- ホーム >
- 茶器・急須
1つの急須で沢山の種類のお茶を淹れても良いかどうか?
- [2018.02.11] Written By 北城 彰(Akira Hojo)
1つの急須を複数の種類のお茶で共有しても良いかどうかと質問されることが頻繁にあります。特に東南アジア、西洋のお客さんほどこの点を気にされる傾向があります。複数のお茶を1つの急須でいれると、急須の性能が落ちてしまうことを懸念されての質問です。私は経験上、急須は複数のお茶で共有しても問題無いと考えております。ただし、幾つかの注意点があります。
急須の性能に影響を与えるのは香り成分ではなくミネラル
私の経験上、1つの急須で、緑茶や紅茶、時には烏龍茶等、いろんなお茶をいれることに対して日本人の多くはあまり抵抗がないように思います。反面、東南アジアや西洋のお茶愛好家の間では、1つの急須は特定の種類のお茶に対してのみ使用し、複数の種類のお茶で共有しないというのが常識として捉えられております。彼らが懸念しているのは、「1つの急須で複数の種類のお茶をいれると、急須に様々な香りが染みこみ、それによって、お茶が美味しくはいらなくなる」という点です。或いは、1つの急須を1種類のお茶に対して使い続けることで、「お茶の香りが染みこみ、湯を通しただけでお茶の香りが漂ってくるまでに急須が成長する」と考える人もおります。しかしながら、無機化合物である急須に、有機化合物であるお茶の成分が染みこんでも化学的に結合するわけではありません。熱湯を通せば、香り成分は容易に洗い流せるし、奥に入り込んだ成分も、暫くすれば酸化分解されます。この事から、「お茶の香りが陶器に染みこむことで急須が成長する」という考え方は適切ではありません。
同じ種類のお茶でも茶園が変われば含まれるミネラルは同じではない
急須を複数のお茶に対して使用するべきではないという考え方は、本来、お茶由来のミネラルが急須に付着することに関係しております。お茶は土地の土壌由来、お茶の品種由来のミネラルを含有しており、お茶をいれるとそれらのミネラルが急須内面に付着します。同じお茶をいれ続けていると、同質のミネラルが急須内面に蓄積する事で、お茶の味がより円やかになります。このような理由から、お茶が非常に好きな人は、日本茶用専用の急須、台湾茶専用の急須、ダージリン紅茶専用の急須といった具合に、急須を特定のお茶に対して専用化したいと考える傾向があります。しかしながら、この考え方には1つ問題があります。台湾茶といっても、異なる山で収穫されたお茶は、異なる種類のミネラルを含みます。同じ凍頂山で作られていたとしても、茶園が変われば、土壌の質も変わり、含まれているミネラルの種類も異なります。仮に特定の生産者のみからお茶を購入していたとしても、生産者が所有する茶園は1つではありません。異なる茶園には異なる土壌で構成されており、お茶に含まれるミネラルは同一ではありません。どうしても、急須を専用化したい場合は、産地やお茶の種類毎ではなく、品種毎に分けることをお勧めします。ただし、プーアル茶や実生在来のような種から撒かれたお茶は全てのお茶の木の形質が異なるため、品種毎に分けることができません。
お茶によっては特定の急須と相性が悪い素材も
前述したとおり、お茶は産地や品種毎に異なる種類のミネラルを含みます。この結果、お茶によっては、特定の急須と相性が悪い場合があります。例えば、安渓の烏龍茶、鳳凰単叢烏龍茶、武夷烏龍茶は萬古焼とは相性が合いません。私が販売しているラインアップの中では、信楽粗土の急須もこれらの産地のお茶とは相性が合いません。萬古焼でこれらのお茶をいれた場合、余韻(後味、コク)が無くなり、同時に渋味を呈します。相性の悪いお茶をいれ続けると、急須の内面に相性の良くないお茶由来のミネラルが付着するため、結果、急須の性能が低下し、他のお茶をいれても同じように余韻のない味になってしまいます。急須の材質により、全てのお茶と相性が良い土と、特定のお茶とは相性が悪い土とあるため注意が必要です。HOJOで販売している、伊賀天然朱泥、古琵琶湖土、佐渡の急須に関しては、これら3種のお茶とも高い相性を示します。これら3産地のお茶は含まれるミネラルがやや特殊でであるため、急須を専用化するのも一案かと思います。
大事なのは同じ水を使い続けること
急須は暫く使い込むことで、お茶の味が更に濃く、甘く感じられるようになります。実際、1ヶ月も使うと、新品の時と比べ、明らかに優れた味へと変化します。多くの人は、お茶が急須に馴染んだ結果と考えがちです。しかしながら、実は、お茶以上に多大な影響を与えているのは、「水」です。水に含まれるミネラルが重要な役割を果たしております。同一の水を使用し続けていると、水由来のミネラルが急須内面に付着し、その結果、急須と相乗効果を示します。私はこの事を実験するために、店に、新しくおろした急須をおき、店のスタッフにお願いし、1ヶ月間毎日、「湯を注ぎ入れては、捨てる」という動作を繰り返しました。1ヶ月後に同一素材、同一バッチバッチの新品の急須と味を比べたところ、顕著に差が観察されました。水をいれ続けたお茶の方が、余韻が長く、渋味が殆ど感じられなくなっておりました。しかし、注意すべき点としては、毎回必ず同じ水、同じ湯沸かしを使用することです。お茶をいれる水は勿論、急須を洗う水も統一する必要があります。水を変えると、急須内面に付着したミネラルと、新しい水に含まれる水由来のミネラル間での緩衝作用により、味にまとまりが無くなります。湯沸かしからもミネラルが溶出することから、毎回同じ湯沸かしを使用することが重要です。
1,Twitterをフォローする。2,FaceBookで「いいね!」を押す。3,メールマガジンに登録する。という3つの方法で、お茶に関する最新情報をキャッチすることができます。今すぐ下のツイッターフォローボタンや「いいね!」をクリック!
- メールマガジン登録で無料サンプルをもらおう!
- メールマガジンにご登録いただくと無料のサンプル茶葉のプレゼントや希少商品の先行購入など様々な特典がございます。ソーシャルメディアの購読だけでなく、メールマガジンへのご登録もお忘れなく!
- 大雪山野生茶(生茶)2023年・2024年産 同時発売
- 大雪山野生生茶の2023年産と2024年産を発売しました。 2023年産については、マレーシアの倉庫で1年間熟成しております。 https://hojotea.com/item/d27.htm 雲南省でも入 …
- 佐渡無名異焼作家の渡辺陶三作:野坂粗土還元急須が入荷
- 野坂粗土還元焼成の茶器を発売しました。 今回入荷したモデルは、茶壺(後手急須)、フリーカップ、マグカップの3点です。 https://hojotea.com/item/tozo_nosaka_reduction.htm …
最新の記事 NEW ARTICLES
- 大雪山野生茶(生茶)2023年・2024年産 同時発売
- 大雪山野生生茶の2023年産と2024年産を発売しました。 2023年産については、マレーシアの倉庫で1年間熟成しております。 https://hojotea.com/item/d27.htm 雲南省でも入 …
- 佐渡無名異焼作家の渡辺陶三作:野坂粗土還元急須が入荷
- 野坂粗土還元焼成の茶器を発売しました。 今回入荷したモデルは、茶壺(後手急須)、フリーカップ、マグカップの3点です。 https://hojotea.com/item/tozo_nosaka_reduction.htm …
- 佐渡島の渡辺陶三製作:野坂粗土酸化焼成の茶器が入荷
- 佐渡島の陶芸家、渡辺陶三氏による「野坂粗土酸化焼成」の茶器を発売いたしました。 https://hojotea.com/item/tozo_nosaka.htm 野坂は佐渡島の沢根にある地区名で、相川金山に …
- 2300mの野放茶園産、高山白茶を発売
- 高山白茶を発売しました。 このお茶の茶園には、次の2つの特徴があります。 1. 標高2200-2300mに位置する茶園 2. 完全に野生化したお茶の木で構成される野放茶園 非常に理想的な環境ゆえに、お茶の品質も素晴らしく …
- 標高2100mの無農薬・無肥料茶園産の高山紫茶2024
- 2024年産の高山紫茶を2種類発売しました。 https://hojotea.com/item/d53.htm 2種類とも、同じ生産者が同じ地域内に保有する茶園の茶葉ですが、茶園の位置が異なり、また、生産日も異なります。 …
- 大雪山野生茶(普洱生茶)2024の散茶を限定発売
- 大雪山野生茶は、雲南省臨滄市永徳県の大雪山に自生する野生のカメリアタリエンシスから作られたプーアル生茶です。 野生茶とは 野生茶とは、樹齢が高いお茶や野生化したお茶ではなく、山に自生している天然のお茶を指します。 過去に …
- 鳳凰単叢烏龍茶の産地、潮州市鳳凰鎮を訪問(2024)
- 先月、鳳凰単叢烏龍茶の産地である潮州市鳳凰鎮へ、仕入れと生産者との打ち合わせを兼ねて出張しました。ちょうど台風の時期と重なり、山から潮州に戻れなくなるなどのハプニングもありましたが、無事に仕入れを終えました。鳳凰鎮にはこ …
- 前川淳蔵作の伊賀天然朱泥急須、宝瓶各種入荷
- 前川淳蔵作の伊賀天然朱泥の茶器が入荷しました。 今回入荷したのは、丸型宝瓶、急須、絞り出し、茶海です。 https://hojotea.com/item/maekawa_iga.htm 数百年前に古琵琶湖の湖底に沈殿した …
- 佐渡島:渡辺陶三作、無名異上赤茶壺と宝瓶が入荷
- 渡辺陶三氏作の無名異常赤急須および宝瓶が入荷しました。今回の入荷品は、後手タイプが中心です。 https://hojotea.com/item/tozo_joaka.htm 非常に稀少な上赤 「上赤」は、佐渡島の相川金山 …
- 非常に稀少な野生茶、永徳野生白茶2024を発売
- 永徳野生白茶を発売しました。このお茶は2021年に一度発売されましたが、瞬く間に売り切れ、その後の入荷はありませんでした。質が高く、個性的な香りで当店でも非常に人気の高いお茶です。 永徳野生茶は、雲南省臨滄市永徳県で、牛 …
- HOJO通販新着
- 特集
- メールマガジンバックナンバー
- お茶の種類
- お茶の産地
- 茶器・急須
- お茶のコラム-雑学-歴史-文化
- お茶を楽しむ
- お茶の作り方-製法
- お茶の品質を決める各種要素
- お茶の成分と効能
- お茶の安心と安全
- 食品
- お茶ビジネスの運営・記録
- 趣味活動
- お茶のランキング-おすすめ
- お茶に関する動画
- お茶に関するQ&A
- メディア掲載
- an anにてジャスミンパールが紹介されました。
- an an 「マガジンハウス出版」 No.1865、2013年7月24日号「夏のお取り寄せ」特集で弊社のジャスミンパールが紹介されました。
- マレーシアの全国紙 “Star Newspaper”に掲載して貰いました。
- 先日、マレーシアの全国紙「Star Newspaper」でHOJOの特集をしてくれました。 Starはマレーシアで最も購読数の多い新聞で、マレーシアのメディアでは最も影響力の大きな新聞です。 新聞の内容は、茶器によりお茶 …
住所:Lot No. T-215, 3rd Floor, Mid Valley City, Lingkaran Syed Putra 59200 Kuala Lumpur