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他の種類のお茶と比べると日本茶は非常に強く揉まれ、また、撚られているため、お茶をいれた際に味香りが一気に抽出され、3煎目以降になると香りも味が薄くなります。日本人からすると、「日本茶はそう言うもの」と思い、違和感すら抱きませんが、海外で中国茶、台湾茶をはじめいろんな種類のお茶を飲む人からは、日本茶は何煎も楽しむことが出来ない、つまり、煎を重ねることが出来ないお茶と言われます。このような背景から、製法を変えることで、「何煎もいれられる日本茶が作れたら面白い」と思うようになりました。
煎を重ねにくい日本茶
茶葉を揉み撚ることを揉捻と呼びます。日本茶と言えば、針のような形状へと揉捻されます。日本茶の場合、茶葉の形状が非常に重要視される傾向があり、針のような美しいお茶が好評価を得ております。
形状はさておき、日本茶の揉捻は数あるお茶の種類の中でも特に強く揉捻されております。揉みが強ければ強いほどお茶の細胞が磨砕されるために、お茶の出が早くなります。このため、日本茶は1〜2煎目くらいが抽出ピークです。もちろん、いれかたを工夫することで、ある程度の調節は可能ですが、他の種類のお茶と比べると日本茶はあまり煎を重ねることが出来ません。
揉まないと、味も香りも出ないのでは?
実際、海外には揉捻をほとんど行わないお茶も多数存在します。例えば、白茶は揉捻工程が全くありません。白茶の場合、萎凋→発酵止め→乾燥→低温にて火入れというのが一連の工程ですが、お茶を揉まないことが白茶の特徴でもあります。全く揉んでないにもかかわらず、白茶をいれると十分なレベルにて味も香りも出ます。茶葉が揉まれていないため、白茶は何煎も味香りが持続します。プーアル生茶についても、揉捻工程は他のお茶と比べると非常に軽めに行われます。時々、各種事情により、揉捻を意図的に強く行う場合がありますが、その様に製造されたプーアル茶は味香りの出が比較的速く、煎を重ねにくい特徴があります。
紅茶の揉捻は酵素発酵のために重要
紅茶の場合、揉むことで、細胞を破壊し、そこに含まれる酵素と基質を反応させ、酵素的な発酵を行います。したがって、揉むという作業は非常に重要であり、揉み方の強弱で酵素反応の均質性にも影響があります。ただ、発酵を伴わない緑茶を強く揉むのは何故なのでしょう?
日本茶が強く揉まれるのは旨味成分が関係
日本茶強く揉まれるようになった理由の1つは、お茶に含まれる旨味成分(テアニンというアミノ酸化合物)が品質指標の1つとして注目されていることに関係するように思われます。実際、1940年代からお茶作りが現代農業化することで、ヤブキタを中心とする選抜種のお茶が、それまでの窒素肥料の10倍以上の施肥量と共に作られるようになりました。窒素肥料が多く施肥されるとその結果として、お茶が窒素化合物であるテアニンとカフェインを多く含むようになりました。
詳しくは「年配の人が「昔飲んだ煎茶が美味しかった」という本当の理由」をご参照ください。
このような生産方式の普及にともない、緑茶に含まれるテアニン量がお茶の美味しさの規準として評価されるようになりました。テアニンをより多く抽出し、より旨味を高める為には、細胞をしっかりと磨砕することでアミノ酸が溶出しやすくする必要があります。つまり、揉捻をしっかりと均質的に行う事で、お茶に含まれるアミノ酸を最大限に高めることが出来るのです。このようにお茶に含まれるアミノ酸の量が重要視されるようになった結果として、自然と茶葉が強く揉まれるようになったと推察します。
ただし、お茶の善し悪しを旨味成分量で評価するのは、日本のみです。中国最大の生産量(お茶の生産量の7割)の緑茶はもちろん、紅茶、烏龍茶、白茶、プーアル茶等、世界でのお茶の評価基準に旨味は含まれません。海外の場合、余韻(コク)の深さ、ボディ(味香りの広がり・ふくよかさ)加工技術の善し悪しを中心にお茶が評価されます。
軽く揉んだだけの日本茶を開発
私は全般に自然栽培茶を好んで仕入て販売しております。自然栽培茶の場合、窒素肥料を極力使用しないために、現代農業方式で作られた一般的なお茶と比べると、アミノ酸含有量が少なく、逆にカテキンなどのポリフェノールが多く含まれます。自然栽培茶は、また、ミネラルが多く含み、余韻を楽しむお茶です。アミノ酸がが少ないお茶であるため、強く揉捻する理由がありません。自然栽培茶の特徴は透明感のある余韻の深い味と花のような香りです。この特長を活かし、同時に煎が重ねられるお茶にするためには、軽めの揉捻の方が理想的であると思われます。揉捻が軽めの方が、加工中に加えられるエネルギーも少なく、また、磨砕される細胞が少なくなるため、茶葉の表面積を小さめに維持することが出来ます。この事は最終的な「茶葉の酸化」を最小限に留めることが出来、ポリフェノールに起因する花のような爽やかな香りをより強調することが出来ます。
これらの事情から、私は今年揉みを極端に軽くした日本茶を開発したいと考えております。既にこの新商品を開発すべく、奈良県月ヶ瀬のお茶の生産者と色々打ち合わせをしているところです。
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