潮州の鳳凰鎮に1週間ほど滞在し、鳳凰単叢烏龍茶の仕入をしてきました。鳳凰単叢烏龍はHOJOの看板商品の1つであり、必ず産地を訪問することを心がけており、今年まで6年間連続で潮州を訪問しております。

春ではなく今頃の時期に仕入に行く理由

鳳凰単叢烏龍茶の茶摘みは、4月に行われます。摘まれたお茶は、製茶され発酵まで行われた状態で、荒茶(中国では毛茶と呼ばれる)となり、保存されます。
この荒茶の状態では、鳳凰単叢烏龍茶独特のあのフルーツのような香りはしません。どちらかというと、セロリのような、青臭い香りがし、雑味すら感じられます。
この荒茶は、お茶の仕上げ業者によって買い取られ、彼らは「炭焙」という、炭火による火入れ作業を行います。炭焙は最低でも24時間ほど継続的に行われます。2時間おきに火から外し、水分の再分布をする必要があるため、仕上げ業者は連続して睡眠をとることが出来ません。鳳凰単叢烏龍の場合、弱めの温度で長時間焙ることで、焦げ臭を一切形成することなく、むしろ熟成を促し、それにより甘い香りを形成します。炭焙の結果、荒茶の状態では青臭い香りがしていたお茶が、透明感のある、フルーツのような洗練された香りへと変化します。通常、炭焙が行われるのが6-7月のタイミングであるため、7月に現地を訪れるのがちょうど良いのです。
鳳凰単叢烏龍茶のように、木によって、或いは、炭焙の仕方によって香りや性格が異なるお茶の場合、現地で選ぶことがとても重要になります。更に、多くのお茶については、テイスティングをした時点で、更なる炭焙を行うための条件を生産者と話し合い決めます。お茶によって、更に火をいれた方が良い場合、どのような条件で火入れを行うか、その場で話し合い、決めることが出来と言う点で、現地を訪問することは仕入をする上で非常に重要です。

烏崠山にはお茶の老木が豊富にあります。

烏龍茶の試飲マラソン

今回も例年と同じく合計20種類以上のお茶の仕入を行いました。昼頃に現地に着いたのですが、試飲は延々と続き、気がつけば夜中の3時になっておりました。
ワインの試飲の仕方と同じく、お茶の場合も飲み込まなくても、お茶の評価は出来ます。ただ、鳳凰単叢烏龍茶は高級なお茶なだけに、生産者からのプレッシャーもあり、飲まないわけにはいきませんでした。
12時間以上試飲を続けた結果、最終的には100種類近いお茶を飲みました。お茶が幾ら体によいとは言っても、飲み過ぎはやはり良くありません。流石に翌日は、登山帰りのように体が重く感じられました。

手前にあるのは、いれ終わった茶葉の山

中国の烏龍茶の正規輸入

中国の烏龍茶を正規に輸入する場合、農薬の検査を行う必要があります。正規の輸入とは、法律に則って、関税に関する手続きと、検疫手続きをしたうえで輸入することです。
中国からEMSなどでお茶を輸入すると、個人の荷物として認識され、通関をスルーする場合が多いため、お茶の場合、正規の輸入手続きを踏まずに輸入されることが多いのが実情です。HOJOでは常に正規輸入をしております。
烏龍茶の正規輸入は一筋縄ではいきません。日本での輸入時には、フィプロニルという農薬の検査が必要です。数年前に福建省のお茶に関し違反例が多かったことから、現在では、中国にてCIQという検査機関にて輸出前検査を行い、合格判定が出た商品でないと、日本国内での検査を受け付けてくれません。ただ、CIQの検査は1回だけではなく、サンプルを2回抜き取られることも一般的です。一回あたり500g-1kgものサンプルが抜かれ、更に、検査代も安くありません。日本と中国で要する検査コストはサンプルとして抜き取られる商品代も併せると10万円近い額に達します。

品質的にも安全面でも優れた産地である烏崠山

鳳凰単叢烏龍茶に関して最も有名な産地は烏崠山という名称の山です。ただし、現地へ行けば分かる事ですが、烏崠山以外でも至るところに茶園が広がっております。実際、鳳凰単叢烏龍茶の名称で流通しているお茶の8-9割以上が烏崠山外の茶園で作られたお茶と言えます。烏崠山産のお茶が優れているのは、①粘土質の赤土が豊富にある点、②烏崠山に植えられているお茶の木の樹齢が非常に高いこと、③烏崠山では標高700-800m以上に位置する茶園では、一年に一回しか茶摘みをしない、④完全に自然栽培にて管理されており、農薬も肥料も使われていないことがその理由です。鳳凰単叢烏龍茶に関しては、HOJOでは360種類の農薬をテストすることで安全性を確認しておりますが、烏崠山産の標高が高い茶園のお茶に関しては、これまで全く農薬が検出されたことがありません。烏崠山でも標高が低い地点には更に安いお茶がありますが、農薬の問題ゆえに、仕入を行っておりません。

鳳凰鎮から臨む烏崠山

安いお茶にはそれなりの理由がある

烏崠山以外の地域や標高の低い位置にある茶園のお茶は、年に5回(早春、晩春、夏、秋、冬)、茶摘みが行われ、農薬が使用されている可能性も否定できません。鳳凰単叢烏龍茶の値段はピンキリで、例えばHOJOで販売している「蜜蘭香」という銘柄でも、安いお茶を探そうと思えば、半分どころか、1/20の値段でも茶は入手可能です。
安いお茶はそれなりの理由があり、まず間違いなく烏崠山以外の地域で作られたお茶であり、収穫に関しても春ではなく夏や秋、木の樹齢が若く、火入れも中途半葉となっていることが一般的です。
「鳳凰単叢烏龍茶はとても渋いのでいれ方が難しいですよね?」と良く聞かれますが、本来、質の高い鳳凰単叢烏龍茶については渋みや苦みは殆ど有りません。渋いと言うのは、夏のお茶から作られている典型的な例です。
また、値段の安いお茶はそれに相関して、フルーティな香りは期待できません。焙煎も炭火ではなく、電気オーブンが使われていることが多く、値段相応の品質となります。

7月に訪問した際、お茶が道路の真ん中で加工されているのを目撃しました。烏崠山産の春茶がこのような扱いを受けることは決してありません。7月摘みの、品質(価値)の低いお茶になると、扱いも雑になり、品質もそれ相応になるという一例です。

今年も20種類近いお茶を仕入れましたが、輸入をするに際して、検査を何度も行う必要があるため、入荷については来月以降になる予定です。鳳凰単叢烏龍茶の場合、新茶も良いですが、無酸素の状態で数年熟成させた方がより甘い香りが形成され、香り自体も強くなります。あまり、何年も保存しすぎると、香りの個性が変わってきますが、1-7年くらい無酸素で保存された鳳凰単叢烏龍茶はむしろ新茶よりもお勧めします。

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