無名異焼

土の性能の良い急須は、お茶のコクを増したり、香りをふくよかにする働きがあります。しかしながら、購入直後はお茶をまろやかにしていた急須でも、その後の使い方によっては味の改質効果が無くなってしまうことがあります。特に、気をつけるべき点は3つあります。

1.やかんが水をフラットにしている事に気が付かず、使い続けた場合

私の経験上、特に注意すべきは土瓶です。日本では湯を沸かす際、ステンレスか鉄瓶が使われ、中国ではステンレスかガラスが一般的です。それに対し、台湾では比較的多種類の土瓶が生産されております。土瓶は見た目的にも美しく風合いがあるため、ステンレスやガラス、電気ポットでお湯を沸かすよりもお茶の味が美味しくなるだろうと思われがちです。しかし、市場に流通している土瓶の場合、耐熱性と色合いだけを基準に土が選ばれていることが大半で、多くの場合、素材と味の関係が検証されておりません。良かれと思って使っている土瓶が実は味を悪くしているというのは意外に良くある話です。「土瓶は水の味を良くするだろう」という強い先入観から土瓶が水(お茶)の味をフラットにしていることに気がつかない場合が一般的です。

重要なのは、自分の土瓶は大丈夫と思わず、先ずは、土瓶の性能を疑うことです。土瓶で沸かした湯と、ステンレスのやかんで沸かした湯でそれぞれ同じお茶をいれて、味を比較してみてください。仮に、土瓶が味をフラットにしている場合、即、土瓶の使用を中止されることをお薦めします。味をフラットにするにもかかわらず、土瓶を継続使用した場合、土瓶由来のミネラルが急須内面に付着することから、性能が目に見えて低下します。継続的に使用し続けると、急須の性能はどんどん低下し、最終的にはガラスでお茶をいれるよりも味がフラットになります。

2.やかん自体の性能は問題ないが、急須との相性が合わない組み合わせで使用し続けた場合

南部鉄器も使い方によっては要注意です。南部鉄器の製作には、釜焼きという工程があります。この工程では鋳込みを終えた鋳鉄を炭火で焼くことで、表面を還元し、鉄が酸化しにくいように処理します。釜焼きに使用される炭ですが、工房によって、白炭を使用したり、黒炭を使用しますが、使用する炭の種類により、炎の状態かかわることから鉄の表面が強く還元されたり、中性還元気味となったりします。例外もありますが、釜焼きで白炭を使用した場合内面が強く還元されることから、還元焼成の急須と相性が良く、逆に、中性気味の炎で釜焼処理された鉄瓶の場合、酸化焼成の急須と良い相性をしめします。私が海外のお客様などへ販売している鉄瓶メーカーとしては、薫山工房と鈴木盛久工房があります。薫山工房は鉄瓶内部を強く還元していることから、萬古焼や野坂や無名異の還元焼成と相性が高く、逆に、酸化焼成の茶器とは相性が良くありません。逆に鈴木盛久の鉄瓶の場合、酸化焼成の茶器との相性が良く、逆に、萬古のような還元焼成の茶器との相性が良くありません。また、砂鉄鉄瓶という材料の鉄瓶がありますが、砂鉄の場合、釜焼き工程がないため、一般的に酸化焼成の茶器と高い親和性を示します。鉄瓶を使用して湯を沸かす場合、鉄瓶がどちらのグループに属するか理解し、それにあわせて急須を選ぶことが重要です。適さない組み合わせにもかかわらず、継続的に使い続けた場合、急須の性能は低下します。

鉄瓶の味の関係
尚、この現象は鉄瓶に限らず、他の材質でも頻繁に起こります。例えば、1.でも言及した土瓶についても酸化か還元のどちらかで焼かれております。一般的に還元焼成の土瓶と酸化焼成の急須を組み合わせた場合、また、その逆、酸化焼成の土瓶と、還元焼成の急須を組み合わせた場合も同じような問題が生じます。

3.急須と相性の合わないお茶をいれ続けた場合

急須によって、特定のお茶との相性が悪い場合があります。例えば、安渓の鉄観音、鳳凰単叢烏龍茶、武夷烏龍茶は萬古焼と信楽焼との相性が良くありません。鳳凰単叢烏龍を萬古焼でいれた場合、渋味を呈する上に、コクが無くなりフラットに味わいに変化します。せっかく、高級な鳳凰単叢烏龍茶を購入しても、萬古焼でいれると単叢ではなく、量産品のような味に変化します。萬古焼の場合、日本茶や台湾のお茶などをいれると、コクを増強するためにお薦めしているのですが、特定のお茶に対してのみ、マイナスの作用を示します。当然、相性の悪いお茶をいれ続けた場合、急須の性能は落ちます。いったん急須の性能が落ちると、その後、日本茶など、従来相性の良かったはずのお茶をいれても、味がフラットになったり、渋味を呈したりと悪影響が出るようになります。

萬古焼:舘正規氏の作品

急須の性能を元に戻すには

急須の従来の性能が落ちてしまった場合、急須を処理して元に戻す必要があります。要はマイナスの影響を与えている原因、つまり急須内面に付着した目に見えないミネラルの層を除く事が重要です。

私の場合、ステンレスのヤカンで湯を沸かし、それを急須に注ぎ入れます。その後、何回も、湯を取り替える作業(夜の間も漬け込む)を継続することで、従来の土の性能が徐々に戻ります。もっと早いリセット方法として、重曹で煮る等の方法を推奨されている人もおりますが、この方法については未だ私自身で検証できてないため、人にはお勧めできません。今度、急須と相性の悪いやかんなどを使うことで意図的に急須を駄目にした後に実験したいと思っております。ただ、私の経験上、重曹やクエン酸などで急須を処理した場合、それらの影響が土に残ります。それをを取り除くために、やはり暫くは「湯をいれては捨て」を繰り返すことで急須をリハビリする必要があります。この事を考慮すると、最初っから地味に湯をいれて元に戻した方が良いかもしれません。湯と一緒に茶葉を漬け込むという方法もありますが、私は個人的に湯だけで処理する方法で十分と感じております。

私はニュートラルな素材のヤカンを使用

私はヤカンについては、ステンレスを常用しております。それで十分に美味しいお茶がはいるためです。ヤカンまでこだわるとヤカン+急須+お茶で組み合わせを検討する必要があり、非常にややこしい話になるため、ヤカンについては影響が少ないステンレスを選び、急須の素材にこだわることが出来ます。逆に、急須はシンプルにガラス急須や蓋碗を使用したいという人は、ヤカンの素材にこだわってみるのも良いかと思います。

日本茶(緑茶)、中国紅茶、白茶、プーアル熟茶、プーアル生茶、ジャスミン茶、烏龍茶という厳選された茶葉7種のお試しセット

関連記事 RELATED ARTICLES

お茶に関する最新情報を確実にキャッチするには? SOCIAL NETWORK

1,Twitterをフォローする。2,FaceBookで「いいね!」を押す。3,メールマガジンに登録する。という3つの方法で、お茶に関する最新情報をキャッチすることができます。今すぐ下のツイッターフォローボタンや「いいね!」をクリック!

メールマガジン登録で無料サンプルをもらおう!
メールマガジンにご登録いただくと無料のサンプル茶葉のプレゼントや希少商品の先行購入など様々な特典がございます。ソーシャルメディアの購読だけでなく、メールマガジンへのご登録もお忘れなく!

HOJO TEAオンラインショップNEWS一覧を見る

長期熟成をした緬境野生茶2014年産を再発売
緬境野生茶 2014(生茶)マレーシア熟成 緬境野生茶 2014は、マレーシアと日本で長期保存をしており、しっかりと熟成が進んだお茶です。 このお茶は数ヶ月間、有酸素で雲南省で保存し、その後無酸素にて追加熟成をしておりま …
自社開発した新製法にて自分たちで仕上げた野生紅を発売
野生紅のロットが2024年産に切り替わりました。 通常であれば特にお知らせすることはありませんが、今回の切り替えには大きな意味があります。 2024年産の野生紅から、私たちが開発した新しい製法を用い、私たち自身の手で作っ …

最新の記事 NEW ARTICLES

長期熟成をした緬境野生茶2014年産を再発売
緬境野生茶 2014(生茶)マレーシア熟成 緬境野生茶 2014は、マレーシアと日本で長期保存をしており、しっかりと熟成が進んだお茶です。 このお茶は数ヶ月間、有酸素で雲南省で保存し、その後無酸素にて追加熟成をしておりま …
自社開発した新製法にて自分たちで仕上げた野生紅を発売
野生紅のロットが2024年産に切り替わりました。 通常であれば特にお知らせすることはありませんが、今回の切り替えには大きな意味があります。 2024年産の野生紅から、私たちが開発した新しい製法を用い、私たち自身の手で作っ …
ミャンマー国境隣接地域産 鎮康古樹熟茶2022 発売
鎮康古樹熟茶2023を発売しました。 普段飲みに適した価格帯のお茶を目指し、非常に僻地の産地から茶葉を仕入れています。 https://hojotea.com/item/d154.htm ミャンマーとの国境を接する鎮康県 …
祁門紅茶の再入荷
暫く品切れになっていた祁門紅茶が入荷しました。 https://hojotea.com/item/b01.htm 祁門紅茶工場産の祁門紅茶 祁門紅茶は安徽省祁門県産の紅茶で、世界的にも知られる銘茶のひとつです。祁門県には …
フルボディの高級熟茶、忙肺古樹熟茶2023 200g餅茶を発売
忙肺古樹熟茶2023を発売しました。当店の熟茶の中でもトップレベルの非常に高品質な熟茶です。 臨滄市永徳県を代表するプアール茶の名産地 忙肺(Mang Fei)は、漢字の意味だけを見ると奇妙な地名ですが、もともと当地の少 …
火地古樹生茶 2022を発売
火地古樹生茶 2022を発売しました。 数年間の熟成を経て、爽やかで透明感のある甘い香りが際立つお茶です。 高山の自然栽培茶園産 火地は私達がお付き合いしている農家が保有する、臨滄市南西部に位置する永德県の標高2100m …
東山生茶 2024の散茶を発売
東山生茶 2024の散茶を発売しました。実は、東山の散茶を販売するのは今回が初めてです。 https://hojotea.com/item/d63.htm 雲南省臨滄市鎮康県の高山地帯で収穫された老樹茶 東山生茶2024 …
なぜお茶は渋いのか?渋味の原因と仕組みを紐解く
お茶には渋味を全く感じないものもあれば、非常に強い渋味を持つものもあります。では、この渋味の原因は何なのでしょうか?ここでは、渋味の原因とそのメカニズムについて解説します。 渋味の原因 渋味は、お茶の成分が口腔内のタンパ …
鳳凰単叢老欉蜜蘭香 2023を発売
鳳凰単叢老欉蜜蘭香2023を発売しました。 https://hojotea.com/item/houou.htm 鳳凰単叢は広東省潮州市を代表する烏龍茶で、老欉は樹齢の高い茶樹から収穫された茶葉を使ったお茶を指します。 …
湯を沸かす熱源によって変わるお茶の味香り
お茶を淹れる際に使うお湯ですが、やかんの材質によってお湯の味が変わることはよく知られておりますが、実は、やかんの材質以外に、湯を沸かす熱源の種類によっても味が大きく変化することをご存じでしょうか? 同じヤカンでも、熱源に …

PAGETOP