佐渡島の無名異焼に使われる2つの異なる土

[2013.11.30] Written By

佐渡島の朱泥を使った焼き物は無名異焼と呼ばれます。一般には無名異焼は朱泥から作られた土と説明されておりますが、実際、佐渡には2種類の性質が異なる土があります。野坂と呼ばれる黄土と無名異と呼ばれる赤土です。どちらの土を使って茶器を作っても広義で無名異焼と呼ばれます。両土共に佐渡の金山周辺に分布しております。原土の色は全く異なる無名異土と野坂土ですが、焼成することで、どちらも似たような朱色に変化します。無名異土と呼ばれる赤土の方は砂質でサラサラとしており、単体では轆轤で成形しづらいという難点があります。それに対して、野坂は粘土質で非常に粘りがあるため。佐渡島では無名異焼の焼き物を作る際には無名異土と野坂土が半々位でブレンドされております。以下、無名異焼の特長をまとめてみました。

  1. 2種類の朱泥から作られた焼き物
  2. 作家が自ら原土を調達し、自分の手で精製まで行っている
  3. 中国宜興の製法を踏襲している(生磨きの技法)

焼き上がりの見た目はそっくりでもお茶の味が全く異なる無名異土と野坂土

原土の色は黄色と赤で異なる2種類の土ですが、焼き上がりの色はどちらも赤色をしており見た目的に大きな違いはありません。見た目が同じであることから、これまで佐渡島では作り手の作業性を重視して2種類の土がブレンドされておりました。しかし、実は野坂と無名異土の土でお茶をいれると、味や香りにはっきりと差が出ます。

無名異土 生磨き 急須

無名異土 生磨き 急須

野坂土の急須

野坂土 生磨き 急須

野坂土はコク

野坂(黄土)はコクを増し、ボディ(ふくよかさ)は減少します。このため、野坂でいれたお茶はスッキリとしており、透明感のあるクリアーな感じの味わいになります。香りは控えめになり、深いコクが感じられる事から、私は夏場や朝にお茶をいれるときに野坂を使うようにしております。一般的な日本茶をいれるにも良い土です。

野坂の採掘現場と清水謙氏

野坂の採掘現場と清水謙氏

野坂の原土

野坂の原土

野坂

無名異土はボディ(ふくよかさ)

無名異の土(赤土)はボディを高める性質があります。無名異の土でお茶をいれた場合、ふくよかになり、香りと味が口いっぱいに広がります。このため、紅茶や台湾の烏龍茶に絶大な効果を発揮し、ダージリンをいれるに際しても最適の土です。

まとめると、ボディ(ふくよかさ)や香りを重視するなら無名異土、コクや透明感を重視するなら野坂という事になります。また、両土をブレンドした場合、そのブレンド比によって、コクとボディのバランスが変化します。

無名異土の採掘現場

無名異土の採掘現場

無名異土の原土

無名異土の原土

味に重点を置いて土を選択

上記の知見を基に、私は味に重点を置いて土を選んでおります。これまで野坂100%の土と、無名異土にごく少量の野坂を少量加えた2タイプを特注し発売してきました。無名異土に少量の野坂を加える理由ですが、無名異土100%だとあまりにサラサラし過ぎており、轆轤で成形することが困難となります。したがって、野坂を少量加えることで粘りを出し、轆轤による作陶をしやすくしております。また、味の点でも、無名異土はボディは強いもののコクが弱いために、少量の野坂を加えることで、コクが増し、味と香りのバランスが良くなるためです。

無名異土がアップグレードして入荷

今回、野坂・無名異土の茶器が両方入荷しました。特に無名異土については、原土からの精製法を改良することでこれまでよりもボディもコクも増すことに成功しました。今後、宝瓶や冷ましなども無名異土のラインアップに加えていきたいと考えております。

無名異焼 宝瓶

無名異焼 急須

無名異焼 還元急須

野坂土還元焼成

備考

中国の急須の産地である宜興では朱泥とは野坂のように原土が黄土色をした土を指します。無名異土のように原土が赤色をした土は紅泥と呼ばれております。ただし、佐渡島では両土とも広義で朱泥と呼ばれております。

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