お茶の保存容器とお茶の品質との深い関係

[2015.09.24] Written By


お茶を紫砂の壺に保管すると良い、錫の茶筒に保管すると良い等々、お茶愛好家の間ではお茶の保管容器に関しても強いこだわりがあり、それについての効果の程は常に議論の対象です。
本コラムでは茶を保管する容器によってお茶の質がどう影響するのか説明したいと思います。

お茶の品質は保存容器の材質によって影響を受ける

まず、結論から言うと、お茶は保存する容器の材質により質が顕著に変化します。私はこれまで様々な材質の入れ物にお茶をいれては保存実験をしてきましたが、保管する材料によりお茶の質は全く別方向に変化します。急須でお茶の味が変化するのと同じく、保存容器に水やお茶などの液体を入れると味は良くも悪くも変化します。材料により、コクを増す、ボディを増す、コクを消す、ボディを消す、コクもボディもなくなる、渋味を呈する等々、変化は様々です。注目すべき点は、乾燥した茶葉を保存容器に入れて数週間以上保管したのちにお茶を飲んでみると、同じ材質の保存容器に水やお茶を通したときに感じられた変化と全く同じ方向性の変化が観察されます。例えば、錫製の急須でお茶をいれた場合、ボディを高めずに、コクを高める性質があります。新潟燕の槌器銅器、マレーシアのピューターウェアなどにお茶をいれると、滑らかで透き通るような味わいへと変化します。乾燥茶葉を錫の容器で保管した場合、同じくボディは増えず、コクが増します。同じ期間、袋に入れて保存したお茶と比べると明らかな差が感じられます。

新潟槌器銅器

新潟槌器銅器(外側は銅、内側は錫)

保存容器の材質によってはお茶が駄目になる事も

槌起銅器の茶筒の場合、表面は銅で出来ておりますが、内面は錫で鍍金されております。ただし、量産品など茶筒の中にはクロムメッキなどのものもあり、このような茶筒でお茶を保管すると、渋味が増すなど非常にマイナス面が増強されます。先日、私のスタッフの1人が、茶筒を通信販売で購入したのですが、内面の材質が錫ではなく、何らかのメッキになっておりました。彼女は「安かったから良いんだ」と言いはり、自分のお気に入りのプーアル生茶をいれておきました。その2週間ほど後に皆でそのお茶を飲んだところ、同じお茶とは思えないほど強い渋味が感じられ、コクも顕著に弱くなっておりました。内面の材質が不確かな茶筒で保管すると、大切なお茶が駄目になるという良い例です。

清雅堂の手作り茶筒

紫砂の壺でお茶を保存する場合

紫砂の壺にてプーアル茶や烏龍茶を保管するというのは中国や台湾では昔から良く行われている方法です。ただし、紫砂と言ってもいろんな種類があります。紫砂と言うのは「宜興産の土」を指す総称であり、紫泥とは意味が異なります。紫砂の中には、朱泥、段泥、紅泥、紫泥、緑泥等々様々な種類があります。
宜興の土で相対的に優れた性能を発揮する土は朱泥です。それに対し、茶色や紫色〜エンジ色系の土(紫泥)の場合、銅や亜鉛が多く含まれている事が多く、茶壺(急須)に使われた場、お茶のコクが無くなったり、舌に残る強い渋味を呈する土が大多数です。
壺にお茶を保管する場合も同様に、壺の材質が重要です。多くの場合、壺に朱泥のような良い土が使われていることは希で、あまり良い効果が期待できないのが実情かと思います。勿論、お茶をビニールに入れた状態であれば、問題ないでしょうが、その場合、わざわざ紫砂の壺で保管する意味が見あたりません。

なぜ、保存容器の材質がお茶の品質に影響するのか

なぜ、お茶を保管する入れ物の材質がお茶の味に影響をするかという理由ですが、おそらく、容器内に含まれる水分やお茶に含まれる水分を介して、お茶の成分の立体構造が変化するものと思われます。保存中のお茶の品質を変化させようと思った場合、容器の材質を考慮する以外に、例えば、貝殻や石灰岩のようなカルシウムを密封した袋にお茶と一緒に入れておくと、ボディが顕著に増します。また、コクが非常に強い自然栽培茶と凍頂烏龍茶を一緒に包装し、数週間おくと、凍頂烏龍のコクがまるで梨山茶のように強く変化します。勿論、自然栽培茶については新しめのプーアル生茶など、あまり個性が強すぎないお茶を選ぶ必要があります。炭を一緒に入れて保管する人もおりますが、これも炭に含まれるミネラルの作用によりお茶の質の変化を期待しての方法です。ただし、炭と言っても、様々な木から作られるため、木によってはお茶のミネラルとの相性が悪く、むしろお茶の質が悪化することもあるため、炭を使った保存法は無理にお勧めはしません。

まとめると、お茶を保管する場合、容器(直接お茶に触れる部分)の材質を意識することが重要です。同じ材料が急須に使われたとき、お茶が美味しくなる、または無変化であれば問題有りませんが、コクをカットするような素材の場合、長期保存により折角のお茶の品質が駄目になります。これらのことを考慮すると、無難な材料としては、ポリラミネートの袋、錫などではないかと思います。

日本茶(緑茶)、中国紅茶、白茶、プーアル熟茶、プーアル生茶、ジャスミン茶、烏龍茶という厳選された茶葉7種のお試しセット

関連記事 RELATED ARTICLES

お茶に関する最新情報を確実にキャッチするには? SOCIAL NETWORK

1,Twitterをフォローする。2,FaceBookで「いいね!」を押す。3,メールマガジンに登録する。という3つの方法で、お茶に関する最新情報をキャッチすることができます。今すぐ下のツイッターフォローボタンや「いいね!」をクリック!

メールマガジン登録で無料サンプルをもらおう!
メールマガジンにご登録いただくと無料のサンプル茶葉のプレゼントや希少商品の先行購入など様々な特典がございます。ソーシャルメディアの購読だけでなく、メールマガジンへのご登録もお忘れなく!

HOJO TEAオンラインショップNEWS一覧を見る

2022年産の鳳凰単叢老欉柿花香単株と桂花香単株を発売
2022年産の鳳凰単叢老欉単株茶を2種類発売しました。 何れも極めて樹齢の高い木ゆえに、非常に奥行きのある、長い余韻のお茶です。濃い後味に加え、1年以上の熟成による、濃厚な香りをお楽しみ戴けます。 鳳凰単叢老欉柿花香 単 …
ダージリンファーストフラッシュとオータムナル紅茶を発売
ダージリンを2種類発売しました。今回の新商品は、Arya茶園の春摘みファーストフラッシュのルビーと秋摘みオータムナルのルビーです。春摘みのルビーは4月に仕入れ、その後無酸素状態で熟成させることで、香りをさらに高めました。 …

最新の記事 NEW ARTICLES

野生茶を求め雲南省臨滄市南西部の山村へ
現在、雲南省臨滄市の南西部にてお茶の仕入を行っております。 当店にとって重要な商品の1つに野生茶があります。野生茶は製茶はもちろんですが、原料確保が一番大きな課題です。 今回、新たに野生茶が有る場所があるらしいと言う情報 …
雲南省のお茶産地にてプーアル茶、白茶、紅茶の生産
3月24日から中国の雲南省臨滄市の南西部、永德、鎮康県にてお茶の仕入れ、生産を行っております。 雲南省は世界一と言っても過言で無い極上の原料がある反面、生産に対する管理が甘いため、出来合のお茶を仕入れたのでは、理想とする …
2022年産の鳳凰単叢老欉柿花香単株と桂花香単株を発売
2022年産の鳳凰単叢老欉単株茶を2種類発売しました。 何れも極めて樹齢の高い木ゆえに、非常に奥行きのある、長い余韻のお茶です。濃い後味に加え、1年以上の熟成による、濃厚な香りをお楽しみ戴けます。 鳳凰単叢老欉柿花香 単 …
ダージリンファーストフラッシュとオータムナル紅茶を発売
ダージリンを2種類発売しました。今回の新商品は、Arya茶園の春摘みファーストフラッシュのルビーと秋摘みオータムナルのルビーです。春摘みのルビーは4月に仕入れ、その後無酸素状態で熟成させることで、香りをさらに高めました。 …
標高2100mのシングルガーデン産プーアル生茶、 火地古樹生茶2021を発売
火地古樹生茶2021を発売しました。 このお茶は、小さな単一茶園(シングルガーデン)のお茶のみから加工されたプーアル生茶です。 https://hojotea.com/item/d147.htm シングルガーデン産のお茶 …
ペットボトル入りのお茶の味に大きく影響するビタミンCの存在
近年、多くの人々にとって、お茶を飲むということはペットボトル入りのお茶を飲むことが普通な今日この頃ですが、本コラムでは、ペットボトル入りお茶の特徴的な味に焦点を当ててみたいと思います。 酸化防止目的のビタミンCの添加 コ …
鳳凰単叢蜜蘭香2023と老欉姜花香2022を発売
鳳凰単叢烏龍茶を2種類発売しました。今回販売したのは、蜜蘭香濃香2023 No.1と老欉姜花香2022です。 https://hojotea.com/item/houou.htm 質の良い鳳凰単叢の特徴 良質な鳳凰単叢は …
ちょっと変わった白茶の楽しみ方!驚きの応用アイデアをご紹介
水出しで抽出した白茶と、お湯で淹れた白茶はまったく異なる香りになることをご存じでしょうか?本コラムでは、水出しを更に応用した白茶の楽しみ方を紹介したいと思います。 殺青工程の無い白茶には酵素が残存 白茶の特徴は、製茶工程 …
大雪山野生茶ベースの特注ジャスミン茶:野生普洱茉莉龍珠
半ば好奇心から、大雪山野生生茶をベースとしたジャスミン茶を作ってみました。 日本はもちろん、中国でも極めて珍しいお茶ができました。 https://hojotea.com/item/s08.htm ジャスミン茶を特注生産 …
ミルクの香りがする烏龍茶とは?
お客様から偶に「ミルクの香りがする烏龍茶」を紹介してほしいとお電話頂く事があります。また、台湾を訪れた際に飲んだミルク烏龍茶が忘れられないというエピソードも耳にします。このコラムでは、そんなミルクの香りがする烏龍茶に焦点 …

PAGETOP