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お茶の個性を決める火入れの3つの目的
- [2015.08.29] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
製茶工場での加工直後のお茶は粗茶(日本)とよばれます。中国では粗茶と言う呼び方はせずに毛茶と呼ばれます。通常、「乾燥後のお茶」がこれに相当します。
お茶の場合、農家から直接購入する場合を除き、粗茶(毛茶)の状態で流通する事は少なく、通常は仕上げという工程を経て商品になります。これは日本茶に限った事ではなく、台湾や中国のお茶も一緒です。
仕上げで特に重要なのが、火入れと呼ばれる作業です。火入れと言っても、実際に火を加えるわけではなく、熱風や輻射熱などでお茶を加熱処理する作業の事です。また、「火入れ」は中国や台湾では「炭焙」と呼ばれます。生産業者によっては、電気ヒーター式の熱風乾燥機を使う場合もありますが、言葉としては「炭焙」と呼ばれる事が一般的です。
火入れと言っても3つの異なる目的がある
火入れというと、お茶に熱を加えて武夷岩茶や焙じ茶のような香ばしさを出す工程と思われがちですが、火入れには3つの全く異なる目的があります。
- 青臭さと舌のざらつき感を除去し、クリアーな飲み心地にする
- 熟成香を形成する
- 香ばしさを付与する
1. 青臭さと雑味を除く
工場で作りたてのお茶である、粗茶(毛茶)は新鮮と言えば新鮮なのですが、この状態のお茶は必ず青臭い香りがしております。
この青臭い香りは、中国や台湾のお茶業界では「青味」と呼ばれます。因みに、「青味」と「清香」とは全く異なる意味なので混同しないようにしてください。
中国茶でも日本茶を問わず、共通して言えることですが、粗茶(毛茶)の場合、舌触りに関しても雑味が感じられます。
このような理由から、青臭さを除去し、同時に甘い香りを引き出し、また、雑味を除去してクリアーな舌触りにするためには、低めの温度での火入れ作業が必要となります。
台湾の高山茶(清香タイプ)は花のような香りがします。一見すると、火など全く入ってないような気がするでしょうが、実は上述したような低温での火入れがしっかりと行われています。HOJOで販売している凍頂烏龍茶、阿里山茶、翠峰茶、梨山茶など、火は全く入ってないように思われるでしょうが実はちゃんと火入れが行われております。火入れ前の高山茶は、刈たての草のような青臭さと舌にこびりつくような雑味を呈します。このような感覚は製茶後数日が経過するとより増幅して感じられます。
2. 火入れで熟成を促進しフルーツのような甘い香りを引き出す
2つめはお茶の熟成を目的とする火入れです。お茶は熟成により甘いフルーツのような香りを形成します。
代表的なお茶は鳳凰単叢烏龍茶です。甘いフルーツの香りで知られる鳳凰単叢烏龍茶も、粗茶は青臭さを伴い、セロリのような香りがしております。また、雑味が強く、飲むと舌に違和感が感じられます。しかし、炭火による低めの温度で長時間あぶることで、粗茶からは想像できないような甘いフルーツの香りが形成されます。ただし、面白い事に、鳳凰単叢烏龍茶の粗茶を脱酸素状態にて、数年間、年間平均気温の高い場所に保管すると、不思議にも火入れ熟成をしたお茶と同じような甘い香りが形成されます。実は火入れによる熟成もこの原理の応用であると考えることが出来ます。熟成をするためには「保存温度 x 期間」が重要な要素となります。以下のように保存する温度条件が変わると、目的とするフルーティな香りはより早く形成されます。つまり、保存温度が上がれば上がるほど、熟成時間が短くなると仮定することが出来ます。焦げない程度の温度で一定時間火入れを行うと言うことは、まさに、保存熟成と同じ原理になります。
温度が高いほど熟成が早く進む、熟成の進み方=温度 x 期間と定義した場合、以下の種々の異なる条件で熟成しても、同じような熟成結果が得られると仮定することが出来ます。マレーシアの倉庫における年間平均温度25℃位にて、3年でフルーツのような熟成香が形成されるとすると、異なる条件でも同じような熟成をすることが出来るという仮説を以下に紹介します。
25℃で3年
↓
30℃で2年
↓
35℃で1年
↓
40℃で半年
↓
45℃で3ヶ月
↓
50℃で1ヶ月
↓
60℃で10日
↓
70℃で3日
↓
80℃で1日
火入れをするさい、100℃を超えるとお茶は焦げ始めます。従って、焦げない範囲の温度にて20時間以上火入れをすることは、25℃で3年熟成するのと同じ熟成効果得られると推察することが出来ます。鳳凰単叢烏龍茶の火入れはまさにこの論理で行われております。例えば、清香タイプの蜜蘭香をマレーシアのような暑い国で2年も保管すると、濃香タイプとそっくりの香りへと変化します。
3. 火入れにより香ばしい香りを形成する
火入れの3つめの目的は「香ばしい香り」を形成することです。これはつまり、100℃以上の温度を加えることで、部分的に茶葉を焦がします。日本における焙じ茶、武夷岩茶、台湾の炭焙烏龍などにはこの技術が使われております。
ただ、武夷岩茶、台湾の炭焙烏龍の場合、甘みを同時に引き出すために、2の火入れ熟成に準ずる技術も組み合わされておりそう単純ではありません。
日本の煎茶の場合、火入れと呼ばれる作業は香ばしい香りを引き出す目的が大きく、特に肥料栽培でアミノ酸を多く含むお茶の場合、高い熱を加えることで、メイラード反応により独特の香ばしい香りが生じます。
私は、日本茶でも、自然栽培茶のようにカテキンを多く含むお茶となると、むしろ、1の目的の火入れを行うのが理想だと考えております。つまり、草のような青臭さを除き、舌触りをソフトにし、甘い香りを引き出します。近年、私は小型ではありますが、業務用の火入れ機を台湾から購入しており、日本茶については1.の目的の火入れ作業をすることで、自分の理想とする香り・味に仕上げるようにしております。
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