロッパにはなく、その代わりにイタリア性のベルガモット(柑橘類)の精油を紅茶と混ぜで作られたのがアールグレイです。当時、首相だったグレイ伯爵に因んでアールグレイと命名されたそうです。
20060414141807.jpg20060414141826.jpg
写真:乾燥竜眼とその中身。中身は干し柿を濃縮したような味がして非常に美味しい。
但し、英語の資料を見ると、このような説明は全く見あたりません。その代わりのストーリーとして「1830年にグレイ伯爵により中国に派遣された使節団が中国要人の命を救った。そのお礼として、お茶とそのレシピを受け取った。」それに基づいて作られたのが、アールグレイだそうです。但し、中国にベルガモットはないため、オリジナルのレシピはマンダリンオレンジを用いていると推定されます。
別のストーリーではギフトとして受け取ったお茶が終わりそうになったので、首相はそれと同じお茶を作るようにお茶商人に命じたそうです。そのお茶商人がかの有名なTwiningだったそうです。
どのストーリーが正しいのかは分かりませんが、東洋と西洋とで異なるストーリーが伝えられているのが興味深いです。因みに、私は東洋バージョンのストーリーを信用します。
ともあれ、ラプサンスーチョンは様々な面で非常に興味深い紅茶です。私のブランドでもラプサンスーチョンを取り扱う予定です。一般に流通している、極端に煙り臭い品質ではなく、煙臭が弱く、強い竜眼香のする上質なラプサンスーチョンを紹介したいと計画しております。

日本茶(緑茶)、中国紅茶、白茶、プーアル熟茶、プーアル生茶、ジャスミン茶、烏龍茶という厳選された茶葉7種のお試しセット

関連記事 RELATED ARTICLES

お茶に関する最新情報を確実にキャッチするには? SOCIAL NETWORK

1,Twitterをフォローする。2,FaceBookで「いいね!」を押す。3,メールマガジンに登録する。という3つの方法で、お茶に関する最新情報をキャッチすることができます。今すぐ下のツイッターフォローボタンや「いいね!」をクリック!

メールマガジン登録で無料サンプルをもらおう!
メールマガジンにご登録いただくと無料のサンプル茶葉のプレゼントや希少商品の先行購入など様々な特典がございます。ソーシャルメディアの購読だけでなく、メールマガジンへのご登録もお忘れなく!

HOJO TEAオンラインショップNEWS一覧を見る

餅茶で楽しむ個性的な香り、大雪山野生白茶2022と白鶯山古樹白茶2016を発売
大雪山野生白茶2022の200g餅茶と白鶯山古樹白茶 2016年産の200g餅茶を発売しました。 餅茶に加工した餅茶は熟成に向いており、今回発売した2種のお茶についても、熟成による個性的な香りをお楽しみ頂けます。 餅茶製 …
宮廷滇紅、待望の再入荷!紅茶とプーアル熟茶の魅力が凝縮された一杯
新しくなった「宮廷滇紅」が入荷しました。このお茶は、プーアル熟茶の宮廷金毫と、雲南紅茶をブレンドすることで、豊かで多層的な香りが楽しめます。 なお、雲南紅茶は生産地である雲南省を表す漢字「滇」と、紅茶を表す「紅」の合わせ …

最新の記事 NEW ARTICLES

中国のお茶愛好家に人気!実生の獅峰龍井茶の新茶を発売!
2023年産の獅峰龍井茶を発売いたしました。 https://hojotea.com/item/g06.htm 龍井茶は、釜に茶葉を押しつけるようにして、釜炒りをする事で作られます。この為、茶葉が扁平な形状をしている点が …
餅茶で楽しむ個性的な香り、大雪山野生白茶2022と白鶯山古樹白茶2016を発売
大雪山野生白茶2022の200g餅茶と白鶯山古樹白茶 2016年産の200g餅茶を発売しました。 餅茶に加工した餅茶は熟成に向いており、今回発売した2種のお茶についても、熟成による個性的な香りをお楽しみ頂けます。 餅茶製 …
宮廷滇紅、待望の再入荷!紅茶とプーアル熟茶の魅力が凝縮された一杯
新しくなった「宮廷滇紅」が入荷しました。このお茶は、プーアル熟茶の宮廷金毫と、雲南紅茶をブレンドすることで、豊かで多層的な香りが楽しめます。 なお、雲南紅茶は生産地である雲南省を表す漢字「滇」と、紅茶を表す「紅」の合わせ …
お茶の老木の値段高騰が引き起こす思わぬ弊害
ここ10年くらい、中国のお茶業界においては、鳳凰単叢烏龍茶、武夷岩茶、プーアル茶を含む雲南省のお茶を中心に、老木から摘まれたお茶が大きなブームとなっています。しかしながら、老木が希少性を持つようになり、雲南省や鳳凰鎮での …
野生のプーアル生茶、大雪山野生生茶 2022年産を発売
大雪山野生茶2022年の餅茶(200g) を発売しました。 野生茶とは山に自生しているお茶で、現地の人々は山菜を収穫するような感覚で、山に入り、お茶を収穫します。 https://hojotea.com/item/d27 …
ジャスミン茶の常識を覆す!プーアル熟茶を使った斬新な味わいの黒ジャスミン茶(黒茉莉茶)
私たちは完成したジャスミン茶を仕入れるのではなく、自分たちで選んだ原料をジャスミン工場に持ち込むことで、オリジナルのジャスミン茶を特注生産しています。これまでにも、プーアル生茶を原料としたプーアルジャスミン茶、古樹銀針( …
中国でもレアな薫香の高級正山小種、奇種伝統式が登場!
正山小種には、松の木を燃やしてお茶の乾燥を行うことで薫香を呈するタイプと、甘く華やかなフルーツ香が特徴のタイプの2系統のお茶があります。それぞれ全く異なる香りがするお茶ですが、一般的にフルーツの香りがする正山小種は高価な …
プーアル生茶は発酵茶?それとも緑茶?という議論
プーアル茶というと、発酵茶の代表格のように各書籍には書かれております。 プーアル茶は分類的には、黒茶に分類されることから、後発酵茶と定義されている事が一般的です。 しかし、プーアル茶と言ってもプーアル生茶とプーアル熟茶の …
武家寨古樹生茶 2022 秋茶 散茶を発売
  武家寨古樹生茶 散茶 2022の秋摘み茶を発売しました。 https://hojotea.com/item/d116.htm 秋のお茶は、個性がはっきりしており、春茶とはまた違った美味しさがあります。 高山 …
お茶で絶対にやってはいけない2つの保存法
お茶を保存する上で絶対に避けるべき保存方法を2つ紹介します。 冷蔵庫・冷凍庫での保存が劣化に寄与 お茶は冷蔵庫にいれておけば新鮮という印象がありますが、実は冷蔵庫はお茶を急速に劣化する大きな原因の1つです。 冷蔵庫がなぜ …

PAGETOP